狭小地に建てる家は、平屋や2階建てでは、十分な居住面積を確保できないケースがほとんどです。その為、狭小住宅は3階建てにすることが多くあります。
縦に細長い3階建ての狭小住宅には、3つ注意しなくてはならない点があります。階段の多い家の中での生活動線をスムーズにする間取りと、室内環境を調える為の設計、住宅性能の高さです。それぞれの点に関して、考えていきましょう。
階段の多い家の中での生活動線と間取り
3階建ての家では、日常生活の中で、頻繁に階段での移動をしなくてはなりません。そこで、ストレスなく、家の中を移動できる動線を作る間取りにすることが大切です。水廻りを置く階によって、家族の生活動線や家事動線が変わってきます。
1階にLDK、浴室、洗面所を設置する間取り
良い面
- 食料品の搬入が楽にできます。
- 家族の家への出入りがわかりやすいので、常に行ってらっしゃい、お帰りなさいと声がけができます。子供が自分一人で外出するようになっても、子供の行動を管理できます。
問題点1 家事の負担
洗濯にかかわる家事は、負担が大きくなってしまいます。1階で洗濯し、3階のバルコニーまで洗濯物を干しに行かなくてはならないからです。夕方には取り込んだ洗濯物を、1階に運び、アイロンかけをしてたたみ、2階3階の部屋に再度運んで収納しなくてはなりません。
! 間取りのアイディア
■ 1階に洗濯物を干せるスペースと、下着やパジャマを収納できるスペースを作る
洗面所に洗濯機を置く場合、洗面所内に洗濯物を干せるスペースと、下着やパジャマを収納できるスペースがあれば、階段を使わずに、洗濯に関わる家事を完結出来ます。
母親が入浴させる年齢の子供がいる場合には、洗面所の収納は、子供部屋との往復を少なくできるので、特に便利です。
■ ベランダのそばにユーティリティ
2階、または3階の洗濯物を干すベランダのそばに、洗濯機を置くスペースと、取り込んだ洗濯物の仕上げをするスペースを作ると、洗濯物を干すベランダがある階で、洗濯ものにかかわる家事を完結出来ます。
問題点2 リビングの状態
1階にリビングがあると、リビングに物が溢れてしまいます。帰宅した家族は、自分の部屋に荷物を置きに行くのが面倒で、リビング内に外出時に来ていたコートや、荷物を置きっぱなしにする恐れがあるからです。そうなってしまうと、リビングは、常に雑然とした雰囲気の部屋になってしまいます。
! 間取りのアイディア
玄関や、リビング、玄関からリビングへの通り道に、家族で使える大型のクローゼットがあると、帰宅した家族のコートや荷物を、自然な流れで、クローゼットに収められます。また、2階、3階に家族の居室がある場合、玄関で忘れ物に気が付くと、朝の忙しい時間帯には、部屋まで取りに行くのが大変です。玄関やリビングにクローゼットがあれば、翌日の通学、通勤に必要な物の仮置き場としても、利用できます。
問題点3 日当たりが悪い
狭小地に建つ3階建て住宅は、隣家や道路との位置関係によっては、陽射しが入りにくく、晴れた日でも、照明をつけなくてはならないような環境になってしまう恐れがあります。
! 間取りのアイディア
吹き抜けやトップライト、スケルトン階段などを設計に採り入れると、3階からの陽射しを1階まで届けることができ、陽射しが溢れる、明るい室内環境が作れます。密集した住宅地に建つ家の場合、壁面に一般的な掃き出し窓をつけると、周辺の環境によっては、隣家や道路からの視線で、プライバシーを守りにくくなることがありますが、トップライトならその心配はありません。
プライバシーを守りにくい環境であれば、ハイサイドライトを採り入れるという方法も効果的です。ハイサイドライトは、頭より高い位置にある窓なので、外部からの視線が気になりません。また、陽射しが入ってくる時間が長いことや、空の一部を借景として室内に採り入れられること、低い位置の窓との組み合わせで、風通しを良くできることなど、狭小地の3階建て住宅の室内環境を、良くする特性を多々持ち合わせています。
