パッシブデザインとは?メリットやデメリットを解説します!
家づくりにおいて、パッシブデザインという言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。
しかし、詳しく概要をご存じの方は少ないかもしれません。
そこでこの記事では、パッシブデザインの魅力やメリット・デメリット、パッシブデザインを成功させるコツなどについて解説します。
□パッシブデザインとは
ここでは、簡単にパッシブデザインとはどのようなものなのか説明します。
パッシブデザイン住宅は、一定の基準を満たした省エネ住宅のことです。
太陽光や風力などの自然エネルギーによって電力を生み出し、地球環境を汚さない住宅です。
さらに、自然素材を使うのもパッシブデザイン住宅の特徴です。
パッシブデザイン住宅は光熱費が抑えられるので、省エネ住宅を考えている方は検討してみるといいでしょう。
ただし、パッシブデザイン住宅として認められるには、定められた条件をクリアする必要があります。
以上、パッシブデザイン住宅の概要を簡単にご紹介しました。
□パッシブハウスとZEH住宅は別のもの?
日本で最近話題になっている住宅として、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という住宅が普及し始めています。
国もこの住宅の普及を促進しており、両者を混同してお考えの方も多く見られます。
実はパッシブハウスとZEHはどちらも、環境に配慮した地球に優しい省エネ住宅という共通点がありますが、一方で明確な違いも存在します。
パッシブハウスは、あくまで自然エネルギー以外のエネルギーの使用を極力控えた住宅であり、住宅のつくりにうまくエコシステムを組み込むことで自然エネルギーでの暮らしを可能にしています。
対してZEHでは、太陽光発電のようなシステムを積極的に採用し、実際電気を使っても生成したエネルギーでうまく相殺するようにデザインされています。
パッシブハウスもZEHも省エネに特化した住宅ですが、パッシブハウスはより省エネへの考え方が強まっており、省エネ住宅の究極系と言えます。
□パッシブデザインの条件とは?
ここでは、パッシブデザインとして認められるための条件をご紹介します。
パッシブデザイン住宅には、以下のような条件が備わっていなければなりません。
・太陽光、風などの自然エネルギーを活用する
・自然エネルギーを調整する
・室内環境を充実させる
・省エネルギーを実現する
このような条件を満たすためには、どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、その手段について解説します。
*太陽熱利用
昼に太陽熱を取り入れ、その熱を貯めて暖房などに利用するというシステムです。
*昼光利用
太陽光を取り入れ、自然光による室内照明の代わりにすると電気の使用時間を抑えられます。
*自然風の利用
夏・秋などのエアコンが必要な時には、外気を取り入れてエアコンの使用時間を抑えましょう。
自然風を活用すれば、エアコンがいらない期間を長くすることができるので、省エネにつながります。
*高断熱・高気密素材の利用
住宅に高断熱、高気密素材を使用することによって快適な室温をできるだけ持続できます。
家の中全体を一定の温度に保てるため、部分的に寒かったり暑かったりすることのない、住みやすい住宅が実現しますよ。
この章では、パッシブデザイン住宅の条件とこれらの条件を満たすためのポイントを解説しました。
ぜひ設計の時点でこれらの点を意識してみてくださいね。
□パッシブデザインの特徴や魅力とは?
