「敷地が狭く庭がないので、バルコニーに座って空を眺めたい」
「共働きなので夕方になっても洗濯物が取り込めない」
「雨が降っても洗濯物を干したい」
「隣家の窓の面しているので下着などは干しにくい」
住宅が建て込んでいる地域では、ベランダやバルコニーを設置しても、使い勝手が悪くなってしまうことが少なくありません。防犯上も外部から洗濯物が良く見えるので、暗くなっても干してあれば、留守だということが分かってしまい、侵入窃盗犯のリスクが高まります。
たまには空を眺めたくても、隣家の窓に面していれば、ゆっくり座っていることもできないでしょう。
そのような悩みを解決するのがインナーバルコニーです。
暮らしに景色を取り入れるインナーバルコニー
インナーバルコニーは、家の内部にあるバルコニーです。ベランダのように庇がついているだけではありません。ガラスのない大開口の窓がある部屋のようなものです。
ガラスのない窓のような開口部にするタイプの他、前面をルーバー状のフェンスにするタイプや、半透明のガラスにするタイプ、天窓をつけるタイプなど、様々なデザインが可能です。
また、ベランダやバルコニーには、通常の木造住宅の場合、奥行きが90センチまでという構造上の基準があり、実際には奥行きが70センチというバルコニーがほとんどです。70センチというと、人が一人通れるだけの幅なので、非常に狭く洗濯物を干す、エアコンの室外機を置く以外には使えません。しかし、インナーバルコニーの場合には、家屋から跳ねだしているわけでないので、奥行きの制限がありません。その為、4畳程度までの広いベランダにできます。
そして、隣家との位置関係や家の向きと日当たりを考慮して、適切なタイプを選べば、ベランダやバルコニーよりプライバシーを確保しやすく、使いやすさが向上します。
特に日当たりを確保する為、リビングを2階にする間取りが多い狭小住宅では、リビングに繋がるインナーバルコニーが、開放的な空間を作り、リビングに景色を取り入れます。
インナーバルコニーの魅力
屋外にある部屋のような不思議な空間のインナーバルコニーには、好みに合った楽しみ方ができる魅力があります。
くつろげる場所
週末のくつろぎの場として、リビングと繋がるインナーバルコニーにソファやベンチを置くと、ゆったりとしたくつろぎの場所が誕生します。気候の良い季節でも、隣家が近いと窓を開け放したりできませんが、インナーバルコニーがあると、リビングのプライバシーが保ちやすくなります。地域によっては夏の花火も楽しめます。
隣家との距離が近く、きれいな景色が望めない場合には、インナーバルコニーに観葉植物の鉢を並べると、リビングからの景色が良くなります。
家具や観葉植物、ちょっとした小物を置いて、自分の好みに合う空間でゆったりとくつろぐ時間が持てます。
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【この写真はルーフバルコニーです。ルーフバルコニーとオーニングを組み合わせると、インナーバルコニーのような使い方ができます。】
家庭菜園
インナーベランダには、ちょっとした家庭菜園を作る楽しみもあります。狭小敷地で庭がない、狭い庭はあるが、日当たりが悪いし、人や車の往来が激しいので野菜がほこりだらけになりそう…というような場合でも、インナーバルコニーなら、安心して家庭菜園を楽しめます。
ペットが遊べる場所
ペットの遊び場としてもインナーバルコニーは最適です。犬も猫も外を眺めるのが大好きです。猫の場合、普通のベランダやバルコニーでは転落や脱走の恐れがありますが、インナーバルコニーなら開口部の高さが十分にあれば、脱走の心配がありません。他人の気配を感じると吠える犬も、2階や3階にあるインナーバルコニーなら、配達の人に反応して吠えてしまう心配もありません。
水が流せるので、ペット用のシンクを設置しておけば、小さな犬であれば、シャワーもできます。
インナーバルコニーの便利さ
インナーバルコニーには、屋根がついているので室内のようでありながら、水栓をつけると、水が流せるので、いろいろ便利な使い方ができます。
いつでも洗濯物が干せる場所
ベランダもバルコニーも家の外に張り出しているので、木造住宅では制限があり、ベランダでは70センチから90センチの奥行というサイズがほとんどです。ただ、ベランダには屋根がついているので、小雨なら洗濯物を干せますが、吹き降りや土砂降りの時には、洗濯物が濡れてしまいます。
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【この住宅はインナーバルコニーではありませんが、SE構法であれば、このように広いバルコニーも可能です。】
バルコニーの場合は、木造住宅の工法にもよりますが、一般的には90センチを超えた場合、地面とバルコニーの間に柱を作らなくてはらなくなります。耐震性の高い工法で建築した場合には、一間程度まで奥行きを取ることができ、広いバルコニーを実現できます。しかし、バルコニーには屋根がついていないので、小雨でも洗濯物は干せません。その為、何と言ってもインナーバルコニーの便利さは洗濯物に関わることです。雨の日でも洗濯物が干せるので、子供のいる家族にはととても便利です。
