スペースが限られている狭小住宅の間取りを考える時、生活に必ず必要なキッチンや浴室、リビングを優先していくと、入りきらなくなる可能性がある部屋が出てくるものです。
家族構成や生活に対する考え方にもよりますが、多くの方が作るか作らないかで迷うのは、書斎と子供部屋です。

どんな家族にしたいかということが間取りの基本

家は自分たち夫婦にとって、一生住む場所です。賃貸住宅であれば、ライフスタイルの変化に合わせて住み替えができるかもしれませんが、持ち家であれば、生涯を過ごす家となるでしょう。

その長い年月の間には、ライフスタイルの変化がおこります。特に子供のいる家庭では、出産から独立までの期間、子供の成長とともに、いろいろなことがおこります。
新築した家に住み始めてからのライフスタイルの変化を踏まえて考えると、自分たち夫婦にとっての理想の家族とは、どのような家族でしょう?親と子がどのような付き合い方をする家族なのかを明確にすると、子供部屋の在り方も見えてくるのではないでしょうか?

子供のプライバシーをどのように尊重するのか、親として子供とどのような関係を作りたいのかということを考えてみることが大切です。具体的には、子供が中学生や高校生になっても、日常生活の中で常に両親との会話があり、いつ出かけていつ帰ってきたのかを把握できる家族でいたいという思いがあれば、それを反映できる間取りを考えるということです。

家族の気配が感じられる暖かい家、働き手である両親がゆったりくつろげる家、子供が独立後に喪失感を生み出さない家は、夫婦の快適な暮らしを維持し、子供の心を健全に成長させます。

Works(株)ホープスの建築実例

子供はリビングが好き

 

 

 

 

 

 

就学前の子供は、母親の目が届く場所でいつも過ごすので、調理中にも目が行き届くリビングで過ごすことが多いでしょう。ところが、小学校や中学校になっても、リビングで過ごすことの多い子供も実にたくさんいます。

東京ガス都市生活研究所レポート「家で子どもが過ごす部屋~子どもの過ごし方と親子それぞれの意識」によると、夕食後の時間に子どもがいる部屋のほとんどはリビングです。小学校低学年と高学年の男子では90パーセント以上、中学生は70パーセント以上、高校生になっても男子は50パーセント以上、女子は69パーセントもリビングで過ごしているようです。

そして、自分の部屋とリビングではどちらの居心地が良いかというアンケートでも、自分の部屋と答えた子供は少なく、小学生の80パーセント以上、中学生では50パーセント以上、高校生でも半数近くの子供がリビングと答えています。しかも、子供部屋のある子供であっても、寝ている時以外に子供部屋にいる時間は短く、小学生では半数以上が30分未満、又は1時間未満がほとんどです。中学生になっても、半数以上が1~2時間未満、高校生で約半数です。

また、寝る部屋に関しては、自分の部屋で寝ている子供は、小学生では半数以下、それ以外は両親と一緒の部屋で寝ています。
そのようなことを考え合わせると、子供が小学生までは無理に子供部屋を確保しなくても良いように思われます。

Works(株)ホープスの建築実例

子供部屋に変わる子供専用スペース

小学生までは無理に子供部屋を確保しなくても良いとは言っても、小学生になったら、子供が勉強できる場所と子供が自分でしまえる子供用スペースは必要です。

リビングの一角に子供の専有スペースを作る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供が小学生になったらつかえるように、リビングの一角に子供の専有スペースを作っておくと、子供部屋の代わりにできます。子供部屋のない家に暮らす母親には、リビングと玄関が片付かないという悩みがあります。でもリビングに専用スペースがあれば、目が届く範囲内なので、整理整頓させられます。
勉強できるスペースと、学用品やランドセルをしまえる収納スペースがあれば、リビングで宿題をすませることができ、リビングが子供の荷物で散らかることを防げます。

スキップフロアで子供の専有スペースを確保する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供は隠れ家的な場所が好き…ロフトを利用する

 

 

 

 

 

 

ロフトを子供の専有スペースにすると、子供の好奇心が満たされ、親からは目が届きやすいので安心です。

Works(株)ホープスの建築実例

ひとりっこの子供部屋の条件

子供の側から考えると、中学生になったら自分の部屋が欲しいと思う子供がほとんどです。一人になれる時間が作れるからです。また、子供なりに好みのインテリアにしたいという気持ちも沸いてくるでしょう。お友達を招きたいと思うかもしれません。反対に親から考えると、子どもが何をしているのか分からない、部屋の掃除ができていないという心配もあります。それでも、中学生になったら子供部屋を作ってあげようという場合のポイントを考えてみましょう。子供部屋を与えることで、自分の部屋を掃除したり、収納の工夫をしたりするようなるので、子供の独立心が育つというメリットもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供部屋の基本は簡素な部屋です。子供部屋は6畳と思っていらっしゃる方が多いのですが、無理にそれだけのスペースを確保する必要はありません。勉強机とベッドが置けて、子供の荷物が収納できれば十分です。アィデア次第で使いやすい子供部屋が作れます。お友達が来た時には、リビングを解放してあげればよいのです。子供のお友達とも自然に交流できます。反対に、親の目が届かず、豪華な子供部屋は、子供たちのたまり場になったり、引きこもりの原因を作ったりしてしまいます。

もう一つのポイントは、子供が帰宅後、直接子供部屋に行ける間取りにはしないということです。常に子供の気配がかじられる位置に子供部屋がある間取りにしておけば、子供の行動を把握できます。