*家が明るい
日中明るく過ごせるように、家の必要な場所に窓を設けて採光するのがパッシブデザインの特徴の1つ。
家の中心に明かりを入れることによって、部屋全体を明るく開放的な印象にしてくれます。
また、光が入ると冬も日光の暖かさを感じられるので、体感温度も上がります。
*夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる
パッシブデザインは、自然エネルギーで消費エネルギーを賄うために、住宅のつくりも自然の力を利用できるようになっています。
例えば夏、強い日差しで室温が上がらないように、屋根の庇(ひさし)が長めに作られています。
こうすることで日差しを遮り、冷房を使わなくても暑く感じない家になるのです。
また、風向きを考えてドアや窓を設置することで、室内に涼しい風を送り込み、自然に涼しく感じられる住宅をつくっています。
冬も同様に寒く感じない仕組みが組み込まれています。
採光力の高い窓を設置することで日光の暖かさで暖房要らずの快適さを実現し、断熱材にこだわることでさらに家の保温力を高められます。
このようなデザインのおかげで、人工的な設備に頼る必要がないのがパッシブデザインの特徴であり魅力でもあります。
電気代を抑えられるだけでなく、健康的な生活を送るきっかけにもなるのです。
□パッシブデザインのメリット
パッシブデザイン住宅は、年間を通して住みやすい住宅になるのが、最大のメリットです。
例えば、窓を大きくするといった工夫をすると太陽光をできるだけ多く取り入れられるので、冬でも暖かく快適に暮らせます。
また、高い断熱効果を持つ素材で作られた屋根や壁などにより、快適なエアコンからの風が逃げないように作られています。
熱を逃がさない構造にすることにより、家の中のどこでも均等に暖かく、エコな生活を実現します。
また、断熱性の高い住宅は夏に熱い外気を家の中に入れない構造なので、最小限のエアコンの稼働時間で、涼しく快適に過ごせるでしょう。
さらに、通気性を確保することでエアコンが必要ない季節は、自然の風を取り込んで涼しくできます。
以上、メリットについてでした。
□パッシブデザインのデメリット
環境に配慮し、省エネを実現するパッシブデザイン住宅にももちろんデメリットがあります。
パッシブデザイン住宅は、建築費が高くなるのがデメリットです。
随所に省エネのための工夫を施す必要があり、高断熱材をふんだんに使用するため、通常よりもコストが高くなってしまいます。
ただし、建築費用は高くても、毎月の光熱費は抑えられるので、長い目で見ればパッシブデザインの方が安くなる可能性もあります。
また、パッシブデザイン住宅は、その地域に合わせた設計をする必要があります。
太陽光や自然風を取り込むパッシブデザイン住宅は、北海道でも九州でも同じというわけにはいきません。
そのため、地域によって建築費用が変動するだけでなく、設計や施工に時間がかかるというデメリットもあります。
さらに、太陽光や風などの、自然エネルギーを効率よく活用するには、周辺の地形や隣家との距離、家の向きなども考慮する必要があります。
そのため、パッシブデザイン住宅にすると間取りが希望通りにできなかったり、家の外観を変えざるを得ない場合もあります。つまり、その環境に合う家を建てるというパッシブデザイン住宅のメリットが、場合によってはデメリットになってしまう可能性もあるのです。
家を建てるなら、外観にこだわりたい人もいるでしょう。
しかし、パッシブデザイン住宅は、熱効率を優先して設計する必要があるため、なるべく凸凹のない四角形に近い形にする必要があります。
なぜなら、四角形に近いシンプルなデザインにしないと、家の表面積が増えて断熱性が悪くなるからです。
このように、パッシブデザイン住宅を実現するには、ある程度家の構造や外観を、犠牲にしなければならないのもデメリットですよね。
以上、デメリットについて解説しました。
前章でご紹介したメリット・デメリットを比較して本当にパッシブデザイン住宅を建てるのか検討してくださいね。
□パッシブデザインにおける間取りや外観ポイント
パッシブデザインの住宅を建てるためには、さまざまな設計ポイントがあります。
ポイントは日当たりや風の通りを考えて設計することです。
どのような点に気をつけながら設計すればいいか、ぜひ本記事を参考にお考えください。
1. 総2階建てにする
総2階建てとは、1階部分と2階部分の面積に差がない家のことです。