また、共働きをしている家族は、夕方になっても洗濯物を取り込めない日が多くなりがちです。空き巣は、たいていの場合、下見をして洗濯物が暗くなっても取り込んでいない家やポストに郵便物が溜まっている家に目星を付けると言われています。インナーバルコニーなら、外から下見をしても洗濯物が見えにくいので、住宅の防犯性が上がります。
1階に浴室を作り、脱衣室に洗濯機を置く予定であれば、洗濯物を干す時の家事負担が大きくなってしまいます。通常のバルコニーには屋根がないので洗濯機はおけません。ベランダに屋根がありますが、洗濯機を置くと風雨にさらされるので、早く傷んでしまいます。しかし、インナーバルコニーなら洗濯機を設置できるので、家事労働が軽減できます。
さらにリビングに繋がっているインナーバルコニーなら取り込んだ洗濯物にアイロンをかけたり、子供たちに畳むのを手伝ってもらったりしやすいので、片付けも楽です。
洗濯機では洗えないものを洗える
インナーバルコニーに水栓とシンクを設置しておくと、子供の運動靴、玄関マットなど洗濯機では洗えないものが洗えます。また、泥付き野菜など、キッチンでは洗いたくないものも洗えるので便利です。
インナーバルコニーで動線を確保
インナーバルコニーを通って回遊できるような設計にすれば、他の部屋と行き来しやすい動線が確保できます。インナーバルコニーを挟んだ2つの子供部屋という間取りにすると、お互いの窓から子供通しがコミュニケーションできて楽しそうです。
キッチンと洗濯機が繋がる位置にインナーバルコニーがあれば、家事負担を軽減できます。
インナーバルコニーで注意しなくてはならないこと
インナーバルコニーは、間取りや向き、周辺の環境との兼ね合いによっては、使いにくいスペースになってしまう恐れがあります。
日当たりが悪くなる恐れがある
インナーバルコニーは設計によっては、居室の陽当たりを悪くしてしまうことがあります。特に狭小住宅では、縦に長い家であることが多いので、1階まで陽射しを届かせることに留意しなくてはなりません。
インナーバルコニー自体の日当たりが悪いと、洗濯物が乾きにくい、家庭菜園をしても野菜が育ちにくいというようなことになってしまいます。
また、インナーバルコニーを作ったことによって、インナーバルコニーに続く部屋まで陽射しが届かないとなると、開放的どころか、暗いリビングになってしまいます。
その為、家の向き、インナーバルコニーの位置と広さを考慮した間取りにする必要があります。吹き抜けの中庭と組み合わせる、インナーバルコニーの床面に下の階まで陽射しが届くように強化ガラスを取り入れる、インナーバルコニーの屋根にトップライトをつける、インナーバルコニーと繋がる部屋の開口部を大きくとるなど、設計上の工夫が必要です。
設計によっては、インナーバルコニーを作ったことで、かえって日当たりの良い家になったというケースもあれば、暗いインナーバルコニーになってしまい、作ったことを後悔しているというケースもあります。
人気のない場所になる恐れがある
インナーバルコニーへの動線、近隣からのプライバシー、日当たりが確保されていないと、使わない場所になってしまう恐れがあります。インナーバルコニーに行きにくい、隣家からの視線が気になって落ち着かない、日当たりが悪く寒々しい雰囲気なので、ゆったりする気になれないというような場所になってしまえば、家族は使わなくなってしまいます。
インナーバルコニーを設置する際には、家族のだれもが行き来しやすい間取り、隣家からの視線が気にならない造り、日当たりを遮らない位置と向きを考慮することが大切です。
構造的な制約でデザイン性を高くできない場合がある
インナーバルコニーは、前面が外に向けて開いているので、壁の面積が少なくなります。その為、耐震性を維持する為には、柱や壁の配分が重要です。制限がある中で、デザイン性の高いインナーバルコニーにする為には、内装仕上げ材の選び方や、インナーバルコニー自体の形状を吟味する必要があります。どのような雰囲気のインナーバルコニーにしたいかということを設計士にしっかり伝えることが大切です。
建築費が嵩む
インナーバルコニーを作ると、インナーバルコニーの下の部屋とインナーバルコニーの間にも断熱材を入れる、インナーバルコニーの床に防水処理をするなどの必要がある為、建築費が嵩みます。具体的には普通のバルコニーの倍の費用がかかります。
暮らしに彩を添えるインナーバルコニー
インナーバルコニーは、建築時には費用が嵩みます。また、間取りによっては、暗いバルコニーや暗い部屋ができてしまい、使いにくい空間になってしまいます。
しかし、設計次第で、明るく使いやすい空間になり、家事負担を軽減できます。そして何より。周囲を家に囲まれている環境でも、外の空気に触れながらリラックスできる空間が手に入り、暮らしに彩を添えてくれる存在になります。
HOPEsの狭小住宅への思い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる施工例がたくさんございます。ぜひご覧ください。