狭小住宅では、床面積に制限があるので、洗面所やトイレ、浴室は後回しになってしまいがちです。しかし、狭小住宅だからこそ、洗面所の造り方は、家事にも、家族の暮らしにも大きな影響を与えます。
家族構成と暮らし方、洗面所に使える床面積の上限に合わせて、使いやすい洗面所を作りましょう。
洗面所と家事の関係
洗面所は洗面をする場所ですが、狭小住宅では、脱衣所と洗濯室を兼ねる間取りが多いです。加えて、周辺の環境から、外には干さない場合と、2階、または3階のバルコニーに干す場合があります。それぞれのケースに応じて、洗濯室としての洗面所の造り方を考えてみましょう。
洗濯に関わる家事には、洗濯をする、干す、取り込む、アイロンをかける、たたむ、しまうという作業があります。1階に浴室や洗面所があり、洗面所に洗濯機を設置する予定で、3階のベランダに洗濯物を干しに行くとしたら、家事負担は大きくなります。その場合には、洗面所から階段までの動線に考慮する必要があります。
洗濯物を外に干さない場合、乾燥器や浴室乾燥を使うことになると思いますが、家族の人数によっては、家族分の洗濯物は乾燥しきれない、電気代が嵩むといった問題が起きます。
その為、洗面所を広く取り、洗濯物を干すスペースを作ると便利です。洗濯物を洗面所に干せると、花粉が飛ぶ季節や雨の日にも、洗濯物を乾かせます。また、侵入強盗のリスクを下げることにもつながります。共働きで、洗濯物を取り込む時間が遅い家庭は、侵入強盗の下見の際に、帰宅が遅い家として目星をつけられてしまうことがあるからです。
洗濯物を干すスペースは、洗濯物が乾いた後に、アイロンをかけたり、たたんだりする場所として活用できます。
階上のベランダに干す場合であっても、家の中で乾燥させる場合にも、洗面所に、仕上がった洗濯物のうち、タオル、下着、パジャマなど、入浴後に使う用品の収納があると、さらに便利です。
階上のベランダに洗濯物を干している場合、雨の日には、リビングに洗濯物を干さなくてはなりません。晴れた日には、取り込んだ洗濯物をリビングに運び、たたんだり、アイロンをかけたりすることが多いと思います。しかし、夕方は主婦にとって非常に忙しい時間帯です。夕食の支度や子供の世話に追われて、リビングに採りこんだ洗濯物が溢れてしまうというような状況になってしまうこともあります。洗面所を洗濯室としても活用できるようにしておけば、そのような事態が避けられます。
一般的に、洗面所の面積は、脱衣所とは兼ねるが、洗濯機を置かないという場合には、最小で0,75坪、洗濯機を置く場合には、1坪必要です。その面積では、子供と一緒に入浴する際の入浴準備、入浴後に身体を拭いてあげたり、髪を乾かしてあげたりする場合には、狭いと感じるかもしれません。ゆったり使いたい場合には、1,25坪必要です。そして、洗濯室としても使いたい場合には、1,5~2坪程度の面積が必要です。
洗濯室としても使う洗面所を使いやすくするポイント
洗濯をする時間帯、洗濯物をたたんでしまう作業をする時間帯に動きやすい動線と、常に片付いている状態にする収納スペースが大切です。
動線
洗濯をする朝の時間帯は、洗濯の他にも、朝食の支度、お弁当作り、子育て中は子供の身支度など、主婦にとって忙しい時間帯です。共働きであれば、自分の支度もしなくてはなりません。その為に、洗面所とキッチンと階段の3か所を、回遊できる動線を作っておくことが大切です。
収納
洗面用の壁面収納の他に、ウォークインクローゼットがあると、洗濯室と兼用しても、洗面所を常にすっきりした状態にしておけます。ウォークインクローゼットの中には、洗濯した下着やパジャマ、洗剤、洗面所で使う掃除用具、洗濯物などがすべて収められます。洗面所が散らかる要因は、置き場所に困って床に置くということです。洗濯室を兼ねる場合、さらに散らかりやすくなるので、必要なものはすべて収められるようにしておかなくてはなりません。サブ洗面台を設置せず、お客様にも洗面所で手洗いをしてもらう場合には、急な来客があっても、常に整然としているので、心おきなく使っていただけます。
