敷地15坪の家 鉄骨螺旋階段

 

 

 

 

狭小住宅とは、狭小敷地に建てるそれぞれの階の面積が10~15坪程度の家のことです。10坪は33.0579㎡、15坪は49.5868㎡の広さです。そして、国土交通省の住宅経済関連データによると、最も居住面積の少ない東京でも、平均的な住宅の面積は64.48平方メートル(19.50坪)です。

一方、国土交通省が作成した住生活基本計画には、2種類の居住面積水準が示されています。ひとつは、「健康で文化的な住生活の基本とし必要不可欠な住宅の面積に関する水準」である最低居住面積です。 具体的には、世帯人数に応じて、単身者:25㎡ 、2人以上の世帯10㎡×世帯人数+10㎡となっています。
もう一つは「世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と考えられる住宅の面積に関する水準」である誘導居住面積です。郊外型と都市型に分かれて2つの水準が示されています。

[都市居住型] 都心とその周辺での共同住宅居住を想定
①単身者:40㎡
②2人以上の世帯:20㎡×世帯人数+15㎡
[一般型]
郊外や都市部以外での戸建住宅居住を想定
①単身者:55㎡
②2人以上の世帯:25㎡×世帯人数+25㎡

この水準から考えると子供が2人いる家族、又は将来的に子供を2人育てる予定の家族が、都内に狭小住宅を建てる場合の理想の居住面積は、95㎡です。4人家族の最低居住面積の水準の50㎡に比べると、居室だけではなく、キッチンや浴室、トイレなども余裕を持った間取りにできます。15坪(49.5868㎡)で、95㎡の居住面積を確保するにはどうしたらよいのでしょうか?

敷地15坪の狭小住宅でできること

戸建て住宅では、2階建て、3階建てにして、空間を縦に広げることができるので、マンションよりも居住面積が確保しやすいという強みがあります。もし敷地15坪以下であっても、3階建てにすれば、十分に理想の居住面積を確保できるからです。3階建てにすれば、敷地15坪でも、ビルトインガレージを取り入れてなお、居住面積を確保できます。

ただし、敷地15坪で無駄なくその面積を活かした家にする為には、優れた設計が求められます。居住面積を確保する方法として、間取り以外で工夫されることは、住宅と屋根の形です。広々とした土地の真ん中にぽつんと立つ住宅であれば、周囲の家の日当たりや風通しを遮ることはありません。しかし、都心の住宅地では、周囲に家が建て込んでいる為、2階建て、3階建ての家は、隣家の日当たりを遮ってしまう恐れがあるからです。

その為、建築基準法には、住宅が道路に面している場合には、隣家に面する建物の高さを制限する隣地斜線制限と、北側にある隣家への日当たりを遮らない為の北側斜線制限、道路への日当たりや風通しを遮らない為と、周辺に圧迫感を与えない為の道路斜線制限が定められています。道路ギリギリに家を建てなければならない場合、隣家との距離が極めて近い場合には、法に高さを制限されてしまうのです。

しかし、狭小住宅では居住面積を確保する為に、縦に長い家にする必要があります。屋根や家のデザインを工夫し、法の制限内で2階建て、3階建ての家を建てなくてはならないのです。その為には、斜線制限が緩和される建物と空の比率を割りだす天空率を利用する、各階の天井の高さを調整するなどの優れた設計力が求められます。

敷地15坪の狭小住宅の間取りの工夫

敷地15坪の家 リビングからの吹抜け

 

 

 

 

 

 

住宅の外観に加えて、間取りにも居住面積を確保する為の工夫がされます。

陽当りと風通しを良くすること
住宅やマンションに取り囲まれてしまう狭小住宅では、日当たりが悪く、風の通らない室内環境になってしまうので、吹き抜けやスケルトン階段などを取り入れて、日当たりと風通しの良い室内環境を作ります。

