狭小敷地には、敷地のうちの道路に面している部分が、狭い土地が少なくありません。細長い長方形の土地には、間口が広く奥行きが少ない土地と、間口は狭く、奥行きが長い土地があります。都心部の狭小敷地のほとんどは、間口が狭く、奥行きの長い土地です。そのような土地の特徴について、考えてみましょう。
間口が狭い土地の特徴
間口の距離は、広ければ広いほど、利用しやすい土地、狭ければ狭いほど、使いにくい土地と評価されます。その為、同じ地域にある同じ面積の土地であっても、間口の狭い土地ほど、土地の価格が低下します。
もちろん、土地の価格には、その他の条件も加味されます。土地の価格を決める条件には、敷地が道路に面している方角、隣り合う住宅や、道路との高低差、土地の形状、敷地が面している道路の幅があげられます。
間口が狭いうえに、北側に面している、隣家より低い位置にあるというような土地は、日当たりが悪い家になる恐れがあります。面している道路の幅が狭い上に、交通量の多い細い道路に面している場合には、安全に出入りしにくいという状況になる土地です。ただし、土地の価格は、悪条件が増えるほど、低下します。
ひとつの考え方として、都心部に家を持つ為には、立地的な悪条件の多い敷地に、機能性の高い狭小住宅を建てるという選択肢があります。住宅の性能と機能が高ければ、そのような敷地でも、快適な暮らしができるからです。
間口が狭い家の特徴
住宅が密集する地域に建つ間口が狭く、奥に長い住宅の特徴の一つには、日当たりと風通しの確保が難しいことがあげられます。特に、東西が道路に面している場合、南側が隣家に接している為、日当たりの悪い環境になる恐れがあります。
隣家との距離が近いので、隣家に面している方向には、窓を設置しにくいという問題もあります。周囲の環境を考えると、窓が少なくなることに加えて、狭い為に、閉塞感のある雰囲気の家になる恐れもあります。
また、延べ床面積を広くする為に、3階建てにするケースが多く、正面から見ると、縦に細長い家になることが多いです。その結果、重心が高くなり、バランスの良い外観デザインを造りあげることが難しくなるという面もあります。
間口が狭い注文住宅の間取りのポイント
マイナス面が多い間口が狭い家の特徴を、暮らしやすさに変える間取りのポイントについて考えてみましょう。
採光と採風とプライバシー
日差しと風を採りこみ、明るく風通しの良い家にする為には、窓の位置と大きさ、形状が大きく影響します。
トップライト
天井につける窓で、壁面につける窓の3倍もの採光量があります。隣家との距離が近くても、天井からの陽射しが取り込めます。壁からの光に比べると、日差しの拡がる範囲が広く、吹き抜けや、光を通す床と組み合わせると、家中に光が届きます。
特に、採光量が低くなりやすい北側に設置すると、効果的です。採光だけをするFIXタイプと、採風もできる開閉タイプがあります。開閉できるトップライトは、階下の壁に設置された窓との間に、風の通り抜ける道を作り、涼しい環境を作ります。
開閉方法は、専用の棒を使って、手動で開閉するタイプと、リモコンで操作するタイプ、雨や温度の変化にセンサーが反応して、自動的に開閉するタイプなどがあります。また、汚れのつきにくいガラスを使ったトップライトや、日差しが強すぎる時に使うトップライト用の網戸やブラインド、日差しと紫外線を遮る遮熱タイプの窓ガラスなどもあります。
トップライトは、家の中を明るくしてくれますが、開閉がしにくい、掃除がしにくい、夏は日差しが強く入り過ぎるなどのデメリットもあります。暮らし始めてから、使い勝手が悪かったな…と思わないよう、使いやすいタイプを選ぶことが大切です。
ハイサイドライト
頭より高い位置につける横長の窓は、光を採りこみ、切り取られた空を楽しめる、外部からの視線が入ってこない窓です。また、夏には、温度の上がった室内の空気を、効率良く排出する働きもします。隣家と向き合っている部屋など、視線が気になる部屋に取り入れると、落ち着いた室内環境を作れます。
中庭
間口が狭く、奥行きが長い家では、中庭も、採光と採風に役立ちます。家の中の部屋を全て、中庭に面するような間取りにすると、中庭からの光で、どの部屋も明るくなります。中庭に面した窓は、外部からの視線を心配せずに、いつでも開けることができます。
中庭部分を、土のままにして、3階まで届くような樹木を植える使い方や、ウッドデッキにして、子供部屋やリビングの延長として使う方法など、暮らしを楽しくする使い方がたくさんあります。
吹き抜けとスキップフロア
吹き抜けは、階下と階上の部屋の空間を繋げます。スキップフロアは、階下と階上の部屋の間に、もう一つの階を設けて、間仕切壁を無くし、横に並ぶ空間を繋げます。
どちらも、家の中の空間が繋がり、細長い家の閉塞感を無くします。トップライトと組み合わせると、光と風が家中に拡がり、日当たりがよく、風通しの良い室内環境が調います。
ただし、住宅の断熱性と気密性が高くない家では、冷暖房の効率が落ちてしまいます。吹き抜けを取り入れる場合には、住宅の性能もあげることが大切です。
居住面積と収納
細長い家では、細い直線上に部屋を並べなくてはなりません。その一つ一つを区切ると、廊下や間仕切壁が必要になり、居住面積が圧迫されてしまいます。その為、直線状に並ぶ部屋を壁で区切らず、廊下を省く間取りの工夫をします。
収納も同じ理屈です。狭小住宅では、物が出しっぱなしになっていると、すぐに散らかってしまうので収納スペースをたくさん作りたくなります。しかし、そうすると、居住面積が圧迫されてしまいます。
また、細かな収納スペースは、入れるものの大きさを、綿密に計算して作らなければ、大きすぎて入らない、小さすぎて収納スペース内にデッドスペースができてしまうといった使えない収納になってしまいます。大型で、内部を入れるものに合わせてカスタマイズできるタイプの収納スペースが、細長い家には役立ちます。
出入りの安全
敷地が面している道路が狭く、交通量が多い場合、出入りの安全を確保することも大切です。特に子育て中の場合には、玄関の位置を道路に向けない、玄関ドアの手前にゲートをつけるなど、子供が道路に出てしまうことを防ぐ玄関の間取りや、門扉の設置など、外構の工夫が必要です。
間口が狭く、道路との距離が近い家では、玄関を開けると、家の中が丸見えになってしまうことがありますが、道路に向けず横に作ると、このような問題も解決します。
間口が狭い家の建築事例
間口一間半のインナーガレージノある狭小住宅です。
構造 木造(SE構造)延床面積 65~80㎡
屋根と繋がる袖壁が、室内に風を採りこむウィンドキャッチの働きをしている狭小住宅です。
構造 木造(SE構造)延床面積 80~100㎡
明るく開放感のあるリビングと、グレーチングの引き戸のインナーガレージが特徴の狭小住宅です。
構造 木造(SE構法)延床面積 65~80㎡
HOPEsの狭小住宅への思い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。