都市部の住宅地では、住宅やマンションが建て込んでいる為、方形の土地でも日当たりや風通し、プライバシーの確保が難しいという問題を持っています。その難しい問題をさらに増やしてしまう恐れがある土地が旗竿地です。

「問題は多いかもしれないが、非常に利便性の良い位置にある」

「予算内で収まるので魅力的」

「もともと親が持っていた土地を譲り受けた」

旗竿地という地形を気に入って選ぶというより、その他の理由で旗竿地を選ぶ人が多いと思われます。そんな旗竿地で、狭小でも快適な暮らしができる家を実現するのでしょうか?

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旗竿地とはどんな土地?

旗竿地とは、敷延と呼ばれることもある旗を掲げた竿のような形状の土地です。道路に面している間口が狭く、竿の様な通路の先に旗の様な方形の土地があります。
建築基準法に道路に対して、2m以上接していない敷地には、原則として建物を建てることができないと定められている為、土地を区画割りする時にできてしまう土地です。方形の土地であれば、敷地のうちの1面、又は2面が全て道路に面していますが、旗竿地では竿の根元にあたる部分しか道路に面していないのです。

都心部の古くからの住宅地では自然発生的、成り行きでできてしまった旗竿地もありますが、敢えて作られる旗竿地もあります。整形の敷地を宅地にする際、土地の価格を抑える為に分割するからです。分割の仕方にもよりますが、全面が道路に面している方形の土地の両脇に囲み型の土地ができ、その土地を分割すると旗竿地が作られるケース、道路に面している面が1面しかないと土地を2分割する為に片方が旗竿地になるケースなどがあります。

したがって、一口に旗竿地といっても、旗の部分の面積、竿の部分の間口と奥行き、周辺の家との位置関係などの違いによって、さまざまな旗竿地があります。

旗竿地の問題点

旗竿地には道路に面している部分が少ないことと、特殊な形状であることから、いくつか知っておかなくてはならない問題点があります。暮らしやすい家にする為には、まず問題点の解決方法を工夫することが必要です。

室内環境

住居の問題としては、日当たりや風通しが確保しにくいという問題があります。この問題は旗竿地に限らず、都市部の住宅全てが抱える問題でもありますが、健康的な暮らしには欠かせない条件です。

【 陽当りと風通しの良さを確保する為の方法 】

 

 

 

 

窓、床、空間への工夫で陽当りが確保できます。
窓は、大きさ、開閉のタイプ、窓の位置によって日当たりの良さ、風通しの良さが変わります。
そして、窓の位置を決める際、都市部の住宅では、隣家との関係も考慮しなくてはなりません。東南の窓は日当たりが良いなど、向きだけで決めた場合、隣家の窓と向き合ってしまうこともあるからです。そのような状況になれば、プライバシー確保の為ブラインドを閉じたままになってしまう恐れがあります。その為、窓の位置は、プライバシーが確保でき、しかも陽射しを採りこめるよう、天井や、壁面の高い位置につけると効果的です。

また、天井につけた窓の下の床に床用の強化ガラスや床用のグレーチングを使うと、天井からの明かりが下の階にも届き、明るい室内にできます。
さらに窓から日差しを活かす方法として、吹き抜けやスケルトン階段を取り入れて、縦の空間を利用する方法があります。縦に繋げることによって、高い位置につけた窓からの光を住居全体に届けることができるのです。

【 駐車スペースを確保する為の方法 】

旗竿地では竿の部分である路地に駐車することになるのですが、敷地が面している道路の幅と間口の幅によっては使い勝手の悪い駐車スペースになってしまいます。
車の幅ギリギリの場合、駐車の為にサイドミラーを折りたたむ、車から降りる時、ドアが半分しか開かない、自動車と道路の間に自転車を置くと車が出せない、自転車を奥側に駐輪すると、自転車が出せないなどの問題がおこります。

