都心部では、マンションの価格が高止まりしている状況が続いており、区によっては中古マンションも購入時より高額な価格で売却できます。反対に、郊外の住宅を見ると、売却できない中古住宅が増え続けています。その原因の一つとしては、都心回帰人口が増え続けていることにあります。

都心に戻ってくる人が増えている理由の一つは、不便な郊外の土地より、狭くても利便性の良い都市部の暮らしを好む人が増えているからだと考えられます。両親が残した郊外の家を受け継がず、都心部にマンションを購入する若いご夫婦というケースもあれば、郊外で暮らしていたご夫婦が引退後、都心部に住み替えをするというケースもあります。

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狭小住宅が注目される理由

このような中で注目されているのが狭小住宅です。親の土地がたまたま都心部の狭小地だったというケースもありますが、新たに狭小敷地を購入して、家を建てるケースもあります。マンションと戸建てを比べた時に、狭くても戸建ての家に住みたいと希望して狭小住宅を選ぶ人が増えています。

したがって、都心部の狭小住宅は高額な土地に建つ住宅であるというだけで資産価値があります。なぜなら、日本国内の住宅は30年経つと家の資産価値はなくなり、土地の代金だけになると言われているからです。

郊外の親の残した家を相続しない人が増えているのは、資産価値を無くした家を取り壊し、更地にする費用が、残る土地代より高額になってしまうケースが多いからだと言われています。それでは都心部の狭小住宅は30年経つとどうなるのでしょうか?

50年後を見据えた家づくり

都心部の狭小住宅を建て替える場合、立地条件によっては郊外の住宅より建て替えに費用がかかります。その理由は、道路に面する道路の幅が狭い敷地が多いからです。幅員4m以上の道路に2m以上土地が接しているという条件を満たしていたとしても、道路の幅が狭いと、一般的な重機が入れない場合があるからです。

さらに狭小住宅の場合、細長い3階建ての家が多い為に、一般的な住宅より足場が設置しにくいという問題点もあります。周辺に家が建て込んだ地域での解体作業には騒音に対する苦情などのトラブルもあり、手作業で取り壊しが進められます。その結果、費用と時間がかかってしまいます。このような状況を回避する為には、孫の世代まで良いコンデイションを維持できる家を建てることが必要です。

家を建てるタイミングによって異なりますが、20代後半から30代にかけての年齢の時に新しく家を建て、終の棲家とするには、50年以上、良いコンデイションを維持できる家でなくてはなりません。長期に渡って良い状態を維持できる家であれば、自分たちが暮らしやすいだけではなく、土地に加えて、家そのものの資産価値も維持できます。

70歳を過ぎて、3階建ての家では暮らしにくくなった時に、住み替えをする場合にも、高い資産価値を持つ家であれば、住み替えの費用の心配がありません。

長く安心して住まえる家、良いコンデイションを維持できる家とはどんな住宅なのでしょうか?具体的なことを知る為に、長く安心して住まえる家、良いコンデイションを維持できる家であることが認定される長期優良住宅について確認していきましょう。

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長期優良住宅という制度が生まれた理由

日本では長年に渡って、作っては壊すという住宅の作り方をしてきました。しかし、この方法を続けていれば、中古住宅の取り壊しに大量の廃材が出る、使われない中古住宅が増える、一生かけて支払いを済ませたころには家の価値がなくなるなど、資源的にも、庶民の暮らしにも、土地活用的にもすべての面で膨大な無駄が出続けてしまいます。

もし、家が長期に良い状態を維持できれば、建て替えをせずに長く住まうことができます。また、中古の家を探している人にとっては質の良い中古住宅が手に入り、中古住宅を売却して住み替えを検討している人にとっては、高額で自宅を売却できます。このような良い循環を作る為、質の良い住宅を建て、長期に渡って大切に住み続ける為に、この制度は生まれました。

海外では、住宅は3世代に渡って住み続けられる家を建てる国が多く、イギリスの住宅の耐用年数は141年もあるそうです。次いでアメリカでは103年、フランスは86年、ドイツは79年と言われています。それに比べると、日本の住宅の耐用年数30年はいかにも短い期間です。

長期優良住宅の基準

 

 

 

 

 

 

長期優良住宅には国が定めた基準があります。この基準を満たした家が長期優良住宅として認められます。長期優良住宅として認定されるためには、申請などの手間や、長期優良住宅の条件を満たす為に建築費が嵩むことから、デメリットの方が多いなど、いろいろな意見が言われています。しかし、100年維持できる家にする為には、厳しい基準が必要であり、基準を満たす為には建築費が嵩みます。

地震に強い家

耐震性能は耐震等級という基準で表されます。耐震等級は、国が定めている地震に対する耐性の程度です。

【耐震等級1】

  • 建築基準法に定められている耐震性能
  • 震度6強から7程度の地震が起きても、倒壊、崩壊しない
  • 震度5程の地震が起きても損傷しない

【耐震等級2】

  • 耐震等級1の1,25倍の耐震性能

【耐震等級3】

  • 耐震等級1の5倍の耐震性能
  • 震度6強~7程度の地震が発生しても、無傷、又は軽い補修をすれば住み続けられる

長期優良住宅では、耐震等級2が求められます。

劣化しない家

家の劣化に対する耐性は、後続躯体を長く使える対策によって強くなります。木造住宅の場合には、床下空間に点検に充分な高さがあり、床下と小屋裏に点検口が設置されている、床下換気と防湿措置が施されている、床下に防腐、防蟻措置が施されているなど、家の構造躯体を良いコンデイションに維持する為の対策が求められます。

