日本は地震の多い国です。したがって、高層マンションやビルだけではなく、個人の住宅にも耐震基準が設けられています。その中でも3階建ての狭小住宅には耐震性能の高さが求められます。狭小住宅に高い耐震性が必要な理由について考えみましょう。

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木造住宅の耐震性

現在定められている住宅の耐震基準は、昭和56(1981)年に導入された新耐震基準です。昭和53(1978)年の宮城県沖地震の発生により受けた被害の大きさから、旧耐震基準の内容の見直しが行われた後に、定めたれられた新しい耐震基準です。

阪神淡路大震災で被害を受けた住宅のうち、新耐震基準で建てられた家の被害状況は、旧耐震基準で建てられた家よりも少なかったことが調査の結果わかっています。旧耐震基準で建てられた家は、約29%が大きな被害を受け、約37%が中程度、約34%が軽い被害、又は被害なしでした。一方、新耐震基準で建てられた家のうち、大きな被害を受けた住宅は約8パーセント、中程度の被害が約16パーセント、軽い被害、又は被害なしが約75パーセントでした。

そして、その後も、平成7(1995)年に発生した阪神・淡路大震災後を受けて、平成12(2000)年に木造住宅の基礎、接合部の仕様、壁配置などに対してさらなる改正が行われました。

平成28年(2016)年4月に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、多くの木造住宅が被害を受けました。しかし、その多くは、旧耐震基準の木造住宅であったことが調査の結果わかっています。新耐震基準を満たした木造住宅の中でも、平成12(2000)年の建築基準法の改正以後に建てられた住宅の被害が少なかったことも報告されています。

また、熊本地震では、余震が続き、始めの大きな揺れには耐えられたものの、余震が続くうちに被害が広がったという問題も起きました。その為、耐震性には1回の大きな衝撃に耐えるだけではなく、何度衝撃を受けても耐えられることが求められます。

地震はいつ起こるか予測できません。これまで、地震を予測する為の研究には莫大な費用と時間がかけられてきました。しかし近年、地震は予測不可能であるということがわかってきました。したがって、住宅の耐震基準は、過去の経験をもとに作成するしかなく、現在できることは、予測不能なほどの大地震が起こっても耐えられる家に住むということしかありません。

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木造3階建て狭小住宅が持つ地震に対する3つの不安

3階建ての家は、2階建ての家より地震による被害を受けやすいという不安があります。特に、限られた敷地内で、生活に必要な床面積を確保する為の工夫が凝らされて建てられる狭小住宅においては、通常の3階建て住宅より、細長い形状になってしまいます。

狭小住宅では、敷地の狭さから発生する暮らしにくさを解決する為に、様々な設計上の工夫がおこなわれます。周辺をマンションや、他の住宅に取り囲まれている環境の狭小敷地に3階建て住宅を建てれば、1階、2階は日当たりが悪くなってしまいます。1日中日当たりが悪く、薄暗い家であれば、著しく生活の質が低下し、健康的で快適な暮らしを営むことはできません。

狭小住宅では、日当たりを確保する為に、吹き抜けや大開口を採用します。吹き抜けや大開口は、陽ざしの溢れる明るい家、実際の面積より広い空間を感じさせる開放感のある家を実現します。しかしその一方、吹き抜けは1階と2階、2階と3階の間にある床面積を狭め、縦に長い空間を作ります。大開口は、外壁の面積を少なくします。その結果、耐震性能が低下してしまう恐れがあります。

 

 

 

 

 

 

また、3階建てにしてもなお、床面積が十分ではない場合に採用されるのがスキップフロアです。スキップフロアとは、1階と2階、2階と3階の間に中2階、中3階を設ける建築方法です。段差をつけることで限られた床面積を有効に使えるようになり、収納スペースも確保しやすくなります。

また、間仕切り壁が少なくなる分、横の空間が広がり、風通しがよくなるとともに、陽ざしも届きやすくなります。そして視覚的にも広々とした感覚が得られます。スキップフロアは吹き抜けと違い、床面積が狭まるわけではありません。しかし、床は段差によって途切れます。この床の途切れが、構造的な弱点となり、耐震性能が低下してしまう恐れがあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに狭小敷地では、自宅の敷地内に駐車スペースを作れないことがあります。このような場合には、住宅内に駐車スペースを作るビルトインガレージが採用されます。しかし、このビルトインガレージも耐震性を低下させる原因となる恐れがあります。なぜなら、大開口の窓と同じく、壁の面積が少なくなるからです。

間口と奥行きの広い家であれば、自動車1台分の間口が開いていても、それほど耐震性に影響を与えるものではありません。しかし、間口の狭い家では、住宅の四面の壁のうち、一面のほとんどが開口部になってしまいます。1階の一面がほとんど開口部になっている設計で、2階と3階の重みを受け止めなくてはならないという家は、通常の木造住宅であれば、大地震が起きた時には、非常に危険な状態になりかねません。

通常の住宅よりも地震に弱い家になりかねない要素がたくさんある狭小住宅を、安全な家にする為には、地震に強い住宅にしなくてはなりません。

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地震に強い狭小住宅は鉄骨造?SE構法?

木造住宅より地震に強い住宅と考えると、誰もが思いつくのは鉄骨造の家ではないでしょうか?しかし、狭小敷地に鉄骨造の住宅を建てる為には、いくつかの問題点があります。地盤が強固でなかった場合には、地盤改造が必要です。さらに、住宅が密集している、道路に面している間口の幅が狭い、敷地に面している道路の幅が狭いというような周辺環境の場合、コンクリートに必要なミキサー車やポンプ車などが入れない恐れがあります。

また、築後3~5年間はコンクリートから水分が抜けきらない為、結露や結露によるカビが発生しやすい、コンクリートは熱伝導率が高い為、外気の影響を受けやすく、夏は暑く、冬は寒い家になりやすいといったことも、デメリットとしてあげられます。

地震に強い家としてのもう一つの選択肢は、SE構法の住宅です。SE構法は木造住宅でありながら、地震に強いラーメン構造で建築する耐震性の高い工法のことです。在来工法の住宅では、耐力壁の量で耐震性能を上げます。耐力壁とは地震や強風が発生させる横からの揺れによる力を支える壁のことです。壁の中に筋交いという木材を入れて、横からの力に耐えられる壁にするのです。耐力壁によって耐震性は上がりますが、吹き抜けや大開口などを採用すれば、耐力壁の量が減るので、耐震性は落ちてしまいます。つまり、耐震性能を保つ為に間取りの制限が生じるということです。

しかし、ラーメン構造のSE構法では、間取りに制限がありません。SE構法は、阪神淡路大震災での経験を基に開発された耐震性の高い工法です。そのSE構法で使われているラーメン構造とは柱と梁が強固に接合されている構造躯体のことです。さらにSE構法に使われる耐力壁には、在来工法で使われる約3,5枚分の強度があります。強い構造躯体と強い耐力壁なので、在来工法のように多くの耐力壁を必要としません。その結果、吹き抜けや大開口、スキップフロア、ビルトインガレージなどを自由に取り入れた間取りにできるのです。

狭小敷地に建てる家で、日当たりや風通し、開放感のある空間などの暮らしやすさを実現しつつ、どんな地震が来ても倒壊しない安心感も得られる家が、SE構法の家です。SE構法の住宅で、安心できるくらし、快適な暮らしをお楽しみください。

HOPEsの狭小住宅への思い

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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