自宅を新築する予定の土地が狭小敷地である場合には、狭小住宅を建てることになります。狭小住宅では、狭い中で十分な居住空間を確保し、暮らしやすい室内環境を整える為に、設計上の様々な工夫が採用されます。

狭小住宅の問題点を克服し、暮らしやすい住まいを実現する為に必要なことを確認していきましょう。

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狭小住宅に必要な性能

狭小住宅は、必要な居住空間を確保する為、どうしても2階建て、3階建てと縦に長い家になるケースがほとんどです。

さらに都心部の狭小住宅は、周囲を他の住宅やマンションに囲まれているので、プライバシーを確保しながらも、生活に必要な日当たりや風通しを良くする為に、吹き抜けや吹き抜けと組み合わされた階段が採用されます。

その結果、木造建築の家の場合、通常の耐震性能では地震に弱い住宅になってしまいますので、耐震性の高い家にする必要があります。

耐震性の高い家

耐震性について理解する為に、まず耐震等級について確認しておきましょう。耐震性能は、耐震等級で知ることができます。耐震等級とは、住宅品質確保促進法(品確法)に定められている地震に関する住宅性能表示です。

耐震等級1(建築基準法に定められている耐震性能と同じ程度の耐震性能)

  • 損傷防止 震度5程度の地震がおこっても大規模な修復工事が必要になるほどの損傷がおこらない

→ 震度5程度とは?数十年に1度はおこる震度の地震であるため、ほとんどの住宅が1度は経験するリスクの高い震度です。

  • 倒壊等防止 震度6強から7程度の地震がおこっても人命にかかわるような倒壊や崩壊がおこらない

→ 震度6強とは?数百年に一回はおこるリスクの高い震度の地震です。ここ数年だけでも、2018年には、北海道胆振地方中東部で震度7、大阪府大阪市で震度6弱、2016年には熊本県熊本地方で震度7、2011年には東北地方太平洋地震震度7の大地震が起きています。

耐震等級2 等級1の1.25倍の強度があり、震度6弱までならダメージを受けない

耐震等級3  等級1の1. 5倍の強度があり、震度6強までならダメージを受けない

住宅は建築方法によって耐震性が異なります。最も高い耐震性があるのは、鉄筋コンクリート造の建物です。ビルやマンション、学校などは、鉄筋コンクリート造です。建物の重量がある為、地盤改良が必要です。地盤改良にかかる費用に加えて、建築コストも高い為、一般的な戸建て住宅にはあまり採用されません。

建物の骨組みに鉄骨を使う鉄骨造住宅は2番目に耐震性が高い住宅です。鉄筋コンクリート造と同じく、建物の重量がある為、地盤改良が必要です。大手ハウスメーカーの鉄骨造住宅であれば、建材のコストが抑えられるので、個人の会社の鉄骨造住宅より建築コストは多少抑えられます。しかし、ハウスメーカーは規格による制限が多い為、狭小敷地には建てられないことが多いです。

3番目が在来木軸構法です。3番目とは言っても、耐震性能が低いわけではありませんが、木材を使った構法には、鉄筋コンクリート造に勝るとも劣らない構法があります。

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耐震性能が高いSE構法

SE構法は、阪神淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊した現実から大地震でも絶対に壊れない木造住宅を実現させる為に開発されました。その耐震性能の高さは、中越地震、東日本大震災、熊本地震など阪神淡路大震災以降の大地震の際に、SE構法の家すべてが倒壊しなかったことからも証明されます。

もともとは、競技場や商業施設など大型木造建築物の為の技術と、科学的な数値に裏付けされる構造計算を住宅に応用することで、従来の木造建築にはない高い耐震性を得たのです。

この構法を採用することで、縦に長い空間を持つ狭小住宅を、確実に耐震性の高い家にすることができます。

断熱性の高い住宅

狭小住宅では、吹き抜けの他に、スキップフロアもよく採用されます。スキップフロアは壁を減らし、1階と2階、2階と3階の間にも、短い階段とフロアを作る方法です。

吹き抜けもスキップフロアも家の中の区切りが少なくなるので、冷暖房の効率が悪くなります。熱は高い方へ移動する性質を持っています。その為、縦に空間が広がっている家では、夏は外気の暑さ、冬は暖房の暖かさが3階部分に集中してしまいます。

さらに、採光のために天窓をつけていれば、夏の暑さはよりひどくなってしまいます。また、気密性の低い家では、床下や窓から冷気が侵入してきます。暖房の熱はどんどん上に逃げてしまうので、1階はとても寒くなってしまいます。そのような状況を避ける為、狭小住宅には高い断熱性と気密性が求められます。

断熱性の高い家は、室内の温度を快適に保つ以外にも、結露を防ぐ、冷暖房にかかる費用を抑えるなどの良い点がたくさんあります。

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狭小住宅に必要な生活を快適にする為の設計

狭小住宅では、快適な居住空間を作り上げるために、様々な設計上のアイディアが必要です。敷地の形状と敷地の周囲の環境、家を建てる家族の構成やライフスタイル、耐震性能や断熱性能などを踏まえた上で、狭小住宅が抱える問題を設計力で克服しなくてはならないからです。

陽射しを採りこむ

 

 

 

 

 

 

