都心部の狭小住宅は、周囲の家との距離が近いので、住み始めてから暮らしにくさを感じたり、周辺の家とのトラブルに悩まされたりすることがあります。そのような状況を防ぐ為に必要な工夫について考えていきましょう。

Works(株)ホープスの建築実例

暮らしにくさを解決する為に必要なのは間取りの工夫と高い断熱性能と気密性能

狭小敷地に建てる狭小住宅は、快適な生活を送る為に必要な居住面積を確保する為に、縦に長くなる傾向があります。その為、敷地の面積やその家で暮らす家族の人数によっては、3階建ての家になることが少なくありません。そのように縦に長い家では、十分な日当たりと風通しを得るための工夫が必要です。

日当たりと風通し

日当たりと風通しを良くする為には、窓の大きさと位置に加えて、吹き抜けとの組み合わせ方が大切です。吹き抜けと窓を効率よく組み合わせることで、日当たりと風通しの良さを確保できます。ただし、この組み合わせをする場合、住宅に充分な断熱性能がなければ、夏は日差しの強さで室内の温度が上がり過ぎ、冬は暖房の暖かさが家中に行き届かない夏暑く冬寒い家になってしまいます。その為、吹き抜けや大開口を採用する為には、十分な断熱性能と気密性能が必要です。

居住面積

必要な居住面積を確保する為に、スキップフロアが採用されることもあります。スキップフロアは、中2階、中3階を設けて、家の中に段差をつけ、間仕切壁を無くす方法です。間仕切壁を無くすこと、低い段差をつけることで、空間に広がりが出ることも特徴の一つです。しかし、スキップフロアも吹き抜けと同様、断熱性と気密性が低い家に採用すれば、冷暖房の効率が低下し、快適な室温が維持できない家になってしまいます。

駐車スペース

ビルトインガレージは、敷地内に駐車スペースをとれない場合に、家の中にガレージを作る方法です。敷地内に駐車できず、外部に駐車場を借りるとなれば、雨の日でも駐車場に車を取りに行かなければならず、買い物の後には、荷物を下ろして自動車を置きに行かなくてはなりません。ビルトインガレージがあれば、そのような煩雑さを避けることができ、愛車を風雨や紫外線から守れます。また、都心部の高額な駐車場費用を捻出しなくても済むという経済的な良い面もあります。

ただし、寝室やリビングをビルトインガレージのそばに配置するような間取りにすると、排気ガスの臭いや、エンジン音が生活の快適さを損なう恐れがあります。その為、ビルトインガレージを設置する場合は、ビルトインガレージが生活に支障をきたさないようにする間取りが必要です。

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狭小住宅の暮らしにくさを解決する為には耐震性能の高さが必要

日当たりと風通しを確保する為の吹き抜けと大開口、居住面積を確保し、広がりのある空間にするスキップフロア、自宅内に駐車スペースを設置するビルトインガレージなど柱のない広い空間には、高い耐震性が求められます。広い空間のある家にして暮らしやすくなったとしても、安全性が低下してしまう家に安心して住まうことはできません。どんなに大きな地震が起こったとしても耐えられる構造の家だけが、吹き抜けや大開口、スキップフロアを採用できます。

近隣トラブルを避ける為の工夫

 

 

 

 

 

狭小住宅では隣家との距離が近いので、家自体の暮らしやすさ、快適さを確立するのと同時に、近隣の住宅との調和も重大な課題です。

窓の問題

窓の位置と大きさ、窓のタイプは、室内環境だけではなく、プライバシーや隣家との関係に大きな影響を与えます。窓は日当たりと風通しの為には絶対に必要ですから、減らすことはできません。プライバシー確保の為に、景観を楽しめる透明な窓ガラスをあきらめて、型ガラスにしてしまえば、室内の雰囲気が変わってしまいます。窓には、日当たりや風通し、プライバシーの確保以外に、内装や外観に対しても、大切な役割をするからです。

窓のデザインや窓ガラスに妥協せず、プライバシーを確保し、隣家との関係に支障を与えない為には、窓に工夫をする必要があります。

隣家の窓と面さない位置に、採光と採風ができる窓が設置できればよいのですが、家の方角などから、つけなくてはならない場合もあります。そのような場合には、窓の位置が重要なポイントです。

もし、窓の位置が道路に面していれば 道路からの視線が気になります。もし、窓の位置が隣家の窓と向かい合っていれば お互いに窓を開けにくくなってしまいます。隣家としては、後から建てるのだから、もともとあった家の窓に配慮するのは当然と考えることが多いと思います。その結果、窓の位置によっては、入居前から良い感情を持ってもらえなくなる恐れがあります。

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陽当りをあきらめず、プライバシーを確保する為の窓の位置

  • トップライト 天井につける窓です。視線を気にせず、日差しを十分に採り入れられます。昼間は青空が、雨の日にはガラスにあたる雨粒が、夜には星空が楽しめる窓です。また、天窓と壁面の窓の組み合わせで、通風量が増え、風通しの良さも確保できます。
  • ハイサイドライト 頭より高い位置につける窓です。横に長いハイサイドライトは、室内に満遍なく日差しを採り入れるとともに、夏場には熱い室内の空気を排出させる通風窓としての働きもします。
  • ローサイドライト 床面に接した位置につける窓です。ローサイドライトだけでは十分な採光はできませんが、プライバシーが確保しやすく、トップライトやハイサイドライトと組み合わせると、効率よく換気ができます。