その他にも、天窓をつけ、天窓からの陽射しが階下の部屋にも届くよう、床の一部に床用強化ガラスやガラスブロックを取り入れる、ベランダで陽射しを遮らないよう、グレーチングの床にするなどの工夫がされます。

空間を広く使うこと 
スキップフロアを取り入れて、できるだけ間仕切りを減らす工夫をします。段差で区切りをつけることで、空間が横に拡がり、狭さによる圧迫感がなくなります。陽当りや風通しも良くなります。また、勾配天井と、高い位置の窓を取り入れることも、開放感のある空間造りや日当たりと風通しの良さに役立ちます。勾配天井を活かしてロフトを設置することもできます。

駐車スペースを家の中に作ること
狭小敷地で、駐車スペースが取れない場合には、ビルトインガレージが取り入れられます。敷地15坪の3階建てであれば、1階部分がビルトインガレージになってしまっても、2階と3階で、4人家族の居住面積は十分に確保できます。

無駄な収納スペースを作らないこと
家の中をすっきりさせる為に収納スペースは不可欠ですが、狭小住宅では居室の面積を狭くしてしまう恐れもあります。その為、壁面や、スキップフロアの下の部分などの家の中に何か所かできてしまうデッドスペースを利用した収納、数多い収納スペースの代わりに作る大型のファミリークローゼットなど、効率の良い収納スペースを工夫します。

造作家具を利用すること
造作家具は、置き家具と違って室内に家具の置き方によるデッドスペースが生まれません。キッチンカウンターから繋がったダイニングテーブル、収納スペースがついているリビングのソファ、子供部屋を仕切れる二段ベッドなど、家族のライフスタイルに合わせた造作家具を取り入れることも、有効に空間を使う為の工夫の一つです。

敷地15坪の狭小住宅で注意しなくてはならないこと

狭小住宅には、周辺の環境との兼ね合いに対して注意しなくてはならないことと、家の性能に関して注意しなくてはならないことがあります。

断熱性
十分な居住空間を確保し、快適な室内環境を調える為に取り入れられる吹き抜けやスキップフロアは、家の中の空間が間仕切りの多い家より広がります。それに加えて、暖かい空気は上に逃げるという性質がある為、冬場は暖房の効率が悪く寒い家になってしまう恐れがあります。

また、吹き抜けと天窓の組み合わせは、日当たりは良くなりますが、夏は太陽の直射熱によって冷房をしても室内が涼しくならない部屋になってしまう可能性があります。吹き抜けやスキップフロアを取り入れても、夏涼しく、冬暖かい室内環境を調える為には、高い断熱性が求められます。

言い換えれば、吹抜け部天井にシーリングファン等を設置すれば、全館空調に近い機能を得られることになります。

耐震性
吹き抜けやスキップフロア、ビルトインガレージは、壁や床の面積が通常の間取りより少なくなるので、地震に弱い家になる恐れがあります。そのリスクを補う為に、狭小住宅には高い耐震性が求められます。

防音対策
隣家や道路との距離によっては、隣家の生活音や道路の騒音に煩わされることがあります。反対に自分達家族の出す生活音に対して気を使ってしまうこともあります。その為、狭小住宅では、防音機能の高い窓にする、防音効果のある外壁塗料を使うなど防音対策が必要です。

プライバシー対策
日当たりと風通しの為に大きな窓を作っても、その窓が隣家や道路に面していれば、開けにくい窓になってしまいます。外部からの視線を気にせずに生活できる間取り、窓の位置と大きさがプライバシーを守ります。

敷地が15坪ある場合、狭小住宅の中ではゆとりのある広さです。しかし、間取りや家の性能によっては暮らしにくい家になってしまいます。狭さを解決する工夫を取り入れ、快適な暮らしが出来る間取りと安心して暮らせる性能を備えた狭小住宅をご実現ください。

HOPEsの狭小住宅への思い

敷地15坪のリビング吹抜け

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

Works(株)ホープスの建築実例

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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