換気
せっかく洗濯物を干しても、換気が悪いと、室内干し特有のニオイがついてしまったり、生乾きのままになってしまったりすることがあります。高さの違う位置に対面の窓を作る方法もありますが、部屋干しファンを設置する方法もあります。冬の寒い時期には、換気のため、窓を開けっぱなしにしておくと、家中が冷えてしまいますが部屋干しファンなら、窓を開けずに洗濯物を乾かせます。
洗面所を洗濯室としても使う場合の注意点
洗面所を洗濯室として使う場合、洗面所兼脱衣所として使う場合とは違った注意点があります。
朝の混雑
生活の時間帯がほぼ同じ家族では、朝の洗面所は、とても込み合います。洗濯室を兼ねた洗面所では、家族の朝の身支度と、洗濯の時間が重なり、より混雑します。そのようなストレスを発生させないようにする為の方法として、サブ洗面台を作るという方法があります。洗面所以外の場所にコンパクトな洗面台を設置するという方法です。
玄関に設置すれば、帰宅時に家族が手洗いうがいをできますし、お客様にも使っていただけます。
出入り口
出入り口の造り方も使い勝手に影響します。洗濯物を抱えて開け閉めすることを考えると、洗濯室の出入り口は、引き戸にしておくと使いやすいです。季節によっては、開けたままにしておくと、窓が一つしかなくても、風が通りやすくなります。
室内の配置
洗濯室から、キッチンや階段への動線も大切ですが、室内の配置も使い勝手に影響します。浴室への動線、洗面台の位置、壁面収納の位置、ウォークインクローゼットの位置、洗濯物を干すポールの位置は、具体的な作業の仕方を思い浮かべて決めましょう。
また、壁面収納や、ウォークインクローゼットの内部は、具体的に収める物のサイズを測り、整頓しやすい造りにすることが非常に大切です。せっかく収納を作っても、収める物のサイズに合わないと、使いにくい収納になってしまいます。その結果、床に物が増え、洗濯室を整然とさせておけなくなってしまいます。
壁紙や床材
湿度に強く、防汚、抗菌、消臭効果のある壁紙が向いています。洗面所や脱衣所は、清潔に保ちたい場所ですが、洗濯室も兼ねる場合、洗濯物についた汚れが飛び散る場所になってしまうからです。また、浴室からの湿度で、カビが発生しやすい場所でもあります。その為、マメに掃除をする必要があります。その際に、手軽に掃除ができ、汚れにくい壁紙にしてあると、清潔で衛生的な環境を維持できます。
床材は、裸足になる場所でもあるので、ひんやりしない、弾力性がある、素材が向いています。具体的には、撥水効果のある塗装を施した無垢材のフローリングや複合フローリング、クッションフロア、ココヤシや麻などの天然繊維などがあげられます。
タイルは、防水性は高いのですが、冬はひんやりする、濡れると滑る、硬いので子供やお年寄りが転ぶと危ないといった懸念があります。
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洗面所の使い方によって、洗濯物に関わる家事負担が減らせます。また、共働きの場合には、洗濯物を暗くなってから取り込まずにすむので、防犯性も高められます。洗濯室を作ると、床面積を圧迫されてしまいますが、洗面所と兼用にすれば、独立した洗濯室を作るよりは、床面積を倹約できます。洗濯室を兼ねる洗面所は、新築時にしか作れないので、新しい家での暮らしを具体的に想像して、設置を決めましょう。
ホープスの狭小住宅への想い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。