冬の季節に、吹き抜けのあるお宅におじゃました時、「なんだか寒いな…」と感じた経験はありませんか?

半面、吹き抜けのあるお宅におじゃました時、「なんて解放感がある素敵なリビングなのかしら…新築の家には、絶対に取り入れたい!」と思った方も、いらっしゃると思います。

インテリア雑誌などでは、吹き抜けやリビング階段のあるリビングの写真をよく見かけます。モデルルームを見学に行って目にすることもあります。広々とした高級感のある吹き抜けを、間取りに取り入れれば、洗練された雰囲気の家になるに違いありません。

一方、吹き抜けで失敗したという話も、よく聞かれます。室内環境が、快適に維持できなくなることがその理由です。しかし、狭小住宅の場合、周辺の環境によっては、吹き抜けはなくてはならない間取りでもあります。吹き抜けを失敗させないためには、どうしたらよいのでしょうか?

Works(株)ホープスの建築実例

吹き抜けが狭小住宅に必要な理由

狭小敷地に住宅を建てる場合、敷地面積と、家族構成の兼ね合いから、居住空間を増やすために、3階建てにすることが良くあります。住宅が密集している地域に、3階建ての狭小住宅を建てると、健康と快適性を維持するだけの日差しが採り入れられません。周辺のマンションや家屋に、日差しと風を遮られてしまうからです。

特に、道路に面している間口が狭く、奥行きの長い敷地の場合、1階と2階の部屋は、昼間でも暗くなってしまう恐れがあります。また、風が通りにくく、換気の悪い家になってしまうことも解決しなくてはなりません。

吹き抜けは、この日当たりと風通しが悪いという問題を、解決します。吹き抜けは、3階で採りこんだ太陽の光を、1階と2階の部屋まで届けます。また、吹き抜けは、風に縦の通り道が作ります。熱を含んだ空気は、高いところに上がっていく性質があるからです。夏には、階下の部屋の窓から入ってきた風が、吹き抜けを通って、2階、3階の窓へと抜けていきます。

狭小住宅に、吹き抜けが必要な理由には、視覚的な問題もあります。限られた床面積に建てる家なので、四方の壁が、視覚的な圧迫感を生み出すのです。しかし、吹き抜けがあれば、広がりが感じられ、太陽の光が降り注ぐ空間が実現します。

その為、日当たりと風通しを良くし、視覚的な開放感を作る吹き抜けは、狭小住宅の室内環境の為には、非常に役立ちます。

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吹き抜けを作って後悔しているケース

暖房をつけても、なかなか暖まらない、暖房を止めると、室内の温度の低下が早く、朝は非常に冷える、窓の結露が発生するが、高い位置なので毎日拭き取れず、カビが生えてしまったというような問題が、冬には起こります。

エアコンをつけても、なかなか涼しくならない、西日が眩しいというような問題が、夏には起こります。

1階にあるダイニングで調理をしていると、2階の部屋までニオイが伝わってしまう、喫煙する人がいると、2階の子供部屋まで臭くなってしまうというような、ニオイの伝わりやすさに関する問題が起こります。

2階の子供部屋の声や音楽が、1階まで響いてくるので、お客様がいらした時に気を使う、反対に子供が就寝した後は、リビングで物音を立てないように、しなくてはならないというような、音の伝わりやすさに関する問題が起こります。

吹き抜けの分、2階、3階の床面積が減ってしまった、収納が少なくなったというような、階上の部屋の床面積に関する問題が起こります。

耐震性の低い家では、変な吹き抜けになってしまい、日当たりも風通しもそれほど改善されないという、室内環境の問題がおこります。加えて、インテリア性が向上するどころか、低下したというような視覚的な問題までおこります。

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吹き抜けを作っても快適な暮らしが出来る家を建てる為の条件

快適な暮らしが出来る吹き抜けにする為には、上記の問題点を、すべて解決しなくてはなりません。

夏暑く冬寒い 冷暖房の効率が悪い
この問題の、根本的な原因は、住宅の断熱性と気密性です。吹き抜けを間取りに採用する為には、通常よりも高い断熱性と気密性が必要です。屋根、壁、床に使う断熱材や塗料に、断熱性の高いタイプを使う、高い気密性を実現できる優れた技術で施工する、木や樹脂のサッシ+複層ガラス、トリプルガラスなど、断熱性と気密性の高い窓にするといったことが、問題を解決します。

断熱性の高い家は、暖房を止めても、急激に温度が変化しません。その為、冬の朝の冷え込みや、夏のエアコンを切った後の寝苦しさなども防げます。

プラスα対策として、シーリングファン、床下エアコンを採用することがあげられます。シーリングファンを設置すると、暖まって上昇した空気が循環するので、冷暖房の効率が良くなります。

床下エアコンは、置き型、又は壁固定型リモコンが付いた壁付エアコンを、床下に設置する暖房の方法です。縦に空間が繋がっている狭小住宅では、1階の床下に1台設置するだけで、家の中全部を、効率よく暖められます。メーカーが認めているエアコンの使い方ではないのですが、床暖房より、はるかに導入コストを抑えられます。

また、トップライトをつけた場合には、トップライト用のブラインドなど、専用の日差し対策製品を設置する方法も有効です。

結露とカビ
北側に面して吹き抜けの窓を作ると、断熱窓でも、結露してしまうことがあります。その為、吹き抜けの窓は、北側以外の面に、設置することが、問題を解決します。

ニオイの伝わり
強力な換気扇をつける、空気の流れを考えた換気設計にする、ガスコンロの位置を吹き抜けから離すなどの工夫が、問題を解決します。

音の伝わり
子供や高齢者などの、早く就寝する家族の部屋は、リビングから遠い間取りにする、楽器の練習をする子供がいる場合には、防音対策を取り入れた設計にするなどの工夫が、問題を解決します。

収納が減る
吹き抜けを作ると、その分、床面積も収納も減ってしまいますが、壁面や、小屋裏、床下などに収納を作ることが、問題を解決します。

これは、日当たりと風通しの良さを選ぶか、収納や部屋の面積が減ることを選ぶかという優先順位の問題でもあります。日当たりと風通しは、家族の心と身体の健康を守るために、必要不可欠なものです。それを考えると、収納を工夫して、吹き抜けを作る、又は、吹き抜け以外に、日当たりと風通しを良くする方法を見つける必要があります。

変な吹き抜け
狭小住宅を在来工法で建築し、吹き抜けをつけようとする場合、耐震性の観点から、吹き抜けとして機能しないような、中途半端な吹き抜けになってしまうことがあります。

広い家であれば、吹き抜けを作っても、床面積が減る割合が、全体の床面積に対して少ないので、在来工法でも、耐震性に響きはしません。しかし、狭小3階建て住宅の場合、吹き抜けで減る床面積が、全体の床面積に対して大くなってしまうからです。

その為、耐震性を低下させない為の工夫から、中途半端な吹き抜けに出来上がってしまうことがあります。中途半端な吹き抜けは、せっかく作っても、日当たりと風通しが、それほど良くならず、見た目も良くない吹き抜けになってしまいます。

木造の狭小住宅で、思い通りの吹き抜けにしたい場合には、SE構法で建築する方法が、向いています。SE構法は、木造でありながら、コンクリートの建築物のような、ラーメン構造で建築する構法で、高い耐震性を持っています。その為、間口いっぱいの大きな窓や、インナーガレージが作れます。同時に、縦に繋がる吹き抜けも、自由なデザインで設計に取り入れられます。

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HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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