自然を取り入れたパッシブデザインとは?解説します
地球と共に呼吸する家づくり、それが「パッシブデザイン」です。
自然の恵みを巧みに取り入れ、エネルギー消費を抑えるこのデザイン手法は、住まいの快適さと環境保全の調和を求める新しい住宅の形です。
そこで、この記事では、パッシブデザインの基本概念から、その具体的な利用方法、さらにはそのメリットとデメリットに至るまで、詳細に解説していきます。
□パッシブデザインとは?
パッシブデザインとは自然が持つエネルギーを上手く扱うことを目的としたデザインを指します。
自然には様々な活用できるエネルギーがあり、日光や風力がその一例です。
それらの持つエネルギーを効率よく取り入れる、もしくは外に出すことをデザインによってか解決することを目的に考え出されました。
一例としては、日本の伝統的な長屋があげられるでしょう。
この長屋のデザインは、非常に風通しがよく、屋根が外に飛び出しているので、日光を遮断でき涼しい空間をデザインによってつくりだしているといえます。
このパッシブデザインは、夏の暑さに対して有効なデザインといえます。
□どんな利用方法があるの?
パッシブデザインには大きく5つの考える軸があります。
この5つを上手く調整しバランスをとることが、住みやすい空間を作るために必要になります。
1つ目、「太陽からの熱を利用する」。
冬場に大きな効果を発揮するのはこの「太陽光」です。
大きな窓の設置や、窓の配置を工夫することで太陽からの光と熱をより多く、より効率的に取り込むことができれば、エアコンやストーブを使わなくても室内が暖かなります。
よって、冬場での暖房の使用時間が少なくなるので省エネにつながります。
2つ目、「日光の利用」。
太陽の光は非常に明るく、自然な白色を持っています。
パッシブデザインでは、この太陽光を上手に取り入れることで昼の間、室内を明るくします。
南に面する場所や吹き抜けに大きな窓を設置することで、太陽からの自然な光を受け入れることで、昼間は照明をつけなくても室内を明るくします。
照明をつけないので、省エネな上に、自然な光なのでリラックスできる空間になるでしょう。
3つ目、「断熱」。
パッシブデザインでは、自然なエネルギーを上手く取り込むためのデザインなので、「断熱」に違和感をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、必要のないエネルギーが入らないようにすることと、取り込んだエネルギーが外に出ていかないようにすることの2点は考えなくてはいけません。
そのため、「断熱」が必要になってきます。
冬場にせっかく太陽から熱を取り込んでも、その熱が外に逃げてしまっては元も子もなく、夏場にせっかく外に出した夏が、屋根などからまた入ってくるのでは、せっかくのデザインが十分な効果を発揮しません。
さらに、この断熱性能が高いと、暖房や冷房の効率が良くなるので省エネにつながります。
4つ目、「日光を遮断する」。
1つ目と2つ目から、冬場や肌寒い季節で過ごしやすい空間をつくるためには、日光を取り入れる必要があり、そのためのパッシブデザインだとか解説しました。
しかし、これが夏場だとうまくいきません。
パッシブデザインでは、夏に日光を上手く遮断する方法も考えられています。
上記にある日本家屋にある屋根が一例ですが、それ以外にもすだれやシェードの利用や、夏と冬で太陽の位置が違うことを利用した窓と軒のデザインなどがあります。
5つ目、「風を室内に通す」。
夏場での、自然風の利用は非常に大きな効果があります。
湿度と気温が高い季節に風が当たると気持ちが良いですよね。
しかし、パッシブデザインでは、自然風は熱を外に逃がすことを目的にします。
またこの時注意することは、パッシブデザインにおいて熱を外に逃がすことが目的なので、風を通す時刻は外気温が比較的低い時間帯になることです。
自然風を利用するために、家のデザインは吹き抜けや高い天井など、立体的に風が通る構造になります。
こうすることによって、風が家全体を通りより効率的に室内の熱を外に排出するでしょう。
また、ウィンドキャッチャーを利用して通常の引き戸では取り入れることが難しい風を受け入れる方法や、季節や時間ごとに発生する特殊な風を受け入れる方法もあります。
こうした方法を利用することで、より効率的に風を取り入れ、快適な空間をデザインによって作るので、より省エネにつながるでしょう。
□パッシブデザインのメリットとは?
