パッシブデザインにはどんな特徴がある?外観についてもご紹介します!

一生の中でもそうそう無いイベントである家づくり。
家づくりにかかる予算はもちろんですが、住み始めてからかかる生活費のことも考慮しなければなりません。
と言うのも、近年の物価高の影響を受け、日本では光熱費の高騰が問題になっており、現在の日本の世帯を圧迫しているという背景があるのです。
そのため、生活費の上昇に苦しまないためにも、家づくりの段階で今後のことを考慮しておく必要があります。

そこでご紹介したいのが、「パッシブデザイン」の家です。
光熱費削減や生活快適性のアップ、外観へのこだわりなど、私たちの生活を豊かにするものなので、生活への不安を最小限にできます。
本記事では、このパッシブデザインについて解説していくので、ぜひご覧ください。

□パッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、英単語の”passive”が由来となっており、受け身・受動という意味を持ちます。
では、何に対して受け身・受動するのかというと、日光や風などの「自然エネルギー」です。
つまり、自然から得られるエネルギーを受け取り、それを日常生活に活かすのがパッシブデザインのコンセプトなのです。

そんなパッシブデザインには、いくつかの基準が設けられています。
例えば「断熱性能が高い」「気密性能が高く室温の変化が少ない」などが挙げられますが、まとめると高気密高断熱であることがパッシブデザインの持つアイデンティティだとわかります。

□パッシブデザインが注目されている理由

1.環境との調和

パッシブデザインは、自然エネルギーを最大限に活用することで、環境負荷を低減します。
この設計手法は、太陽光、風、熱などの自然エネルギーを巧妙に取り入れることで、人々が住む空間を快適にするだけでなく、地球にも優しい選択となります。
例えば、太陽光を効率よく取り入れることで、照明の必要が減少し、それによって電力消費が削減されます。
このようにして、パッシブデザインは持続可能な生活を実現するための1つの手段となっているのです。

2.年間を通じた快適性

この設計思想によって、冬は暖かく、夏は涼しい住環境が実現します。
冷暖房の使用が減少するため、エネルギー消費も抑えられます。
さらに、窓の位置や形状、断熱材の選定など、細部にわたる設計が行われることで、自然の風を効率よく取り入れたり、日射熱の適切なコントロールが可能です。
これにより、年間を通して快適な室温が保たれ、生活の質が向上します。

3.SDGsとのシナジー

パッシブデザインはSDGs(持続可能な開発目標)にも貢献します。
自然エネルギーの活用と環境負荷の低減は、持続可能な社会を形成する上で非常に重要な要素です。
具体的には、エネルギーの効率的な使用(SDGs目標7)や、気候変動への対策(SDGs目標13)に直接貢献します。
また、地域社会の持続可能な運営(SDGs目標11)にも影響を与える可能性があります。
このように、パッシブデザインは多角的にSDGsの目標達成に寄与しているのです。

以上のように、パッシブデザインは環境との調和、年間を通じた快適性、そしてSDGsとのシナジーという3つの大きな魅力を持っており、非常に注目を集めています。
これらの要素が組み合わさることで、持続可能で質の高い生活が実現するのです。

□パッシブデザインとアクティブデザインの違い

パッシブデザインの他に、アクティブデザインという環境に環境に配慮した設計手法が存在します。
しかし、この2者間には違いがあります。

1.設計手法の違い

パッシブデザインとアクティブデザインは、いずれも環境負荷を低減する目的で設計されますが、そのアプローチは大きく異なります。
パッシブデザインは、太陽光、風、地熱などの自然エネルギーを活用することで、エネルギー消費を抑え、持続可能な生活を実現します。
この手法は、自然のリズムと調和しながら、人々の生活を豊かにすることを目指しています。

一方で、アクティブデザインは先進技術を駆使して、エネルギー効率を高めることを目的とします。
例えば、太陽光発電や風力発電、さらにはスマートホーム技術などを組み合わせることで、環境に配慮した生活が可能になります。

2.コスト面での違い

アクティブデザインは高度な技術を用いるため、初期投資が高くなる可能性があります。
この高い初期投資は、先進的な設備やシステムを導入する必要があるためです。
しかし、長期的に見れば、これらの設備がエネルギー効率を高めることで、運用コストは削減される可能性があります。

