狭小な土地に多い土地の形状は、細長い土地と旗竿地です。どちらも、ウナギの寝床のような細い長方形の家になるケースがほとんどです。細長い長方形の狭小住宅は間取りの工夫で暮らしやすくなるのでしょうか?
細長狭小地でも大丈夫!
15坪~20坪程度の土地は、狭小敷地と呼ばれ、都心部には非常に多く存在します。郊外の住宅ではあまり見かけないこのような狭小敷地が都心部に多い理由は、土地の価格が高額だからです。東京への通勤県内にある神奈川県では、2019年の時点で、24万8775円/m2、茨城県では3万4990円/m2、千葉県では12万3532円/m2、埼玉県では15万6973円/m2という公示地価平均です。これらの地域と比較して、東京都の公示地価平均は109万6445円/m2です。
この数字は商業地も含むすべての平均ではありますが、東京都と近郊の地域には大きな差があることがわかります。住宅地に限定した場合でも、港区赤坂では434万円/m2、千代田区60九番町では393万円/m2となっています。23区内で比較的地価平均が低い地域でも、足立区では36万7663円/m2、練馬区では43万5136円/m2というように、東京近郊の県より高額です。
一方、都心部に家を建てたいと望む人は、非常に多くいます。その中で、家の購入に億単位の費用をかけられる人はごく一部の限られた人達です。一般的な生活をしている人にとっては、非現実的な費用でしょう。その為、以前は1軒の家が建っていた土地を、分割して売却する方法がとられ、狭小地が誕生します。
このようなケースで、土地の一面だけが道路に面している場合には、分割したすべての土地の間口が道路に接するよう、旗竿地や細長い土地が生まれます。都市計画によって、住宅地を横切って都市計画道路ができるケースでは、変形の土地が生まれることもあります。このような事情から、狭小の土地には、細い長方形の土地、旗竿地、変形地などが多く存在します。
長方形の方位を活かした採光アイデア
玄関と階段の位置は、間取りの軸ともなる部分なので、非常に重要です。特に、長方形の家では、家全体の暮らしやすさにも大きな影響を与えます。長方形の家には、間口が狭く、奥に長い長方形と、間口が広く、奥行きが短い長方形があります。狭小住宅では、間口が狭く、奥行きの長い家がほとんどです。
間口が南、又は北側に面している狭く奥行きが長い家
家の南側、又は北側が道路に面している場合は、南北に長い家、南玄関、又は北玄関の家が出来上がります。南、又は北玄関の奥に長い家で、両側に隣家がある場合には、階下の部屋は日当たりが悪くなってしまいます。東側の隣家との距離が離れていれば、日当たりの良い家、西側の隣家との距離が離れていれば、西日のきつい家になってしまいます。
ただし、狭小敷地では、両側に隣家があり、距離が近い状況であることがほとんどです。その為、南側からの日差しを効率よく採り入れなくてはなりません。日当たりを良くする為には、吹き抜けを取り入れ、玄関とリビングの間を区切らない間取りが非常に効果的です。リビングの南側に吹き抜けを取り入れることで、階上の南に面した部屋に入る日差しが、階下にあるリビングに届きます。また、玄関とリビングを繋ぐことで、床面積が節約できます。
この場合に、注意しなくてはならないことは、玄関を通して道路からの視線がリビングまで届いてしまうことです。玄関前の目かくしフェンスなど、外構の工夫も必要ですが、リビング階段を設置して、リビングと玄関の間の緩い区切りにするなど、間取りの工夫も必要です。
間口が西、又は東側に面している狭く奥行きが長い家
家の西、又は東側が道路に面している場合は、東西に長い家、西玄関、東玄関の家が出来上がります。東西に長い家で、南側の隣家が近いと日当たりの悪い家になってしまいます。そのような場合には、南側に隣家との目隠しの壁と、中庭をセットで採り入れる方法があります。中庭からの陽射しで、すべての部屋に光が採りこめ、明るい家が実現します。
長方形の敷地を活かす設計
間口の狭い長方形の住宅では、床面積を無駄にしない為、壁の少ない縦に並ぶレイアウトになることがほとんどです。1階の奥に浴室やトイレがあり、キッチン、ダイニング、リビング、玄関が繋がっています。そして、日当たりが悪くなることが多いので、家の向きや周辺の状況に合わせて、リビング階段と組み合わせた吹き抜けや中庭を取り入れます。このようなレイアウトの家で注意しなくてはならないことを考えてみましょう。
家事動線
このレイアウトで注意しなくてはならないポイント一つは、家事動線です。主婦の毎日の家事は、食事の支度、洗濯、掃除です。キッチン、洗濯機のおいてある洗面所、洗濯物を干すバルコニーへの階段という3つの場所を回遊できるようにしておくと、家事動線の効率が良くなります。回遊できる間取りにするポイントは、キッチンとダイニングの繋げ方、階段の位置、洗面所の出入り口の決め方です。
ベランダ近くの家事スペース
取り込んだ洗濯物をたたむ、アイロンをかけるなどの家事をするスペースとして、ベランダの近くや、洗面所の中に、ちょっとした作業スペースを作っておくと便利です。このスペースは、雨の日に洗濯物を干す場所としても使えます。
リビング階段の位置
リビングの中央に設置する、リビングとキッチンの間に設置する、リビングの壁際に設置するなど、設置する位置によって家族の動線や室内の視線に影響を与えます。奥行きが狭く間口の狭い長方形の家であれば、リビングの中央に設置して、階段へのアクセスをしやすくする、玄関とリビングが繋がっている場合には、視線が通り過ぎないよう、リビングとダイニングの間に設置するというように、玄関の位置や、長方形のタイプに合わせて考えます。
収納
奥行きが長い家で、玄関とリビングが繋がっているレイアウトでは、家族は帰宅するとリビングに移動します。その結果、リビングに上着やバッグなどが散乱しやすくなってしまいます。その為、奥に細長い家では、リビングに大型の収納があると便利です。
また、奥行きの長さを活かして、寝室の奥にも大型のウォークインクローゼットを作ると、室内を圧迫せずに衣類や客用布団などをすっきり片づけられます。その他には、洗面所内にも家族が使える収納を作っておくと、タオルだけではなく、下着やパジャマなどもしまっておけるので、入浴準備が楽になります。
家具
リビングダイニングがつながっていて、間口の狭い家では、家具のおき方によっては、移動のしにくい家になってしまいます。玄関⇔リビング⇔階段・リビング⇔ダイニング・リビング⇔浴室やトイレ これらの動線の邪魔にならないように家具を配置しなくてはなりません。
ダイニングから洗面所に行く時に家族同士がぶつかる、ソファでテレビを見ている家族の前を、他のことをしている家族が、何度も横切るというような状況にならないような家具の配置が大切です。できるだけ壁に寄せて配置する、造作家具にできる家具は、できるだけ造作家具にするなどの工夫が役立ちます。
家具は造作家具にした方が床面積を有効に使えます。置き家具は、完璧に正確にサイズを計らないと、デッドスペースができて、床面積を無駄にしてしまうからです。
間口が狭く、奥行きの長い狭小住宅は、道路との位置関係や家の向きに合わせた設計によって、日当たりと風通しの良い快適な家になる可能性を秘めています。ウナギの寝床のような狭小地では快適な生活のできる家は建たないとあきらめなず、暮らしやすい家を建て、都心部での生活をお楽しみください。
HOPEsの狭小住宅への思い
ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。
敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。
狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。
狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。