土地の価格が高く、住宅が密集している東京では、狭小地に建てる家であっても、一般的な年収より、高額な年収の方でなければ手が出ません。郊外であれば、2~3戸の家が建てられるほど、土地の購入に費用がかかるからです。
しかも、東京の中でも、家族にとって利便性の良い土地を探すのも至難の業です。そんな東京の土地をやっと見つけ、購入できると、その時点でかなりホッとされることと思います。でも、まだホッとしてはならないのです。せっかく手に入れた貴重な土地に、いかに暮らしやすい家を建てるかという大きな課題が残っています。
それほど住宅が密集していない郊外の住宅地では、ハウスメーカーに見られるような一般的な間取りの家で、十分に快適に暮らせるでしょう。しかし、密集した住宅街の中の狭小地に建てる家には、住宅性能と設計に対して、より細かな配慮が求められるのです。希望の場所に土地が購入できたというご家族が、狭小地に建てる住宅を暮らしやすく安全な家にする家づくりについて考えていきましょう。
狭小地の家に求められる住宅性能
どんなに大きな地震が発生しても不安なく過ごせること、吹き抜けやスキップフロアなど、家の中の空間が繋がる間取りであっても、冬暖かく、夏涼しい家であることを確保するためには、高い住宅性能が求められます。
断熱・気密・換気計画
屋根、外壁、窓、玄関、床は、常に外気に接しています。したがって、太陽の熱を受け続けるとともに、家の中の暖かさを逃がす場所でもあります。その部分から熱を出入りさせない性能が断熱性能です。断熱性だけを高くしても、隙間のある家では、その部分から熱が出入りしてしまうので、気密性も必要です。
ここまでは、どんな住宅であっても備えている性能です。ただし、狭小住宅の場合には、それよりも高度な断熱性と気密性でなくてはなりません。なぜなら、室内環境を調える為に、吹き抜けやスキップフロアを採用するからです。吹き抜けやスキップフロアは、家の中の空間を繋げるため、高い断熱性がないと、暖房の効率が落ちてしまうのです。
ただし、断熱性と気密性を高めれば高めるほど、適切な換気計画が求められます。断熱性と気密性だけを高くしてしまうと、その家に住む家族の健康に悪影響が出るからです。家の中の空気は、日常生活から発生するCO2 や埃、花粉、細菌、ウィルス、カビの胞子、ダニに死骸などが含まれています。
これらの物質が、気密性の高さによって、家の中に滞ってしまえば、家族の健康を害してしまいます。それだけではなく、換気の悪さが湿度を高くし、住宅の内部に結露が起こして、構造部を傷めてしまう恐れがあります。そうなってしまうと、住宅の健康も害されてしまいます。夏涼しく、冬暖かい家にするため、断熱性と気密性は重要ですが、必ず換気計画もセットで考えることが大切です。
耐震
狭小地に家を建てる場合、家族構成にもよりますが、ほとんどの場合、床面積をより多く確保するために、3階建ての住宅にします。狭い土地に3階建ての住宅を建てると、縦に細長い形状の家が完成します。同じ長方形の立方体であっても、広い面が地面についている家に比べて、狭い面が地面についている家は、構造が不安定になってしまいます。さらに、吹き抜けやスキップフロア、インナーガレージなど、家の中に大きな空間がある場合には、さらに構造が不安定になり、耐震性が低下します。
縦に細長い形状であっても、家の中に大きな空間がある設計であっても、安全な家にするためには、その悪条件に打ち勝つ耐震性が求められます。ホープスが、「狭小住宅こそSE構法で建築するべきである」と考える理由はここにあります。
SE構法は、在来工法の木造住宅では実現できなかった大空間を、高い耐震性を持って造り上げる構法です。SE構法では、構造部に天然の木材を使いません。SE構法の構造躯体には、全て構造用集成材が使われます。この構造用集成材は、使用する住宅のそれぞれの部分に合わせ、構造計算に基づいて、専門の工場で作られます。天然の木材と違い、乾燥の度合いや、強度にばらつきがなく、すべてが均一で、強度や性能が明確なエンジニアリングウッドです。
