住宅性能評価には、大きく分けて、耐震や火災など、その家に住む人の安全を確保するための項目と、住宅を長年に渡って、良いコンデイションに維持するための項目、健康な生活が送れる室内環境の条件に関する項目、バリアフリーの条件に関する項目、防犯の条件に関する項目があります。

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住宅性能評価の目的

注文住宅を建てるための情報集めをしていると、「耐震等級」・「耐火等級」・「省エネルギー対策等級」というような表示を見かけることが多いと思います。このような表示は、住宅性能評価です。住宅性能評価とは、住宅性能表示制度で定められている住宅の性能を評価する数字で、住宅の性能をわかりやすく表示することが目的です。住宅性能表示制度とは、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度です。

外観デザインや、内装、間取りは、その善し悪しを、ある程度は見た眼で判断できます。しかし、住宅の性能に関しては、見た目で判断できません。どんなに洗練されたデザインの外観や内装であっても、暮らしやすい間取りであっても、住宅性能の低い家は、長期間にわたって、安全で快適な生活が保障される家ではありません。その為、建築の専門家ではなく、一般の消費者が、住宅を購入する際に、住宅性能の高さを、容易に確認できるようにするため、住宅性能表示制度が導入されました。

新築住宅の性能は、見た目では判断できない10の分野と32の項目で示されている住宅の性能は、高くなるほど、等級や数値が上がります。すべて高い数字が並んでいれば、良い住宅と考えてしまいがちですが、そうではありません。東京のような比較的温暖な地域に建てる家に、北海道のような極寒の地域に求められる断熱性能は必要ありません。反対に、東京に建てる家には、広々とした郊外に建てる家には、求められない耐火性能が、求められます。また、数字が高くなればなるほど、建築費が嵩みます。家を建てる地域の気候や、環境に合わせて、適切な等級や数値の住宅性能にすることが、大切です。

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耐震や火災など、その家に住む人の安全を確保するための項目

今回は、住宅を長年に渡って、良いコンデイションに維持するための項目についてお話しします。

耐震や火災など、その家に住む人の安全を確保するための項目についてはこちらからどうぞ

住宅を良い状態に維持するための備え…劣化対策・維持管理対策

劣化しない対策が講じられていることと、住み始めた後に、修理や点検が手軽にできること、またその計画が作成されていることが求められます。
■ 劣化しない対策が講じられていることに対する評価
屋根や外壁は、常に紫外線や、雨風にさらされています。その結果、ヒビや割れが発生して、雨水が内部に侵入していくリスクがあります。構造部や土台には、湿気やシロアリによって腐朽するリスクがあります。何世代にも渡って、安全に快適に暮らすためには、このようなリスクを避けるための備えが必要です。
劣化対策等級(構造躯体等)
建材の選び方、構法上の工夫によって評価が変わります。
木造住宅に求められるれか対策は、大掛かりな補修をしなくても、常に良い状態を保つための2つの対策です。対策の程度によって、良い状態を維持できる期間が変わってきます。

柱、梁、主要な壁などに耐久性の高い建材を使う。

通気や換気などによって、水分や湿気による木材の腐朽とシロアリの被害を軽減するための対策がされている。

  • 劣化対策等級1 建築基準法に定める対策が講じられている
  • 劣化対策等級2 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(おおむね50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
  • 劣化対策等級3 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている

■ 維持管理のための修理や点検に対する評価
水道やガス管は、毎日の生活になくてはならない重要な設備です。毎日使うものではありますが、安全と見た目の良さのために、内装や外装に隠されています。そして、その隠し方のよって、点検や修理のしやすさが変わってきます。その為、戸建て住宅の給排水菅・給湯管・ガス管に対して、故障したときはもちろんですが、日常的な清掃や点検がしやすい状況になっていることが求められます。

維持管理対策等級(専用配管)等級2 (戸建て住宅では等級2が最高上位です。)

b.配管が貫通部等を除き、コンクリート等に埋め込まれていないなど、構造躯体を傷めないで点検及び補修を行うための対策ができている。
c.点検のための開口や掃除口が設けられているなど、構造躯体も仕上げ材も傷めないで点検、清掃を行うための対策ができている。

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暮らしの変化に手軽に対応するための備え…更新対策

この項目では、戸建て住宅に対しては、表示が求められていません。ただし、どんなに頑強で、良い状態を維持できる住宅であっても、家族の暮らしや、社会の変化、住宅設備機器の進歩に変化があった時に対応できなくては、快適な暮らしを長年続けられません。

どのような変化があったとしても、間取りや住宅設備機器を、手軽に替えられる備えが必要です。例えば、夫婦だけの暮らしから、子供が生まれた後の暮らしでは、暮らしやすい間取りが異なります。さらに、子供の成長、独立に伴って、暮らしは変化し続けます。家族の誰かに車椅子が必要になることもあるかもしれません。