加えて、変更できる間取りにしておくこともポイントの一つです。
家を建てる時の子供の年齢にもよりますが、もし子供が就学前であれば、実際に子供部屋を活用するのは、数年後の中学入学から独立までです。大学を卒業して、3年後に独立したと考えると、13年です。
子供がまだ小さければ、子供が中学生になるまで、後で子供部屋にする場所をどのように使うか、また、子供が独立後は子供部屋だった部屋をどのように使うかということを考えて間取りを決めると、大掛かりなリフォームを省けます。例えば、子供が独立後はリビングと繋げられるような間取りや、反対に子供夫婦が来た時に泊まれる客間にできるよう和室にしておくなどの工夫です。

Works(株)ホープスの建築実例

複数の子供が使う子供部屋

 

 

 

 

 

 

【このお宅は狭小住宅ではありませんが、狭小住宅に取り入れられそうなアイディアです。】

 

 

 

 

 

 

↑【狭小住宅に作られたこの部屋は子供部屋ではありませんが、造り付けの棚のある部屋は複数の子供が使う子供部屋にも応用できるアイディアです】

複数の子供が使う場合には、6畳程度の広さは必要です。男の子同士、女の子同士ならあえて区切る必要はないかもしれませんが、男の子と女の子であれば、家具やパーテーションを利用して仕切れるようにしておくと良いですね。ロフトベッドなどを活用しても、机とベッドを置くだけの場所が確保できなければ、子供部屋は、寝る為の部屋と割り切って、リビングに勉強コーナーを作るという考え方もあります。

親子で子供部屋と書斎を共有する

 

 

 

 

 

 

 

【こちらのお宅は狭小住宅ではなく、マンションのリノベーションですが、収納を減らして豊かに暮らすという考え方、子供が小さいうちは親子が子供部屋と書斎を共有するというアイディアは狭小住宅にも応用できそうです。】

4つの子供部屋のある狭小住宅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【大家族が住む狭小住宅。4つの子供部屋と2台駐車の家】

こちらのお宅には、ライフスタイルの変化や家族の在り方を考え抜いたアイディアが随所にちりばめられています。

 

 

 

 

「日中は、一部が畳の広々としたLDKが、お子様たちの遊び場に。夜、間仕切りを閉めると、同じスペースがご夫婦の寝室に変化します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「将来お子様が独立したあと、4つあった子供室は、間仕切りを取って2つの個室にリフォームし、ご夫婦それぞれの趣味のお部屋として使うことができます。」

モデルハウスに見る子供部屋のイメージにとらわれず、子供との交流が途切れない間取り、夫婦にとって生涯を通じて暮らしやすさを維持できる間取りが、長年に渡って居心地よく暮らせる家にする大切な要素です。

こちらもどうぞご覧ください。HOPEsが施工した子供部屋です。

狭小住宅の子供部屋 作品集

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

狭小住宅での子育てについてのご心配事があれば、子育てがしやすい住環境を作る間取りをご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

ご紹介した施工例以外にも子供の専有スペース、子供部屋として応用できるアイデイアたくさんございます。ぜひご覧ください。

Works(株)ホープスの建築実例

 

 

 

狭小住宅の創り方コラム 一覧へ

著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

関連記事

狭小住宅はハウスメーカーよりアーキテクトビルダーの方が得意な理由

  狭小住宅はハウスメーカーか?アーキテクトビルダーか? 【約10坪のコンパクトな土地に建つアメリカン好き狭小住宅】     注文住宅を建てる検討を始めると、素敵なデザインの家にしたい、家族 […]

建売住宅とはどんな家?|狭小住宅の創り方コラム|清野廣道の家づくり 深イイ話

東京で家づくりをする家族にとって、土地探しは第一の難関と言っても良いでしょう。価格が高額である上に、自分たちの希望する立地条件に当てはまる空き地が見つかりにくいからです。ある程度予算に余裕があったとしても、土地探しには時 […]

10坪~20坪の敷地に建てる東京の狭小住宅 地形別建築実例|狭小住宅の創り方コラム|清野廣道の家づくり 深イイ話

目次 狭小旗竿地の家 間口が狭く奥行きの長い変形狭小地の家 段差のある狭小地に建つ家 三角形の変形狭小地に建つ家 子育てを機に、賃貸住宅から、戸建て住宅に移り住みたいと計画されるご夫婦は少なくありません。ただ、東京から離 […]

狭小地を活かす東京のデザイン住宅|狭小住宅の創り方コラム|清野廣道の家づくり 深イイ話

目次 優れた設計デザインの要素 優れた設計デザインを支える耐震性 狭小住宅の問題点をカバーするSE構法   東京の宅地の多くは、狭小地です。狭小地には、旗竿地、変形地、段差のある土地など、狭いだけではなく、難し […]

狭小住宅は狭小地に建てるデザイン住宅|狭小住宅の創り方コラム|清野廣道の家づくり 深イイ話

目次 室内の環境を調える為の設計デザイン デザイン住宅における窓の重要性 変形敷地を活かしたデザイン住宅 住宅が密集している狭小地に建てる狭小住宅には、郊外型の住宅に比べて、様々な制限や問題点があります。その制限や問題点 […]

Owner’s Voice施主さま対談
ホープスで実際に家をつくられた施主さまの家づくりの思い出をご紹介します。
施主さま対談をみる
お問い合わせはこちら
Homeへ