パッシブデザイン住宅の魅力は、環境への配慮と、生活コストの削減にあります。
このデザイン理念は、建物の配置や材料選択において自然の力を最大限に活用し、エネルギー消費を抑えることを目指します。
以下に、パッシブデザイン住宅の主なメリットについて解説します。
1:生活コストの削減
パッシブデザイン住宅は、自然光や自然風を活用し、冷暖房や照明などの電気機器に頼る頻度を減らします。
これにより、光熱費が大幅に削減され、日々の経済的負担が軽減されます。
2:健康的な生活環境
自然の光と風を取り入れることで、室内環境はより快適に保たれます。
過剰な冷暖房による身体への負担が減り、快適な室温が維持されることで、体調不良やヒートショックのリスクも低減します。
3:建物の耐久性と資産価値
パッシブデザインでは、自然エネルギーを効率よく利用するために、耐久性の高い素材を使用することが一般的です。
これにより、建物の寿命が延び、メンテナンスコストの削減にもつながります。
また、環境に優しい住宅としての評価が高まり、資産価値を高める要因となります。
4:季節の変動に強い
パッシブデザイン住宅は、季節の変動に対して強い耐性を持ちます。
夏は自然の涼しさを取り入れ、冬は日射を利用して暖かさを保ちます。
このように、季節ごとの対策が計画されているため、一年を通して快適な居住環境を提供します。
5:エコフレンドリーな生活
パッシブデザインは、環境保護にも寄与します。
化石燃料の消費を減らし、CO2排出量を削減することで、地球温暖化防止に貢献します。この環境に優しい住まい方は、将来世代への責任ある選択と言えるでしょう。
ここまで紹介したように、パッシブデザイン住宅は、単にコストを削減するだけでなく、快適で健康的な生活を実現し、環境保全にも貢献する持続可能な住まいです。
これらのメリットを考慮すると、パッシブデザインは現代の住宅において、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
□パッシブデザインのデメリットについて
パッシブデザイン住宅は、エネルギー効率と快適な住環境を提供する一方で、いくつかのデメリットも抱えています。
ここでは、パッシブデザイン住宅の主なデメリットについて解説します。
1:初期コストの高さ
パッシブデザイン住宅の最も顕著なデメリットは、建築時の初期コストの高さです。
熱損失を最小限に抑えるための高断熱材の使用や、自然の光と熱を最大限に活用するための設計、特別な窓の設置など、パッシブデザインには専門的な技術と材料が必要とされます。これらは通常の住宅に比べてコストが高くなりがちで、初期投資が大きくなる傾向があります。
2:回収期間の長さ
初期コストが高いため、その投資を回収するには相応の時間が必要です。
ランニングコストの節約による経済的な利益が見込まれるものの、その恩恵を実感するまでには10年から15年程度の時間がかかることが一般的です。
このため、短期間での費用対効果を重視する人にとっては、パッシブデザインは必ずしも最適な選択とは言えません。
3:設計会社が少ない
パッシブデザインを得意とする建築会社はまだ多くはありません。
そのため、希望するデザインやスタイルを実現できる建築会社の選択肢が限られることがあります。
これは、特定の地域やスタイルにこだわる場合、選択肢の幅が狭まるというデメリットとなります。
パッシブデザイン住宅は環境に優しい住まいの選択肢として魅力的です。
一方で、その導入に際しては、コスト面や設計の柔軟性などを慎重に検討する必要があることがわかります。
□パッシブデザインの成功例をご紹介!
パッシブデザインは、自然の力を最大限に活用し、快適かつ持続可能な住環境を実現する建築手法です。
ここでは、実際にパッシブデザインを取り入れて成功した家の事例をご紹介します。
1:建物の形をシンプルにする
建物の形をシンプルにすることは、パッシブデザインの成功に不可欠です。
この事例では、建物の凹凸を最小限に抑え、断熱性を高められます。
例えば、「総二階建て」は、1階部分の屋根が不要になり、建物の表面積を抑えられます。これは、エネルギー効率の向上だけでなく、建築費用の削減にも寄与する重要なポイントです。
2:通風口と玄関を工夫する
パッシブデザインにおいて、通風は重要な要素です。
部屋の風通しを確保するためには、2方向の開口部を設けることが効果的です。
また、玄関の気密性を高めることで、外気の侵入を防ぎます。
特に、玄関ホールを設けることで、外気が室内に入り込むのをさらに抑制できます。
3:吹き抜けを作る
吹き抜けは、空間を立体的に活用し、通風を効率的に行うための素晴らしい方法です。
特に、リビングに吹き抜けを設けることで、1階と2階の空気を自然に循環させられます。
また、吹き抜けを通じて採光を行えば、明るく開放的な室内空間を実現できます。
4:適切な窓と庇(ひさし)を作る
窓は、パッシブデザインにおいて、自然光と風を取り込む重要な役割を果たします。
冬に太陽の熱を取り込むために南側の窓を大きくし、他の窓は熱が逃げないように小さくすることがポイントです。
また、庇や日よけを設けることで、夏の日差しをコントロールし、室内の温度上昇を抑えます。
□パッシブデザインでの注意点
パッシブデザインは、自然の力を利用するので、それぞれの地域にあったデザインがあります。
例を挙げると、北海道は比較的夏が涼しく冬場が非常に寒くなるので、冬場の気候に適したデザインとなります。
逆に、九州地方では冬場は規格的暖かく夏場が非常に暑くなるので、夏場の気候に適したデザインとなるでしょう。
つまり、九州で北海道のデザインや北海道で九州のデザインは合わないということです。
パッシブデザインを取り入れるときは、住んでいる気候を考え、その土地の気質に合ったデザインを考えることが必要です。
□まとめ
パッシブデザインは、自然エネルギーを最大限に活用し、快適で持続可能な住環境を目指す建築手法です。
太陽光や自然風の利用、断熱や日射遮断、通風の最適化など、5つの主要な要素を駆使することで、エネルギー効率の高い生活空間が実現します。
また、これらにより、生活コストの削減、健康的な居住環境、建物の耐久性向上、季節変動への強さ、そしてエコフレンドリーな生活が可能になります。
新しい家の建築の際は、本記事を参考にパッシブデザインをぜひ検討してみてください。