更新対策とは、そのようなときに、莫大な費用をかけずに、手軽のリフォームできる構造になっていることを評価する項目です。戸建て住宅には、表示することが求められていませんが、長く住むためには、重要な項目です。

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室内環境を調える為の備え…省エネルギー対策

日本には四季があり、夏になれば暑くなり、冬になれば寒くなり、室内に結露が発生します。そのような気候の変化があっても、最小限の冷暖房で、室内の温度を快適に維持し、結露を防ぐためには、住宅の断熱性と、気密性の高さが必要です。同時に、冬には十分な陽射しを室内に採り込み、夏には、陽射しを遮るための対策も求められます。

省エネルギー対策等級は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(通称「省エネ法」)に基づき定められた、新旧の「住宅の省エネルギー基準」の水準に準拠して定めています。全国を気候条件の違いに応じて大きく6つの地域に分けられた地域区分のうち、東京23区は、6地域にはいります。大島や新島は7地域、八王子市や、立川市は5地域です。

■省エネルギー対策等級

  • 省エネルギー対策等級2 エネルギーの小さな削減のための対策が講じられている
  • 省エネルギー対策等級3 エネルギーの一定程度の削減のための対策が講じられている
  • 省エネルギー対策等級4 エネルギーの大きな削減のための対策(エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定による建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準に相当する程度)が講じられている

具体的には、住宅に使われる建材や窓の断熱性、窓や建て方による機密性、結露を発生させない換気機能が求められます。

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室内のきれいな空気を維持するための備え…ホルムアルデヒド対策・換気対策

住宅室内の空気には、様々な物質が含まれていますが、中には人体に悪影響を与える化学物質もあります。また、空気中に含まれる水分量が多すぎると、カビやダニを発生させる原因になってしまいます。

健康な生活ができる家には、空気中に有害な化学物質をまき散らせない建材と、室内に余分な水蒸気を増やさない換気機能が必要です。その為、居室の内装の仕上げや、下地材等からのホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策が求められます。

■ ホルムアルデヒド発散等級
居室の内装の仕上げ及び換気等の措置のない天井裏等の下地材等に使用される特定建材からのホルムアルデヒドの発散量の少なさを表す等級です。

  • ホルムアルデヒド発散等級2 ホルムアルデヒドの発散量が少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上)
  • ホルムアルデヒド発散等級3 ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上)

■ 換気対策

室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策 

  • 住宅の居室に、機械換気設備などの必要な換気量が確保できる対策の有無
  • 便所・浴室・台所に、機械換気設備、または換気のできる窓などの、必要な換気量が確保できる対策の有無
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明るさへの備え…単純開口率・方位別開口比

窓の位置や大きさによって、室内の陽射しの入り方が変わります。窓には、明るさと風を採り込み、室内での作業がしやすくする、換気を良くするという以外にも、生活に欠かせない要素を与えてくれます。例えば、眺望を楽しむ、開放感や安らぎを得るというような、心理的な効果も、窓がなくては生まれません。

  • 単純開口率 開口部のサイズを床面積との比率で評価して表示します。数値が大きいほど、陽射しを採り入れる量が大きい状態を示します。
  • 方位別開口比 窓は、面している方向によって、陽射しの入り方が変わりますので、開口部の面積の面している方向ごとの比率の大きさを示します。

バリアフリーへの備え…高齢者等配慮対策等級

高齢者が暮らしやすい環境を調える為に、大掛かりな工事をせず、手軽にバリアフリーに替えられる対策の度合いを示す等級です。バリアフリーとは、高齢者自身が安全に移動できることと、介助がしやすいことの両面が求められます。
■ 高齢者等配慮対策等級(住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度)

  • 高齢者等配慮対策等級1 住戸内において、建築基準法に定める移動時の安全性を確保する措置が講じられている
  • 高齢者等配慮対策等級2 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられている
  • 高齢者等配慮対策等級3 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うための基本的な措置が講じられている
  • 高齢者等配慮対策等級4 高齢者等が安全に移動することに配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに配慮した措置が講じられている
  • 高齢者等配慮対策等級5 高齢者等が安全に移動することに特に配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられている

狭小住宅においては、特に陽射しと風を採り入れるための対策が必要です。また、戸建て住宅には求められていませんが、防音対策、吹き抜けやスキップフロアを採用しても、低下しない断熱性の高さも必要です。家づくりプランを進める際には、間取りや、デザイン性だけではなく、住宅性能や、将来に向けての更新対策も、併せて考えることが大切です。

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ホープスの狭小住宅への想い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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