また、幅いっぱいに駐車している状況であれば、人も通り抜けにくく、幅によっては横向きに歩かなくては通り抜けられないケースもあります。

解決方法の一つとして、ビルトインガレージのある家にするという選択肢があります。敷地が面している道路の幅、竿の部分の間口と奥行きによって条件が異なりますので、すべての旗竿地に応用できる解決策ではありませんが、一考の余地があります。
もしこの方法が実現できれば、自転車を置きにくい、人が通りにくいなど、路地部分に駐車することで発生る問題を回避できます。

自動車を持っている人でも、都内では駐車スペースを見つけるのも大変なので、都内は電車やバスで移動、車に乗るのは遠出をする週末だけというタイプの人と、徒歩5分の場所であってもいつも自動車で移動するタイプの人がいます。もし間口が狭く、ビルトインガレージも作れない敷地条件であれば、週末だけのタイプの人は、駐車場を別に借りるという方法も選択肢の一つです。そうなれば、路地部分を魅力的な外構にして、家の外観のイメージを良くすることもできます。

【 隣家の視線が気になる環境を解決する方法 】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地の両側、又は片側と隣家の窓が面している場合、家への出入りのたびに、隣家からの視線にさらされてしまうことになります。反対に考えると、隣家と面している方向にもよりますが、隣家のプライバシーを侵害するということにもなります。

例えば、隣家のリビングの掃き出し窓が自宅の路地部分に当たっていれば、隣家の人も窓を開けにくくなってしまう可能性があります。このような場合には、住宅の中に路地部分を取り入れるような設計にする方法、又は、外構を工夫して目隠し効果のあるフェンスを設置する、樹木を植えるなどの方法でプライバシーを確保できます。

住宅の中に路地を取り入れる設計をすると、駐車スペースはあきらめなくてはなりませんが、プライバシーを確保しつつ広々とした明るい内玄関が実現できます。そして何より防犯性が非常に高まります。

外構で取り組む場合は、旗竿地の路地部分のフェンス、門柱、植栽、床材、照明などの組み合わせを工夫し、個性的でセンスのあるアプローチが作れるので、通りから見た家の外観が洗練された雰囲気になります。

【 防犯性を高める方法 】

もし路地部分の両側が隣家の壁であった場合、視線の心配はなくなりますが、防犯性は低下します。防犯性を高める為には、住居のドアや窓ガラスを防犯性の高いタイプにするとともに、外構の工夫も必要です。

門柱と門扉の位置は路地の長さを考慮して、敷地の入り口、敷地の中間、旗と竿の部分の境目などに設置、門扉を2か所作ると、さらに防犯性が高まります。

【 建築コスト、インフラ整備が割高になる 】

旗竿地では、建築に必要な資材を搬入する為の重機が敷地内に入れないことが多く、その結果、職人さんが手作業で運び入れることになり、通常より建築費が嵩み、施工日数が長くなってしまうことがあります。

この部分に関しては解決方法がありません。デメリットとして覚悟しておく必要があります。

また、水道や電気などの設営費用も割高になることがあります。道路から水道管を配管する距離が長くなればなるほど配管費用はかさみます。また電線は、電柱から敷地内に電線をひくと、隣家の敷地を横切ることになる場合には、自宅の敷地内に新たな電柱を立てなくてはならなくなり、費用が嵩みます。

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旗竿地の魅力

奥まった場所にあるので、日常生活においては、道路の騒音に煩わされないことと、通行人にゴミを落とされたり、散歩中の犬の排せつ物を落とされたりする可能性が極めて低いことなどがあります。
でも、旗竿地の一番の魅力は、設計次第で整形地の家より個性的で洗練された雰囲気の住宅が実現できることと、路地部分の外構を楽しめることです。
旗竿地の場合、家そのものは通りから見えないので、路地部分と玄関で家の外観の印象が作られます。個性的な設計、素敵な路地と玄関で暮らしやすく、センスの良い旗竿地の狭小住宅を楽しみましょう。

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、暮らしやすい家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小旗竿地の施工例以外にも狭小住宅としての参考になる施工例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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