さらに、接合部に特殊な金物を使い、柱と梁を強固につなげていること、基礎と柱を直接連結させていることなど、耐震性を高める要素が詰め込まれた構法です。阪神大震災の大被害を受けて、開発が始まったSE構法ですが、その後に発生した中越地震や東日本大震災、熊本地震において、SE構法で建てられた住宅は1棟も壊れませんでした。
住宅が密集している地域で、縦に細長い住宅が、大きな地震の揺れに襲われ、倒壊してしまえば、深刻な事態になるリスクは非常に高く、耐震性の高さは不可欠です。SE構法で建てる住宅であれば、大地震が発生しても、家族の命と財産を守ることができます。
周辺の環境に配慮した室内環境の調え方
狭小地に建つ家では、居住面積を増やす他に、日当たり、風通しの確保についても配慮しなくてはなりません。健康な暮らしの為には、日当たりと風通しは欠かせない要素です。しかし、3方を住宅に囲まれている、周辺にマンションやビルがあるというような環境では、晴れた日の昼間でも薄暗い、冷暖房が必要ない季節でも、窓からの風が入ってこない、というような家になってしまいます。そのような家にしないためには、設計の工夫が必要です。
吹き抜け
上の階から採り入れた陽射しを階下の部屋まで届けるため、下の階の天井や上の階の床を造らず、上の階と下の階を繋げた空間です。窓やスケルトン階段との組み合わせで、より効率よく、家中に明るさと暖かさを届けられます。また、吹き抜けは、風の通り道を広くするので、家中の換気が良くなります。さらに、狭小住宅には、狭さによる圧迫感が生まれてしまうことが少なくありませんが、吹き抜けによって、開放的な雰囲気が生まれます。
吹き抜けやスキップフロアのある家は、冷暖房の効率が悪く、特に冬はなかなか部屋が暖まらないという意見がありますが、それは、断熱性と気密性が吹き抜けやスキップフロアのある設計に対して、十分ではないからです。
スキップフロア
1階と2階、2階と3階の間に中2階、中3階を作る設計の手法がスキップフロアです。段差によって部屋と部屋を区切るので、間仕切壁がなくなり、家中の空間が繋がります。その結果、陽射しが届きにくい家の中心部まで、陽射しが届きます。また、窓に高低差ができる為、風も良く吹き抜けていきます。壁によって視線が遮られないので、広々とした空間に見えるという良さもあります。
窓
密集した住宅地では、窓は、陽射しと風を採り入れる開口部であると同時に、隣家や道路からの視線や、騒音が家の中に侵入してくる開口部でもあります。日当たりと風通しだけを考えて、窓の位置やサイズ、開閉方法を決めてしまうと、視線や騒音が気になる窓になってしまうこともあります。
トップライトやハイサイドライトを活用すると、外部からの視線を気にせず、十分な陽射しを得られます。特に吹き抜けを採り入れる場合には、窓との組み合わせ方が、採光量に影響を与えます。ただ、トップライトは、夏は非常に室内の温度を上昇させるので、トップライトを設置する屋根の方角と、住宅の断熱性の高さに配慮する必要があります。
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家づくりの過程で、土地が見つかったというタイミングは、一つ目の山場であると思います。家族構成や家族の暮らし方に合わせるのは基本ですが、それに加えて、購入予定、または購入した敷地の周辺環境に合わせた家づくりを進めることが大切です。
ホープスでは土地探しのお手伝いも致しますが、すでに土地を購入されたお客様に対しては、敷地周辺の環境に合わせた最高のご提案をさせていただきます。東京の狭小地での家づくりを計画中のご家族は、ぜひご相談ください。
ホープスの狭小住宅への想い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。