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東京の宅地の多くは、狭小地です。狭小地には、旗竿地、変形地、段差のある土地など、狭いだけではなく、難しい条件の付いた土地が少なくありません。住宅の密集地にあり、さらに整形地でない土地は、快適な家に必要な居住面積、日当たり、風通し、静けさ、プライバシーを確保しにくいからです。
その為、東京の狭小住宅には、優れたデザイン性と、その設計デザインを支える確かな耐震性を備えたデザイン住宅が求められます。デザイン住宅に必要な要素にはどのようなことがあるのでしょうか?
優れた設計デザインの要素
狭小住宅には、床面積に対して、より広がりを持たせるため、郊外型の住宅にはない特別な設計デザインが必要です。狭小地に、十分な居住面積を備えた家のするためには、上方向に向かって、空間を広げていくしか方法がありません。
快適な室内環境を作る設計デザイン
狭小住宅は多くの場合、居住面積を増やすために3階建てにします。加えて、日当たりと風通しを確保することと、狭さから生まれる圧迫感のある家にならないような間取りが必要です。そこで採用される設計デザインが、吹き抜けです。吹き抜けは縦に長い空間を造り出し、室内を開放的な雰囲気にします。さらに、窓やスケルトン階段との組み合わせで、家中に陽射しを届け、風の広い通り道を造り出します。
また、段差のある土地や、間口が狭く奥行きの長い変形な狭小地では、家の中心部まで陽射しが採り入れにくくなってしまいます。そのような敷地に対しては、スキップフロアを採用します。間仕切壁ではなく、段差を活かして部屋と部屋を区切るスキップフロアは、陽射しが届きにくい家の中心部まで陽射しが届きます。また、段差によって、窓にも高低差が生まれる為、風通しも良くなります。
狭さによる暮らし難さを解決する設計デザイン
狭小地、狭小住宅であるために、収納が十分ではない、書斎や趣味の部屋が作れないといった不満の残る家にしない為の設計デザインも大切です。
ロフト
屋根の傾斜を活かした勾配天井は、視覚的に室内を広く見せる効果があるだけではなく、ロフトスペースを設ける空間を造り出します。ロフトは、収納スペースとして活用できるほか、造り方によっては、書斎や寝室、子供の勉強コーナーなど、様々な使い方ができます。
プライベートバルコニー
敷地内に、外の景観を楽しめる庭が作れない狭小住宅は少なくありません。せっかくベンチなどを配置しても、通りや隣家からの視線が気になって、寛げないことが多いからです。しかし、2階、または3階にルーバーを使ったバルコニーを設ければ、プライベートな空間として、アウトドアリビングを楽しむことができます。バルコニーのルーバーはそのまま、外観デザインのアクセントにもなります。
インナーガレージ
狭小地では、敷地内に駐車スペースを設けられないケースも少なくありません。その為、家の中にガレージを組み込むガレージハウスにする設計デザインも、東京の狭小住宅にはよく見られます。
家の中に駐車スペースがあれば、雨の日でも濡れずに乗り降りできる、貸駐車場に車を取りに行ったり、置きに行ったりするめんどうがないなど、日常的に車を使う人にとっては、無駄な時間を使わずに、快適に車をつかえる環境が整います。
法的な基準に妨げられない設計デザイン
戸建て木造住宅には、空間を縦に伸ばすことに対して、いくつかの条件を満たす必要があります。住宅は、敷地いっぱいに建てられるわけではありません。地域によって定められている建ぺい率の範囲内で1階の面積を、地域によって定められている容積率に従って家全体の床面積を、北側斜線制限の範囲内で北側の屋根の勾配を収めます。これらの制限は、隣家への陽射しと風通しを遮らない為です。
加えて、周辺の景観に圧迫感を与えず、道路への陽射しを遮らない為には、道路斜線制限の範囲内で、住宅の高さを収める必要があります。狭小地の場合、隣家や道路との距離が短いので、これらの法規制によって、建てられる家の規模が制限されているのです。
ただし、建物と空の比率で判断する天空率を利用すると、道路斜線制限を受けずに住宅の設計ができます。その結果、道路斜線制限に従って屋根の形状や勾配を変えなくて済むので、外観デザインが損なわれることがありません。天空率を利用することで、法的に面積や高さを制限される狭小地であっても、空間を縦に伸ばしやすくなります。
優れた設計デザインを支える耐震性
吹き抜けやスキップフロア、インナーガレージは、どれも大きな空間を造り出します。細長い3階建てで、その内部に広い空間があれば、耐震性について不安を感じる方も多いのではないでしょうか?近年、平屋を好む人が増えている理由の一つは、構造が安定しているので地震に強いと考えられているからです。しかし、東京の狭小地に、暮らしの快適さを備えた平屋を建てるのは、至難の業です。日当たり、風通しはもとより、そもそも、居住面積を確保できません。
東京の狭小地に、暮らしの快適さを備えた家にするためには、最低でも2階建て、家族の人数が3人以上いれば、3階建てが必要です。そこで、内部に大空間を持つ狭小住宅を、どんな大地震が発生しても、命と財産を守れる家にするためには、高い耐震性が求められます。
狭小住宅の設計デザインを支える耐震性がなくては、東京の狭小住宅は成り立ちません。耐震性だけを考え、設計デザインが制限されてしまえば、デザイン性に乏しい住宅、快適さが万全ではない住宅になってしまいます。視覚的なデザインばかりを追ってしまえば、快適さに欠け、耐震性に不安の残る住宅になってしまいます。
視覚的な美しさと、暮らしやすさ、安全性を備えた家でなくては、完璧な狭小住宅ではありません。その為、優れた設計デザインを支えるためには、狭小住宅の問題点をカバーできる構法が必要です。