維持管理のしやすい家

構造躯体より耐用年数が短い内装や住宅設備機器などの点検や補修がしやすいような措置がされていることが求められます。どんなに性能の良い家でも適切な管理をしなければ、長持ちしないからです。

定期的な点検や補修の計画がされている家

家のコンデイションを良い状態に維持する為の定期的な点検や補修に対しての計画が最低でも10年に1度はされていることが求められます。

ライフスタイルの変化に応じられる家

子供の成長や独立など、家族構成や暮らし方の変化に合わせて、間取りを変えられることが求められます。

バリアフリーにできる家

将来的にバリアフリーに改修できるスペースが確保されていることが求められます。

省エネルギー性

電気やガスなど、多くのエネルギーを消費しなくても快適な室温を維持する為には、断熱性が必要です。家の内部から流出してしまう熱量を表す熱損失係数Q値、夏場、家に侵入してくる陽射しの量を表す夏期日射取得係数μ値、壁や屋根を通して通過する熱量を表す熱貫流率U値が、省エネルギー対策等級4に適応することが求められます。

居住水準を確保する為の床面積のある家

一戸建て住宅では75㎡以上の床面積が求められます。

周辺の景観を向上させる家

デザインや色など、地域の居住環境に調和する外観の家であることが求められます。

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長期優良住宅を建てる為に必要なこと

耐震性や耐久性などの様々な基準を満たしている長期優良住宅は、安心して長く住まえる家です。住宅は、数十年をかけて住宅ローンを支払い続けて手に入れるケースがほとんどです。一括購入できる人や、1~2年で住宅ローンの支払いが終わる人は、多くはないはずです。そのように大変な思いをして手に入れる住宅の寿命が30年だとしても、ほとんどの人は家とはそんなものという概念を持っています。しかし、長期優良住宅であれば、孫の代まで使える家を建てられます。

ただし、通常の住宅を建てるより費用が嵩み、通常の住宅であれば必要ない申請手続きもしなくてはなりません。手間はかかりますが、申請して認定されると、経済面でのサポートが得られます。

長期優良住宅で得られる経済面のサポート

長期優良住宅は、通常の住宅を建てるより、建築費用が嵩みます。特に狭小住宅の場合は、高級な建材を使った難しい施工の家であるケースが多いので、もともと建築費用も通常の住宅に比べると割高です。

しかし、長期優良住宅は、国が推し進めている政策なので、税金や住宅ローンに関して経済面でのサポートを得られます。

  • 住宅ローン控除(住宅ローン減税)

平成26年4月1日~平成33年12月31日の期間に長期優良住宅に居住を始めた場合、10年間は住宅ローン控除が優遇されます。

一般の住宅では、控除対象借入限度額は、消費税8%または10%適用の場合4,000万円ですが、長期優良住宅では5,000蔓延まで借り入れ限度額が引き上げられます。

控除率は同じ1パーセントなので、一般の住宅では最大控除額400万円、年間控除額40万円と比較すると、長期優良住宅では最大控除額500万円、年間控除額50万円なります。年間で考えるとそれほど多い金額ではありませんが、10年間適用されるので、家計の節約ができます。

  • 投資型減税

住宅ローンの控除を受けない場合には、M2あたりのかかりまし費用(43,800円/m2)×床面積×10パーセントの控除額で算出された額が控除される投資型減税を最大控除額65万円まで受けられます。

  • 不動産取得税

平成32年12月31日までに入居した場合、一般住宅では1200万円より多い1300万円が不動産取得税から控除されます。

  • 固定資産税

平成32年12月31日までに入居した場合、税額が1/2に減額される減税措置の適用期間が一般住宅では1~3年間の適用期間が、長期優良住宅では1~5年間に延長されます。

  • 住宅ローンの金利

フラット35 Sを利用して住宅ローンを組むと、金利が低く抑えられます。フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して貸し出す低金利(1.37%)の住宅ローンです。その中でもフラット35 Sには、長期優良住宅に対して、10年間0.25%金利が引き下げられるプランがあります。

その他にも、返済期間最長50年で売却した場合には、購入者が住宅ローンを引き継げるフラット50というプランもあります。

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資産価値を持つ家が持つ意味

長期優良住宅は長期間に渡って住まうことのできる家です。日々の暮らしを快適にすることに加えて、資産価値を維持できる住宅です。資産価値の高い家は、ライフスタイルの変化があった時のリスクを減らし、一生を安心して暮らせる家です。

長期優良住宅は費用が嵩み、建築にかかわる手数も増えますが、将来を見据え、どのような住宅を望むのかを考える時の選択肢の一つです。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる施工例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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