デザイン性に富んだ家は1階と2階に凹凸があり屋根や壁を増設しなければいけませんが、総2階建てなら外壁が直線的で屋根も余分に設置する必要がないため、初期費用を大幅に抑えられます。
また、設計がコンパクトなので熱が逃げず、耐久性も高く持続可能な家ができるのです。
2. 屋根の形状は「片流れ屋根」か「切妻屋根」
パッシブハウスを建てたいなら、屋根の形状は片流れ屋根か切妻屋根がおすすめです。
片流れ屋根は三角形の片方の辺だけを残した形状の屋根、切妻屋根はよく見かける基本的な三角屋根です。
日本で主流な寄棟屋根は屋根裏に湿気が溜まりやすく、家の構造に負担がかかってしまいます。
片流れ屋根や切妻屋根なら接合部分が少なく、雨漏りのリスクが少ないのも嬉しいポイントです。
3. 風通しを考える
間取りを考えるうえで、パッシブデザインは風通しの良さを重視します。
うまくいけば、エアコンを使わなくても快適に過ごせる家を実現できます。
風通しの良い家にしたいなら、各部屋に風の通り道を確保するための窓を確保しなければいけません。
窓にも種類があるので、断熱性や手入れの楽さなども重視しながら選んでみてください。
4. 吹き抜け構造で採光力アップ
もし住宅街のように隣家との距離が近く、十分な採光が見込めない場合は、吹き抜け構造にして窓の位置を高くしましょう。
高い位置に窓を設置すれば、物に遮られることなく部屋に日光を取り入れられます。
5. 窓の位置や大きさを考える
日当たりが良好な南側の窓は、少し大きめの窓を設置することで太陽光をしっかりと取り込めます。
逆に北側の少し暗くなる場所や西側の西日が強く差し込む場所の窓を小さくすることで窓の設置コストのバランスを取れます。
6. 気密性や断熱性を重視する
室温を一定に保ち快適に過ごすために最も対策すべき場所が、玄関です。
玄関ドアは最も隙間が生まれやすく、玄関は外の室温に影響されて室温が上下します。
少しでも玄関の温度を安定させるためには、気密性の高いドアを採用するのがおすすめです。
引き戸タイプは気密性が低いので、片開きドアや親子ドアを採用しましょう。
気密性や断熱性を重視するのはドアだけではありません。
壁や窓など、寒さを入れず熱を逃がさない構造の家を作る必要があります。
□パッシブデザイン住宅で失敗しないためのポイント
パッシブデザイン住宅の建築で失敗しないためには、以下のポイントに注意しましょう。
*施工店と一緒に土地を選ぶ
家を建てるには土地選びが重要ですが、パッシブデザイン住宅の場合は通常よりも土地選びを慎重に行いましょう。
なぜなら、パッシブデザイン住宅は家を建てる土地の状況によって、設計や間取りが変わるからです。
つまり、まず土地が決まらないと間取りも家の外観も決められないのです。
例えば、南側に雑木林があったり、大きな家が建っていたりすると太陽光を十分に取り込めません。
そのため、パッシブデザイン住宅を建てる際は、土地選びの条件が厳しいのです。
建築の知識と経験が豊富な施工会社に同行してもらうことをおすすめします。
*トータルコストを考える
家を建てる場合は、トータルのコストを考慮するのは当然のことですよね。
しかし、パッシブデザイン住宅の場合は、なおさらトータルコストを意識する必要があります。
家の建築費にいくらでもお金をかけられるのであれば話は別ですが、通常は限られた予算で家を建てることになるので、費用をかけるべき点とそうでない点をしっかり分けなければなりません。
*トータルバランス
パッシブデザイン住宅は費用が割高になるので、家の建築以外の部分をないがしろにしがちです。
しかし、立派な家を建てていても外構が貧弱ではトータルバランスが取れていません。
その逆も然りです。
パッシブデザイン住宅は費用がかかるので、家の建築費以外の予算についてもしっかり考慮して、トータルバランスを取る必要があります。
以上の点をしっかりと意識して、住み良いパッシブデザイン住宅を完成させてくださいね。
□まとめ
パッシブデザイン住宅は、次世代型の住宅として注目されています。
地球環境に配慮した省エネ住宅なので、太陽光や自然風を最大限に利用しているのが特徴です。
また、断熱性能の高い素材を使うので建築費が割高になります。
しかし、パッシブデザイン住宅は、年間を通して住みやすい住宅です。
設計・施工・工事にかかる期間が長くなる傾向にありますが、長い間住み続けられるような住み良い住宅を建てたい場合には、ぜひご検討ください。