一方で、パッシブデザインは自然エネルギーを活用するため、初期投資は比較的抑えられます。
さらに、運用コストも低く抑えられるため、経済的にも持続可能な選択となり得ます。

3.選択の自由度

パッシブデザインは、自然エネルギーをどれだけ活用するかによって、設計の自由度が高まります。
この自由度の高さは、地域の気候や自然環境、さらには住む人々のライフスタイルに合わせて、最適な設計が可能であることを意味します。
例えば、熱帯気候の地域では、風を効率よく取り入れる設計が求められるでしょう。
一方、寒冷地では、太陽光を最大限に活用する設計が有効です。

アクティブデザインでも、先進技術を用いることで多様な選択肢がありますが、その選択は技術の進展やコストに大きく依存するため、一定の制約が存在します。

□パッシブデザインの5つの要素

1.断熱性能

断熱性能が高い建築は、冬季に暖かく、夏季に涼しい住環境を提供します。
この断熱性能は、健康にも大いに寄与します。
例えば、適切な室温は免疫力を高め、風邪やインフルエンザから身を守る助けとなります。
さらに、断熱性能が高いと、冷暖房の使用時間が減少するため、エネルギー消費が抑えられます。
これは、環境にも優しく、長期的には経済的なメリットもあります。

2.日射遮蔽

日射を遮蔽することで、室内温度を適切にコントロールできます。
これにより、冷暖房の使用を減らせるため、エネルギー効率が向上します。
日射遮蔽は、カーテンやシェード、さらには外構での緑化など、多様な方法で実現できます。
また、日射遮蔽は、家具や床材の劣化を防ぐ副次的な効果もあるため、長期的なメンテナンスコストも削減されるでしょう。

3.自然風利用

窓の位置や形状を工夫することで、自然風を効率よく取り込めます。
この自然風がもたらす涼しさは、夏場の快適性を大いに高めてくれます。
さらに、良好な換気は、室内の湿度を適切に保ち、カビやダニの発生を防ぐという健康面でのメリットもあります。
自然風の利用は、エアコンや扇風機の使用を減らすことで、エネルギー消費とコストを削減する効果もあります。

4.昼光利用

自然光を上手く取り込む設計にすることで、照明の使用を減らせます。
この昼光利用は、目の疲れを減らし、心地よい生活空間を作り出します。
また、自然光は植物の成長を促し、室内の緑化にも寄与します。

5.日射熱利用

日射熱を利用する設計にすることで、冬場の暖房の必要が減少します。
また、日射熱を効率よく活用することで、室内の乾燥を防ぎ、健康にも良い影響を与えてくれます。

□パッシブデザインのメリット

パッシブデザインを取り入れた家づくりをすることで、「光熱費を抑えられる」「自然を身近に感じられる」というメリットを得られます。
生活に対する心理的安全性を確保できる、2つのメリットを詳しくみていきましょう。

*光熱費を抑えられる

パッシブデザインを取り入れた住宅は、その断熱性・気密性の高さから、空調設備・照明などにかかる光熱費を削減できるというメリットがあります。
特に夏や冬は、クーラーや暖房の使用頻度、稼働時間は大きく増え、それに伴う光熱費も増加する傾向にあります。
冒頭でも述べた通り、近年は電気料金の値上げが顕著に行われており、その影響で従来に比べて光熱費が急増しているのです。

パッシブデザインの持つ高気密・高断熱の効果によって、エアコンから出た冷気や暖気を外に漏らすことなく、さらに外気の影響を受けないため、冷暖房の持ちが非常に良くなります。
冷暖房の持ちが良いと、設定温度を上げ下げしたり稼働率を上げたりする必要がなくなるので、その結果として光熱費削減に繋がります。

*自然を身近に感じられる

そもそもパッシブデザインは、自然エネルギーを取り入れているため、普段の生活のなかで日光や自然に吹く風の気持ち良さを感じられます。
何とこれによって体調を健康に保てたり、生活リズムを整えられたりする効果があるのです。

例えば、冬にできるだけ日当たりを良くできれば、日中はほとんど暖房が無くても過ごせることが増えるでしょう。
夏でも、風通しが良ければ扇風機がなくても、暑さに耐えられることもあるのでは無いでしょうか。
あまり冷暖房に頼りすぎると、外の環境に適応しづらくなり、急な熱中症や寒さに対応できなくなってしまいます。