吹き抜けは、トップライトやハイサイドライトからの陽射しを、下の階まで届け、1階の窓から入った風を、2階や3階の窓に抜けさせる通り道を作ります。吹き抜けがあると、空間が縦に拡がり、狭さを感じない、開放的な空間を生まれます。
2階にLDK、浴室、洗面所を設置する間取り
良い面
- 洗濯物にかかわる家事が少し楽になります。
- 1階に比べて、日当たりと風通しの良いLDKにできます。
- 道路からの視線や騒音が気になりません。自然を気にせずリビングの窓を大きく開けられるので、開放的な雰囲気のリビングにできます。
- さらにバルコニーと組み合わせると、リビングを広く使える上に、楽しい雰囲気のリビングが生まれます。バルコニーには、目隠し用のルーバーを設置すれば、バルコニーでの家族団らんが楽しめます。
問題点
ペットボトル、お米など、重い食料品を運び上げる手間がかかります。
! 間取りのアイディア
玄関の収納スペースの中に、食料品の仮置きができる棚を作っておくと、数回に分けて2階に運びこめます。
問題点
家族の出入りが把握できない
! 間取りのアイディア
家族の居室の配置に工夫が必要です。2世帯住宅であれば、1階は親世代のエリアにすると、高齢になっても、階段を使わずに済みます。3階に子供部屋を作れば、玄関からの出入りには、必ずリビングを通ることになるので、子供の行動を管理できます。また、1階は、インナーガレージにするという選択肢もあります。
3階建て住宅の室内環境を調える要素
1階と2階の部屋の日当たりや、風通しの為に、吹き抜けを採り入れることの多い3階建て住宅ですが、吹き抜けによって、2つの問題が発生します。
断熱性と耐震性の低下です。
十分な断熱性がないと、空間が広がる分、冷暖房の効率が低下してしまいます。夏は吹き抜けからの陽射しで、室内の温度が上昇します。特に3階の部屋は、非常に暑い部屋になってしまいます。冬は、暖房をかけても、なかなか暖まりません。特に1階の部屋は、足元が冷える寒い部屋になってしまいます。
暖房の熱を逃さず、外気の暑さを侵入させない家であれば、快適な環境を調えられます。その為、吹き抜けのある家では、一般的な間取りの住宅よりも、断熱性を高めることが大切です。
また、トップライトからの夏の強い陽ざしを防ぐために、トップライト専用の日よけをつけるなどの工夫も必要です。
加えて、狭小住宅では、ワンフロアワンルームという間取りが多くあります。その間取りに、さらに吹き抜けが加わると、耐震性が心配されます。家の中に、壁や床の少ない空間が、縦にも横にも拡がっている間取りは、陽射しと風をいっぱいに採り込めます。開放感がある魅力的な空間でもあります。ただし、その一方、家を支える力の弱い家になる危険も、持ち合わせています。そのような間取りの家に、絶対的に必要な住宅性能は、高い耐震性です。
狭小地に建てる3階建ての木造住宅の場合、ワンフロアワンルーム、吹き抜け、縦に細長いなどの条件が重りますが、このような住宅の建築には、SE構法が向いています。
SE構法は、鉄骨造の建物のように、外枠を頑強に構築し、内部の間取りを自在に創れる構法です。綿密な構造計算によって出された科学的根拠に基づくデータから、設計図が作られ、その設計図に合わせて、一棟一棟の対するすべての建材が、専用の工場で生産されます。
その結果、自由で広々とした空間と、高い耐震性を併せ持つハイクオリティな住宅が生まれます。SE構法は、狭小住宅の建築とは、非常に相性の良い構法です。
ホープスの狭小住宅への想い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。