プライバシーを確保し、窓の外の通行を妨げない窓のタイプ

窓には開閉方法の異なる窓がいくつもあります。狭小敷地で隣家との距離が近い場合、外に開くタイプの窓は、通行の邪魔になったり、隣家の敷地にはみ出してしまったりする恐れがあります。引き違い窓や、内側に開くタイプの窓の中から、採光、採風が十分にでき、プライバシーを守れる窓を選ぶことが大切です。

  • 縦滑りだし窓 幅が狭く、縦に長い、細長い形の立てすべり出し窓は、外からの視線を遮ります。また、室内側に横を軸にして縦にすべりだしながら開くので、隣家との距離が短くても通行の邪魔になりません。

音と臭いの問題

犬の鳴き声や楽器の音など、遠くまで響く音は、敷地の広い住宅地でも騒音問題になります。しかし、狭小敷地に建つ住宅では、隣家との距離があればそれほど気にならないような音でも、近隣トラブルの原因になってしまうことがあります。

浴室やトイレの音

浴室やトイレが隣家の窓に面していると、浴室のシャワーの音やトイレの排水音が隣家に響いてしまうことがあります。自分の家の出す音が隣家に迷惑になる場合も、隣家の家の出す音が迷惑になる場合もあります。その為、水回りの位置は、隣家の窓に面した場所にならないように、自分の家のリビングの窓が隣家の浴室やトイレに面しないように配慮した間取りが必要です。

換気扇や室外機の音・臭い・熱

換気扇の位置と窓の位置の関係によっては、自宅での調理のニオイが、隣家に流入してしまうことや、反対に隣家の調理のニオイが自宅に入り込んできてしまうことがあります。換気扇から窓に入ってくる場合と、換気扇から換気扇に入ってくる場合があります。換気扇から換気扇を通して入ってくる場合、窓を開けられる季節なら窓を開ければよいのですが、窓を開けられない冬には、ニオイを逃がせません。

また、換気扇の種類にもよりますが、音が大きく、隣家に響いてしまう場合もあります。エアコンや給湯器の室外機も同様で、隣家の窓のそばに設置すると、音や室外機の排出する熱で迷惑をかけてしまいます。

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音の問題の解決には窓を工夫

窓ガラスには防音性能の高いタイプの窓ガラスやサッシがあります。外部からの音を遮断し、内部からの音を外部に響かせない為には、防音性能の高い窓ガラスが効果的です。赤ちゃんのいる家庭、犬と一緒に暮らしている家庭では、自宅からの音が近隣に響かないようにでき、周辺に商業施設や幹線道路など常に騒音を出す場所がある場合には、騒音を遮断することができます。

ビルトインガレージのシャッター音とエンジン音

 

【グレーチングの引き戸のガレージ 静かに開閉できます】

 

 

 

 

狭小敷地では、敷地内に自動車を置くスペースが取れない場合、ビルトインガレージが採用されることがあります。ビルトインガレージにはほとんどの場合、防犯の為シャッターをつけますが、隣家との距離が近いと、このシャッター音が近隣迷惑になってしまうことがあります。昼間や、夜の早い時間であれば、気にならない音であっても、毎晩仕事の都合で深夜に帰宅する、又は早朝出かけるというような生活をしている人は、シャッター音のことも考えておく必要があります。高価であってもシャッター音の低いシャッターを選ぶ、又はシャッター以外の方法を選ぶなどの工夫が必要です。

また、閉ざされた空間の中でエンジンをかけるので、エンジン音も近隣に響きます。天井裏に遮音シートを張る、吸音板を張り付けるなどの防音対策が必要です。

ビルトインガレージへの車の出し入れ

ビルトインガレージを設置する場所によっては、駐車の為の切り替えしで隣家の敷地に入り込んでしまうようなケースを見かけることがあります。このような状態は隣家にとっては迷惑になるので避けたい設置方法です。また、運転技術にもよりますが、道路との関係で、車の出し入れが難しい角度になっていると、安全にビルトインガレージを使えなくなる恐れがあります。建て込んでいる地域では、隣家の門柱にぶつけてしまったりするような事故を避ける為にも、安全に出し入れできるビルトインガレージにすることが重要です。

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狭小住宅の問題を解決するのは家の性能と周辺への気配りがある間取り

狭小住宅の暮らしを快適にする為には、断熱性、気密性、耐震性が重要なポイントです。そして近隣とのトラブルを避ける為には、近隣の状況に配慮した間取りが大切です。

家は長く暮らすところです。近隣とのトラブルで暮らしにくい家になってしまえば、快適な家ではなくなってしまい、生活の質を維持できなくなってしまいます。家を建てる時には、外観や内装のセンスの良さなどに気持ちが傾いてしまいがちです。しかし、間取りを決める時には、近隣のことも含め、暮らし始めてからの生活を十分に考慮することも大切です。居心地の良い家を建て、快適な生活をお過ごしください。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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