このように、自然を身近に感じながら身体へも好影響を及ぼすのがパッシブデザインです。

□パッシブデザインのデメリット

確かにメリットの多いパッシブデザインですが、一方で費用面や設計難易度の高さなどのデメリットも存在します。

*建築費用が比較的高額になってしまう

パッシブデザインは、高気密高断熱加工を施す必要があるため、どうしてもその分の施工費用が高くなってしまいます。
高気密高断熱にするためには、質の良い断熱材をたくさん用いる必要があるからです。

しかし、一見かなり大きなデメリットに感じるかもしれませんが、長い目で見るとそうでもありません。
確かに建築費は高くなりますが、そもそもパッシブデザインは光熱費削減という効果があります。
これは短期的なメリットでは無いですが、今後数十年暮らしていく中でメリットになる要素です。
電気代の高騰が今後も想定される中、パッシブデザインを導入する方が得策だと言えます。
「塵も積もれば山となる」と言うように、毎月の電気代を少しずつ抑えられれば、その分貯蓄に回せたり他のことに使えたりするので、心理的安全にも繋がるでしょう。

*地域に合わせた設計が必要

自然エネルギーを必要とするパッシブデザインは、家を建てる地域の特徴を把握し、気候に合わせて建築する必要があります。
地域によって日光のあたり方や風の向きは異なりますので、これらの自然エネルギーを最大限効率よく取り入れられるような設計にする必要があるからです。
かなり精密さも求められ、例えば周辺の地形や隣の家との距離なども考慮しなければいけないほどです。

そのため、場合によっては自分たちの理想の間取りが実現できないというケースがあるかもしれません。
やはり、パッシブデザインの効果を優先する必要があるため、ある程度妥協をする部分もあるでしょうが、設計力や建築力の高い施工会社であれば、こだわりを諦めないといけないことも減ります。

□パッシブデザインの魅力とは?

1. 部屋の温度を快適に保てる

先ほども挙げたように、高気密・高断熱効果による電気代削減というメリットがありますが、それに付随して室温が一定に保たれることによる快適性アップも魅力です。
特に夏や冬は、数十年前とは違い、冷暖房が必須と言われています。
この状況下で室温の変動が激しいと、冷暖房をつけたり消したりを繰り返すことになり、手間がかかることになるでしょう。
高気密・高断熱のパッシブデザインにすることで、室温はほぼ一定に保たれ、快適性のアップにつながります。

2. 日本の四季を楽しめる

日本には春夏秋冬があり、季節によって気温や匂い、心地良さが異なります。
パッシブデザインなら、季節によって変わる自然エネルギーを感じながら生活を送れます。

例えば、夏は日差しが強く暑いものの、その分家の中は日当たりが良くなり、明るい雰囲気の中で生活できます。
秋であれば、少し寒さも感じつつちょうど良い温度の風を感じられるでしょう。
このように季節に合わせて住み心地も変化していくのは、日本だからこそ実現できる魅力ですよね。

□パッシブデザインの外観実例について

パッシブデザインは、効果やメリットばかりに目がいくかもしれませんが、もちろん外観をおしゃれにすることも可能です。
その実例について見ていきましょう。

1. 緑のカーテン

木や葉っぱを多く用いたカーテンを窓の外に設置することで、直射日光を遮るものです。
自然豊かな見た目にできることに加え、日光の遮蔽も可能な外観の実例です。

2. 天窓

これは一般的な窓よりも高い位置に設置されている窓で、高い位置から日光を取り込むことで照明代わりになるように設計をしています。
天気が悪い日は仕方ないですが、晴れの日は天窓から差し込む天然の照明で生活が可能になるので、自然の暖かさがあり身体にも良い環境で過ごせます。

□まとめ

パッシブデザインは、自然のエネルギーを最大限活かしたもので、家に取り入れることで様々なメリットがあります。
具体的なメリットとしては、光熱費削減、自然と身近に過ごせることによるライフスタイルのアップグレードなどが挙げられます。
もちろん建築費用や設計の難易度は高いですが、長い目で見ると私たちのメリットになることはほぼ確実でしょう。
特に電気代高騰、物価高がいつまで続くかわからないという不安定な世の中で、少しでも生活にゆとりを持たせるであろうパッシブデザイン。
ぜひご検討ください。

 

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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