ここ数年、都心部で人気の高い住宅が狭小住宅です。都心の暮らしは、利便性が高い分、土地も高額です。その為、30坪の家を建てられるだけの土地を購入し、家を建てれば、その後の家計が圧迫されてしまいます。

東京都の2019年の土地の公示地価は109万6445円/m2、坪単価362万4612円、23区の変動率は常に上昇傾向です。その中でも、坪単価が高額な区は、中央区(2717.3万円)、千代田区は(2092.8万円)ですが、渋谷区、港区、新宿区も1,000万円を超えます。そしてどの区も、地価は上昇し続けています。もし、30~50坪の土地を購入し、注文住宅を建てるとなれば、区によっては億単位の資金が必要です。

一方、総務省統計局の平成26年度の調査によれば、30~34歳の平均的な世帯年収は、493万円、35~39歳では603万円です。また、2018年に東京都がまとめた2017年度の東京都福祉保健基礎調査では、共働きしていない世帯の中で、最も多かった世帯年収は、600~800万円未満、全体の22.0%でした。共働き世帯のうち、22.8%は、1,000万円を超える世帯年収が最も多く全体の28,5パーセント、次いで600~800万円未満が22パーセントでした。

さらに、東京都に住む世帯のうち、戸建て住宅に住んでいる世帯は、約4割、次いで、アパート、マンションなどの民間賃貸住宅に住んでいる世帯が約3割弱でした。その他は、公営住宅、社宅などに分かれています。戸建て住宅に住みたくても、戸建て住宅を手に入れられない家族も少なくないということがわかります。そのような都心部の事情に応じ、狭い敷地面積に様々な工夫をして建てる家が狭小住宅です。

Works(株)ホープスの建築実例

狭小住宅とはどんな土地に建つ家?

狭小住宅は、狭小敷地に建つ家です。狭小敷地とは、15坪~20坪以下の土地のことです。土地を売却する場合、ビルやマンションが建つほどの面積がなければ、分割して宅地として売り出します。その際、土地の価格が高額な地域であれば、細かく分割して売却することがあるのです。

分割する時点で、奥の敷地も道路に面するようにする為、整形だった土地が旗竿地に変わることもあります。また、元は整形だった土地に、都市計画道路が通ったために、変形の狭小地になってしまったというケースもあります。

従って、狭小敷地には、旗竿地や変形地、又はウナギの寝床のように間口が狭く、奥行きが長いというような形状の土地が多くあります。

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狭小住宅の暮らしやすさを作る空間を作る工夫

狭小敷地は30坪程度の家が建てられる整形の土地に比べると、比較的低価格で土地が購入できます。しかしその分、広い成型の土地に比べると、日当たりや風通しの悪さなどの暮らしにくさに繋がる条件がついてしまいます。そのような悪条件の多い狭小敷地に建てる狭小住宅に、暮らしやすい家を建てることはできるのでしょうか?狭小住宅につく悪条件と解決のための工夫について考えてみましょう。

家の面積が狭い
土地が狭いということは、当然、その土地に建てる家の床面積も狭くなってしまいます。東京都に暮らす世帯では4人家族数が最も多く、38,7パーセント、次いで3人家族が36,8パーセントという東京都の調査結果があります。

一方、国土交通省が作成した住生活基本計画では、都市の最低居住面積を3人家族で40㎡、4人家族で50㎡、理想の居住面積を3人家族で75㎡、4人家族で95㎡とされています。しかし、10~15坪の土地に家を建てる場合、建ぺい率によっては10坪以下の建坪になってしまう場合もあります。

その家に、平均的な3~4人の家族が快適に暮らすためには、40㎡から96㎡の延べ床面積を確保しなくてはなりません。その為、狭小地の敷地面積が狭いという悪条件を克服する為には、3階建ての住宅にする必要が出てきます。