人間の生活にとって、日当たりの良さは欠かせないものです。日当たりが悪く、昼間で薄暗い家に長く住むことはできません。もし長年そのような家に住んでいれば、肉体的にも精神的にもダメージを受けてしまいます。また、住宅自体も湿気で早く劣化してしまいます。その為、周囲を建物に囲まれている狭小住宅では、陽射しを確保することが絶対条件の一つです。

  • トップライト 天井につける窓
  • ハイサイドライト 頭上より高い位置につける窓
  • 床用ガラス 床の一部を強化ガラスにする

このような窓を採用することで、通常の窓からは入れることのできない陽射しが取り入れられます。そしてこれらの窓を吹き抜けと組み合わせると、さらにたくさんの日差しが取り込めます。このような窓には、隣家との距離が近い環境にあっても、プライバシーを確保しやすいという面もあります。

  • 吹き抜けや吹き抜けと組み合わせる階段

トップライト、ハイサイドライト、床用ガラスを吹き抜けやスケルトン階段と組み合わせると、さらに採光量を増やせます。

床面積を増やす

  • スキップフロア 壁を減らし、1階と2階、2階と3階の間にも、短い階段とフロアを作る

 

 

 

 

 

 

スキップフロアは、壁を少なくできるので、開放的な空間になり、視覚的に広々とした印象を作ります。家の中の床面積を増やすことができ、階段の下は収納スペースとして有効活用できるので、狭小住宅の狭さの克服に役立ちます。

  • ロフト 天井を取り払って小部屋として使う屋根裏部分

 

 

 

 

 

 

ロフトは、子供部屋や収納スペースとして使えるので、限られた空間を有効に活用できます。

収納スペースを確保する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭小住宅では必要以上に収納スペースを取ろうとすると、居室が狭くなってしまいます。しかし、部屋をすっきりさせる為には収納スペースはなくてはならないものなので、デッドスペースや壁面を有効活用します。

スキップフロアや階段下のスペース、壁面を利用して、しまう収納、見せる収納を使い分けられます。また、ソファやテーブルなどを収納機能のある造作家具にするという方法もあります。

お隣さん対策をする

隣家との距離が近い場合、隣家との間でトラブルがおこらないよう、家の向きや窓の位置などを考慮する必要があります。さらに、音と臭いにも注意が必要です。

犬と一緒に暮らす予定がある、乳児がいるというような家族や、周囲に騒音が多いというような環境であれば、防音対策が必要です。音のほとんどは窓から出入りします。なぜなら窓ガラスは壁に比べて非常に薄いからです。また、サッシの隙間からも音は出入りします。その為、防音性能のある窓ガラスにする、又は二重窓にすると、かなり防音性能の高い家にできます。

また、エアコンの室外機の位置が隣家のリビングに面していたりすれば、騒音になってしまう恐れがあるので、隣家との位置関係にも配慮が必要です。さらに、換気扇の排出口の位置にも注意が必要です。自宅のキッチンが2階にあり、隣家の寝室に面しているというような位置関係にならないようにしなくてはなりません。

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自宅にマイカーを駐車する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭小敷地では、マイカーを所有していても駐車スペースを確保できないという問題があります。しかし、耐震性の高さを確保できる家であれば、ビルトインガレージのある家にできます。

都心部では駐車場の料金が非常に高額で、中央区や港区では月に5万円以上かかります。また、雨の日には、駐車場から家までの間に濡れてしまいますし、大きな荷物があれば移動も大変です。

木造の家にはビルトインガレージは無理だと思われるかもしれませんが、SE構法の家であれば、安全なビルトインガレージが作れます。なぜなら、SE構法は柱と梁が強固に接合されているラーメン接合のような構造だからです。車を大事にしている人にとっては、庭に駐車するよりも雨風や紫外線から車を護れるという面もあります。

緑を取り入れる

狭小敷地では、ガーデニングを楽しめるような庭が作れないことがほとんどです。しかし、設計次第で、中庭を作る、吹き抜け部分と組み合わせて、家のどの部屋からも見える木を植えるなど、緑のある家にできます。

陽射しと同じように、緑のある生活と緑のない生活では、気持ちの安定感が変わってきます。周囲を住宅に取り囲まれている狭小住宅だからこそ、緑のある家を実現したいものです。

防犯性を高める

狭小住宅の中でも、旗竿地にある家は侵入窃盗の被害にあうリスクが高いので、防犯性能を高めておくことが大切です。旗竿地の住宅は、道路からの見通しが悪いので侵入窃盗犯にとっては、仕事がしやすい立地条件なのです。

侵入窃盗犯の多くは窓から侵入しますので、防犯性の高い窓やドアを設置することで、防犯性があげられます。防犯性能の高い建物部品として官民合同会議が作成した防犯性能の高い建物部品目録に掲載、公表された建物部品であるCP部品を使うと安心です。

また、シャッターのないビルトインガレージのある家もビルトインガレージが潜む場所となるので危険です。ビルトインガレージにはシャッターをつけておくと防犯性が上がります。

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暮らしやすさの基本は家族

暮らしやすい狭小住宅にする為には、家の性能と設計力が必要ですが、最も大切なことは、家族構成と家族の嗜好やライフスタイルに合う家にすることです。

狭小住宅には様々な問題点がありますが、高性能で、家族に合わせた設計の家が建てられれば、快適な暮らしを手に入れられます。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる施工例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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