狭小住宅には、限られた床面積の中で快適に暮らせる居住面積を確保することが重要な課題です。しかし、その為に効率だけを考えた家になってしまうと、日常生活の中で視覚的な満足度が低下してしまいます。帰宅時に目に入る自分の家の外観が満足のいくデザインであれば、毎日帰宅するのが楽しみになります。

食事の際には、使いやすいキッチンや清潔なダイニングというだけではなく、その場所で調理をしたり、食事をしたりすることを楽しめる雰囲気が必要です。生活の質を上げるためには、使いやすさに加えて、視覚的な満足感も大切なポイントだからです。見た目だけにこだわった暮らしにくい家や、効率だけ考えた味気ない家ではなく、狭小住宅をおしゃれで快適な家にするポイントの一つは階段です。

階段はデザイン性によって視覚的な要素を、階段のタイプや位置によって家族の暮らしやすさを向上させます。特に、限られた敷地内で十分な居住面積を確保する為、通常の住宅にはない特別な工夫が施される狭小住宅では、階段が視覚的にも快適な室内環境の維持にも大きな役割を果たします。

狭小住宅では、床面積を確保する為に2階建て、3階建てにすることがほとんどである為、階段は絶対に必要なパーツです。そして階段のタイプ、階段の位置によって家の中の雰囲気と、動線が大きく変わります。

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階段のタイプ

階段にはどのようなタイプがあるのか確認しておきましょう。

階段の用語

  • 踏板 足をのせる部分の板
  • 蹴込み板 立ち上がり部分の板
  • 桁 階段を支える板、又は角材

桁のタイプ

  • 側桁階段 踏板を壁や板で両側を挟まれている階段です。歩きやすく安全な階段なので、一般的な住宅に最も多く使われているタイプです。
  • ささら桁 両側、又は片側を階段状のささら桁で踏板が支えられている階段です。
  • 力桁 斜めに架け渡した一本の太い力桁で踏板が支えられている階段です。

蹴込板のタイプ

  • 蹴込板がある階段 箱型階段とも言われる最も一般的な階段です。上の踏板の全面と下の踏板の奥の間が縦の蹴込み板で塞がれているので、安全です。また、蹴込板の部分を引き出しにし、収納スペースとして使うこともできます。
  • 蹴込み板がない階段 蹴り込み板がないので、踏板と踏板の間の空間から日差しと風が取り入れられるスケルトン階段のことです。

一般的にスケルトン階段には、吹き抜けと組み合わせることで、広々とした空間を作る、陽射しと風を取り入れる、デザイン性が高く、洗練された雰囲気を作るといった良さがあります。その中でも、より個性的な雰囲気を作るのは、片持ち階段や吊り階段です。しかし、その反面、踏板の間に空間がある為、階段から階段下に物が落下する恐れがあります。まだ小さな子供が、落下する、大人でも躓きやすい、下に人がいるとスカートの中が見えそうで気を使うなどの問題点もあるので、家族構成によっては向かない場合もあります。

掛け方のタイプ

  • 片持ち階段 踏板を直接壁にはめ込む階段です。吹き抜けとの組み合わせで、中空に浮いたように見せることもできます。
  • 吊り階段 上部からつるした鉄筋や柱などで踏板を吊る階段です。
  • らせん階段 螺旋の中心にある支柱で踏板を支える階段です。すべての階段の中で最もスペースをとらずに設置でき、しかもインテリアとしてのデザイン性も高い階段です。

 

 

 

 

 

 

階段のまわり方のタイプ

  • 直階段 踊り場がなく、下の階と上の階を一直線に繋ぐ階段です。標準的な天井の高さの家であれば13段です。
  • かね折れ階段 1階と2階の途中で直角に曲がる階段です。床面積が節約できることに加えて、吹き抜けと組み合わせると効果的に空間が演出できます。
  • 廻り階段 向きを変える180度の角度を3分割し、踊り場にも段差のある階段です。
  • 折り返し階段 廻り階段のように180度向きを変えますが、踊り場は平面でコの字型をした階段です。
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階段に使う面積による違い

建築基準法では、住宅の階段の最低サイズは蹴上げ(1段の高さ)230ミリ以下、踏面(足を置く面の奥行)150ミリ以上、踊り場の幅は750ミリ以上と定められています。蹴上が高いほど段数は減り、踏面が狭いほど安定感がなくなります。

  • 建築基準法に定められている最小サイズ 直階段 幅0,9メートル 長さ2,7メートル・折り返し階段 幅1,8メートル、長さ1,8メートル(約畳2畳分)螺旋階段 直径1,8メートル 床面積が倹約できますが、小さな子供や高齢者には使いにくいサイズです。
  • 安全に使えるサイズ 折り返し階段 幅1,8メートル、長さ2,25メートル(約畳2,5畳分)に広げると、段数が15段に増えるので、安全で楽に階段の上り下りができます。
  • 踊り場が有効利用できるサイズ 幅1,8メートル、長さ2,7メートル(約畳3畳分)にすると、踊り場を広くし、ちょっとしたスペースを作れます。観賞植物の鉢を置く、小さめのベンチを置く、造り付けの本棚を作るなど、ゆったりしていて、楽しい階段にできます。