日当たりと風通し悪い
住宅やマンションに囲まれている狭い敷地に建つ3階建て住宅は、1階、2階の日当たりと風通しが十分に採れない環境に置かれます。そして、人間が健康的な生活をする為には、太陽の光が家の中に十分に採りこめ、いつでも家の中の換気ができることが必要不可欠な条件です。そのため、狭小住宅では、日当たりと風通しを確保する為に、様々な設計上の工夫をします。

  • 吹き抜け 階下の部屋と階上の部屋を繋ぎ、階上の部屋から採り入れた太陽光が階下の部屋まで届くようにします。
  • トップライト 周辺が建て込んだ地域では、窓から十分な採光ができないことがあります。しかし、トップライトがあれば、周囲の建物に遮られることなく、光を採りこめます。さらに、吹き抜けと組み合わせれば、天井に作った窓からの光が階下まで届き、日当たりの良い環境を作ります。

圧迫感がある
室内の狭さから感じる圧迫を無くすために、開放的な空間や視線の抜けが必要です。

  • スキップフロア 1階と2階の間に中2階を作るスキップフロアは、段差で区切りを作るので、間仕切壁が減らせます。その結果、空間が広がります。また、間仕切壁で遮られない為、日当たりや風通しのよさにも役立ちます。
  • スケルトン階段 踏み板と桁だけで構成されているスケルトン階段は、蹴込板がないので、視線の抜けを作ります。視覚的な圧迫感を無くすだけではなく、日当たりや風通しのよさにも繋がります。

プライバシーが確保しにくい
狭小敷地では道路や隣家との距離が短い為、周囲からの視線が遮りにくいことがあります。また、周辺の住宅の生活音や道路からの騒音が気になる、自宅からの生活音に気を使うというような音の問題も発生します。その為、狭小住宅では、窓の位置や形状、サイズ、機能に工夫が必要です。

  • ハイサイドライト 頭より高い位置に設置する横長の窓は、光を採りこみつつ外部からの視線を遮ります。隣家の窓と面しているというような状況に向いています。
  • 縦長窓 縦に細長い窓は、光を採りこみつつ外部からの視線を遮ります。道路に面しているという状況に向いています。
  • 防音窓 防音、遮音機能のある窓であれば、周辺の生活音や騒音の侵入と、自宅の生活音の外部への流出を妨げられます。
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後悔しない狭小住宅にするポイント

狭小住宅を建てた人が感じる後悔には、暮らしにくさと、見栄えという2つが多く見受けられます。

「暮らしやすい家にする為に、吹き抜けやスケルトン階段を取り入れて、日当たりや風通しの良い家にしたはずなのに、冬は寒く、夏は暑い」

このようなことがおこってしまう原因は、吹き抜け、スケルトン階段、スキップフロアなど、空間を区切らない設計に見合った住宅の性能が無い為です。間仕切り壁や床の少ない開放的な空間を持つ家には、十分な断熱性と気密性がなければ、冷暖房の効率よく働かず、快適な室内環境は維持できません。

「完成した家がなんだかチープな感じで恥ずかしい」

狭小住宅は、居住面積を減らさないよう、総2階建てにすることがほとんどです。総2階建ての家は、建材の質、外観デザインによって、シンプルで洗練された雰囲気の家になることもあれば、安っぽい家になってしまうこともあります。そして、狭小住宅の中には、建材の質を落としたり、優れたデザイン性が無かったりするローコスト住宅もあります。そのような家を建ててしまえば、後悔するかもしれません。

建築に費用をかけるか、抑えるかは、家に対する考え方で変わってきます。低コストの家を建て、短いスパンで買い替えれば、常に築浅の家に住めるという考え方もあれば、資産価値の高い家、質の良い家を建て、丁寧に大事に住み続けるという考え方もあります。また、住宅性能の高い家は、建築時には建築費用が嵩みますが、暮らし始めてからのランニングコストが抑えられるという考え方もあります。断熱性や気密性が高ければ、光熱費の節約に繋がり、質の良い建材を使えば、メンテナンスの周期が長くなるからです。

家は長く住まう場所と考えれば、質の良い家を建てることが、快適さと家に対する満足感に繋がるのではないでしょうか?

HOPEsの狭小住宅への思い


ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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