パッシブデザインの住宅にはどのような種類がある?解説します!
環境に配慮した住宅として最近人気が出ているのが、パッシブデザイン住宅です。
「パッシブデザインという名前は聞いたことあるけど、どういう意味かは分からない」
「パッシブデザインの住宅を作るためにはどのような部分を意識すれば良いのだろう」
このようにお考えの方はたくさんいらっしゃるでしょう。
そこで今回の記事では、パッシブデザインとは何なのか、またそのポイントや設計手法などについて解説します。
環境に配慮した生活をしたいとお考えの方や、省エネを意識した暮らしをご検討中の方はぜひこの記事を最後まで読んでみてくださいね。
□パッシブデザインとは一体何なのか?
「パッシブ」は英語で、受動的な、受身な、消極的なという意味を持ちます。
パッシブの反対の言葉として「アクティブ」が用いられます。
積極的に活動し、能動的な意味を持つアクティブに対して、パッシブデザインは受身なデザインとされます。
しかし、「受身なデザイン」とは意味が分かりにくいですよね。
パッシブデザインを理解するために、住宅の温度環境調節をイメージしてみましょう。
夏場の暑い季節は室内の温度を下げるために、クーラーや扇風機をつけます。
冬場の寒い季節は室内の温度を上げるために、ストーブやエアコンをつけます。
このように、住宅の居住者が積極的に温度調節を行うことは「アクティブな活動」にあたります。
一方で、住宅に備え付けている太陽光発電からエネルギーを得ることは、「パッシブな活動」とされます。
ストーブやエアコンを居住者が自らスイッチを押して稼働させることは、アクティブな行動として捉えられますが、太陽光エネルギーを利用することはパッシブな活動として捉えられます。
つまり、パッシブデザインとは、機械に頼らず建築のデザイン的に自然エネルギーを活用することで住宅の温度環境を調節する手法のことです。
パッシブデザインにはいくつか種類がありますが、今回例に挙げた太陽光エネルギーは、「パッシブソーラー」と呼ばれます。
□パッシブデザインとアクティブデザインの違いとは
パッシブデザインがあるように、アクティブデザインも存在します。
パッシブデザインは自然の力を利用して可能な限り快適な住居空間を作り出すことを目的としていますが、アクティブデザインもエネルギー消費を抑制し、環境負荷の低減を目的としている部分では共通しています。
アクティブデザインは、先進的な技術を最大限に活用してエネルギーを最適化することを目指しています。
先進的な技術として、エコキュートやエネファームなどが挙げられます。
このような最新技術をフル活用することによって、エネルギー消費を抑えようとするのがアクティブデザインです。
パッシブデザインは自然の力を活用する点が最大の特徴であり、アクティブデザインは最新技術を活用することが最大の特徴であると言えるでしょう。
□パッシブデザインを構成する要素をご紹介!
パッシブデザインの建築手法を構成する要素は8つあります。
1つ目は、集熱です。
集熱は、太陽光や風などの自然エネルギーを住宅内に取り込み、居住スペース内の環境向上に大きな役割を果たします。
特に南向きの窓はパッシブデザイン上、集熱の機能を担っています。
集熱を効果的に行うためには、一般的な窓を使用するのではなく、冬は室内を暖めやすく夏は熱を放出できる仕組みが必要です。
2つ目は、熱移動です。
熱移動は室内にある空気を循環させる役割があります。
暖かい空気は天井の方へと上がり、冷たい空気は人が過ごす下の方へと移動するようになっています。
3つ目は、蓄熱です。
蓄熱は集熱と深い関わりがあり、集熱で集めた熱を室内に蓄える役割を持ちます。
日中は蓄熱し、夜間に放熱することで常にちょうど良い温度を保てるのです。
4つ目は、排熱です。
排熱は夏の暑い時期に室内の熱を外に放出する役割を担っています。
空気は熱せられると膨張して上に上昇する性質があります。
この性質を利用して、建物外に熱を放出することで住宅内の温度を下げられます。
5つ目は、日射遮蔽です。
集熱とは逆に、太陽光を遮ることで室内の温度上昇を抑えようとするのが日射遮蔽です。
日射遮蔽の例としては、南向きの深い庇やツル植物を活用したグリーンカーテンなどが挙げられます。
日本では伝統的にすだれを用いた日射遮蔽がなされてきました。
また、落葉樹林を植栽することも一種の方法として利用されてきました。
6つ目は、通風です。
人の体温は、人体の周りにある空気を温めます。
この空気を逃すのか、逃さないようにするのかで体感的な温度は変化します。
例えば、冬の寒い時期には、暖かさを得るために何枚も服を重ね着しますよね。
服を重ねると暖かく感じるのは、人体の周りにある空気が服によって逃げなくなるからです。
反対に、夏には腕や足が出る服を着て、人体の周りの空気を逃すようにしています。
冬にエアコンやストーブを多用せずに暖かさを感じるためには、この人体の周りにある空気を逃さないことが大切です。
夏に自然の力で涼しさを感じるためには、窓を対角線上に配置し、空気が住宅内を通りやすくすると良いです。
通風を意識することで、夏場の冷房代を抑えられるだけでなく、楽に快適な生活を実現できます。
7つ目は、採涼です。
夏に出かけて夜に帰ってくると、外気温は下がっているはずなのに家の中が暑いことがあると思います。
これは、壁が熱を吸収してしまっているからです。
窓を開けることで熱は放出されますが、日陰の涼しい場所から空気を取り入れることで、室内の温度を効果的に下げられます。
8つ目は、断熱気密です。
外からの熱の伝わりを遮ることで、外気温の影響を受けにくくなります。
その結果、室内の温度が一定に保たれやすくなります。
□パッシブデザインの設計手法を解説します!
パッシブデザインの設計手法はいくつかありますが、それらのうちの1つだけを採用してもパッシブデザインの本当の効果は得られません。
設計手法の中には、それぞれの良さが対立してしまうことがあるため、その対立を上手く解消することが重要です。
パッシブデザインの設計手法として主に用いられるのは、以下の5つです。
・断熱気密
・日射遮蔽
・自然風利用
・昼光利用
・日射熱利用暖房
日本家屋は伝統的に日射遮蔽が用いられてきました。
日本家屋の軒が深くなっているのは、日本の夏が暑く日差しが強いためです。
縁側が日陰に造られることがあるのは、日当たりの良い場所よりも涼しい空気を取り込みやすくするためです。
しかし、これらの手法は夏に特化しているため、日本の寒い冬にはかえってデメリットとして考えられてしまいます。
「では、冬のために日射熱利用に特化すれば良いのではないか」と考えてしまうと、夏の温度調節が難しくなってしまいます。
パッシブデザインといえば、断熱がしっかりしている家として捉えられがちですが、他の4つの項目も意識しなければバランスの取れたパッシブデザインとはいえません。
どのような地域に住むのか、また、どのような暮らしを理想としているのかによっても必要な手法は変わってくるため、まずはどのような暮らしをしたいかを考えてみると良いでしょう。
□まとめ
今回の記事では、パッシブデザインについて詳しく解説しました。
自然のエネルギーを活用した生活をしたい方には、パッシブ住宅がおすすめです。
パッシブデザインに興味が湧いた方は、ぜひお気軽に当社までご連絡ください。