階段の位置

階段の位置は家族の動線と室内の景観に大きく影響します。また、どの位置に配置する場合であっても、吹き抜けと組み合わせることで、開放的な雰囲気が作れます。

 

 

 

 

 

 

  • 壁に沿って配置 家の形が細長い場合には直階段を壁に沿って設置すると階段下のスペースが有効に使えます。
  • 家の角に配置 折り返し階段を角に設置すると、家全体のスペースを有効に使えます。
  • 部屋の中央に配置 家をリビングの中心にし、その中心に階段を配置すると、常に家族の自然な触れ合いのある間取りにできます。
  • 家の中央に配置 家の中の居室を階段によって左右に分けられます。さらにスキップフロアと組み合わせると、家の左右のフロアに段差がつけられます。スキップフロアは、フロアの高さを半階層ずらして、中階層をつくる間取りのことです。狭小住宅では陽射しが届く範囲を広げ、風通しを良くすることにも役立ちます。横の空間を間仕切りなしでつなげることができるので、広々とした空間が作れます。その中央に階段を設置することで、左右が分かれ、より床面積を有効に使えるのです。
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階段の質感

階段の位置や、デザインだけではなく、階段の材質も階段の雰囲気、室内の雰囲気に影響を与えます。特にリビング階段など常に視界に入る位置にある階段は、存在感が大きく、インテリアに影響を与えます。クロスや床材との組み合わせ方で、それぞれをより引き立たせることができます。

  • 木材系 無垢材、樹脂木、集成材など、木材の質感を持つ建材が使われた階段です。木材の種類によって雰囲気が変わります。

≪ブラックウォールナット≫ 洗練された雰囲気の部屋に調和します。濃い目の色調であれば、アジアンテイストにもなります。

≪オーク≫落ち着いた雰囲気の部屋に調和します。

≪パイン≫ 北欧風のインテリア、ナチュラルテイストの部屋に調和します。

  • 金属系 シャープな雰囲気の部屋に調和します。木材の踏板と組み合わせてナチュラルナ雰囲気にもできます。
  • ガラス系 おしゃれなお店ではよく見かけるガラス階段を、住宅に用いると、スケルトン階段の中でもっとも採光性の良い階段が出来上がります。

踏板、桁、手すりそれぞれの異なる建材と階段のタイプの組み合わせによって、階段のインテリア性は無限に広がります。

階段をより使いやすくおしゃれにするポイント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段の安全性、有効性、デザイン性を上げるためのポイントを見ていきましょう。

手すりのデザイン

手すりには主に木材系と金属系があり、木材とアルミ、木材やアルミと半透明のパネルなど、組み合わせも様々です。そしてデザインによって異なった階段のイメージを演出します。

デザインには大まかにタテ桟タイプ、桟タイプ、棒タイプ、パネルタイプがあり、素材によって雰囲気が変わります。例えば同じ縦桟でも、ロートアイアンで凝ったアラベスク模様のデザインであれば高級で重厚な感じになり、木材でデコラティブなデザインであれば、アンティーク調、アルミと木材御組み合わせであれば、すっきりしたナチュラルテイストになります。

階段を安全でおしゃれにする灯

天井にはダウンライト、又はペンダントライトを取り付けます。吹き抜けと組み合わせた階段の天井にはペンダントライトが浮いています。階段の上部の壁、折り返し階段のコーナーにはブランケットライト、足元には、フットライトを取り付けます。照明器具のデザインや、灯りの色味によっても階段の雰囲気は変わります。

夜間安全に階段を使う為にはフットライトが効果的です。階段に設置する場合、踏板につけることも蹴込板につけることもできます。また、壁に沿って設置した階段であれば、階段脇の壁の足元に埋め込む方法もあります。人感センサータイプやスイッチでオンオフできるタイプがあります。暗い中でも部屋のスイッチの位置が見え、夜間のトイレなどでは部屋のスイッチをつける必要がなくなります。

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階段と収納

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段は、上り下りする以外に、階段下、壁面、手すり、踊り場などが有効に使えます。

  • 階段下 箱階段の場合には階段下の部分にトイレや、収納スペースを作れます。ペットが落ち着ける小さな部屋も作れます。スケルトン階段の場合には、部屋と繋がって使えるので、キッチンを配置することもできます。
  • 階段の壁 壁面に本棚を作ると、階段がちょっとした図書館に変わります。
  • 手すり 手すり自体を収納スペースにもなるデザインにできます。
  • 踊り場 踊り場を広めにとると、子供が遊ぶスペースとしても、ちょっとしたワークスペースとしても使えます。踊り場と窓の組み合わせでも雰囲気が変わります。

このように様々あるタイプの組み合わせ方とサイズによって、異なる趣の階段が生まれます。

狭小住宅で多く用いられるスケルトン階段は、蹴込板のないタイプという点では共通していますが、桁のタイプ、かけ方のタイプの違いや素材の質感、手すりのデザインによって表情が変わります。いろいろな階段のタイプを知って、家の雰囲気に合った素敵な階段をお楽しみください。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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