SE構法とは?地震に強い理由やメリット・デメリットを紹介します!

地震が多い日本でマイホームづくりをする時は、地震がきても大丈夫なように耐久性の高いものにしたいですよね。
そこで今回の記事では、SE構法とは何かについて解説していきます。
「地震に強い家を作りたい」
「地震が来ても家族を守ってくれるような家づくりをしたい」
このようにお考えの方必見の内容となっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

□そもそもSE構法とは何か?


耐震性を高めるためにはいくつか方法がありますが、今回の記事では、「SE構法」について解説していきます。
SE構法とは、Safety Engineering の略で、「工学的に安全な構法」という意味を持ちます。
このSE構法でできることは、主に7つです。

1、大空間かつ大開口の実現

SE構法は耐震性に優れているのにも関わらず、木造ラーメン構法を可能にしているため大空間かつ大開口な空間を実現できます。

これまで耐震性が高い大空間を作るためには、鉄骨が使用されてきました。
しかし、鉄骨はコストが高く、鉄骨を建材として使用できる層が限られていました。

2、駐車場スペースの増大

SE構法を用いれば、最大で3台の車を駐車可能です。
9メートルまでスパンを広げられるため、最大3台まで駐車できるのです。
車が趣味の人や何台かの車を運転するという人には嬉しい設計ですよね。

3、狭小住宅でも設計の幅が広がること

一般的な壁量計算には、耐力壁によってプランのリミットがあります。
しかし、SE構法を用いることで狭小住宅でも耐震性の向上を実現できます。
また、設計アイデアが広がるのも特徴と言えるでしょう。

4、スキップフロアが作れること

スキップフロアは耐震的にあまり良くないと言われます。
しかし、SE構法では工学的な計算に基づいて設計されるため、スキップフロアを安全に作れます。

5、屋上の有効活用

SE構法は全棟の構造を計算して設計するため、屋上も余すことなく有効活用できます。
特に都市部に建てられやすい狭小住宅では屋上を利用できると暮らしの幅が広がります。

6、吹き抜けの実現

「吹き抜けを作って耐震性に問題はないのか」と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、SE構法を用いれば吹き抜けの自由度は格段に向上します。
同一階の床面積の3分の1の大きさまでであれば、工学的にも安全に設計可能です。

7、間取りの自由度の向上

SE構法では構造計算が行われているため、将来的に間取りを変更したくなったとしても十分に対応可能です。
ライフスタイルが変化したとしても、その変化に順応しながら豊かに暮らせます。

□SE構法は地震に強いのか?


SE空間の最大の魅力は、「耐震性が高いのに大空間を実現できること」です。
ここではSE構法が本当に安全なのかということについて解説していきます。

SE構法が開発されたきっかけの1つは、1995年の阪神淡路大震災です。
震災では、多くの木造建築が、地震や同時多発的に起きた火事の影響で倒壊してしまいました。
この大震災の状況を詳しく分析し、作られたのがSE構法です。

大震災の特徴や発生した時の状況を詳細に分析、検証したうえで開発されているため、その後に発生した中越地震や東日本大震災、熊本地震などの大震災が起こったときも、SE構法で設計された家で倒壊したものはありませんでした。
このようにSE構法はすでにいくつかの記録的大地震を乗り越えてきているのです。

大地震が発生した時に1番影響を受けやすいのは、柱や基礎などの連結部分です。
建物が地震の影響で大きく揺れると、そのエネルギーはこれらの部分にかかってきます。
大きな力が一度に加わることで、柱ごと引き抜かれて倒壊してしまうことは珍しくありません。

熊本地震の時には、耐震等級が2級の木造住宅でさえも倒壊したという報道がありました。
後々、壁の枚数を計算する壁量計算と構造計算に大きな違いがあることが判明しました。
国土交通省が公開している熊本地震をシュミレーションした動画では、耐震等級2にあたるSE構法が無傷で熊本地震と同等の地震に耐えられることが証明されています。

□SE構法はなぜ地震に強いのか?理由をご紹介!


前章で紹介した通り、SE構法は地震に強いです。
では、どのような理由から地震に強いと言われているのでしょうか。

ここでは、SE構法が地震に強い理由を構造上の観点から見ていきましょう。
SE構法を理解する上で最も重要な部分なので、ぜひ最後までご一読ください。

*安定した品質で強度の高い「構造用集成材」を使っている

SE構法の構造躯体には、構造用集成材という木材が使われています。
では、構造用集成材は、通常の木材とどう違うのでしょうか。

通常の木材は、ほとんどの場合乾燥の強度や乾燥の度合いが分かりません。
対して構造用集成材は、部材ごとの強度が表示されており、含水率も低いです。
このように性能や強度が明確になっていることから、「どこにどの部材を使用するか」が決めやすくなります。

*梁と柱の結合部の欠損が少ない

一般的な工法においては、梁と柱をつなげる結合部分に穴加工がされているケースが多いです。
昔の寺社のように20センチ以上の太い柱を使っている場合は問題ありませんが、現在主流となっている柱は細いため、穴を空けると残りの部分が減り、強度が大きく落ちてしまいます。

この強度不足が最近問題視され始めており、実際に大地震の時にもこの接合部が壊れたということもありました。

一方で、SE構法では特殊な金物が使われているため結合部分の欠損が少なくなります。
そのため、SE構法で建てられた建物は大地震の際にも接合部が壊れにくく、より安心して生活できると言えるのです。
また、乾燥した集成材のため、木造自体の収縮も少なくなります。
このように、SE構法は地震に非常に強い構造となっています。

*柱の引き抜き強度が高い

大地震が起きた時に最も注意すべき部分が、柱と基礎の連結部分です。
建物が地震によって大きく揺れると、柱に大きな引き抜きの力がかかり、建物自体が大きく損傷してしまいます。
特に、阪神淡路大震災以降は引き抜き強度が大きく注目されています。

従来の木造建築では、基礎と連結した土台を通じて柱が取り付けられているので、金物で補強した場合でも強度が大きく上がるわけではありません。
SE構法では、「柱脚金物」と呼ばれる特殊な金物を使い、柱と基礎を直接連結させているので、引き抜きに対する耐力が大きく向上しています。
これによって、建物の耐震性はより強いものとなっています。

*数値に裏付けられた「構造計算」をしている

金物や木材が高い強度をもつことは重要な要素ですが、構造計算も地震に強い理由の1つです。
木造住宅ではあまり使われない構造計算ですが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物では常識的に用いられています。
デザインされた設計計画に対して、専門の構造設計士が数値を計算し、その数値から部材やその太さを決めていきます。

この構造計算は、一般の木造住宅では法律上義務化されていません。
そのため、建物の安全性は絶対とは言い難いです。

SE構法では、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同様に、木造住宅においても構造計算をしています。
また、耐震等級においても最高クラスの等級を取得可能です。
耐震性にこだわりたい方はSE構法を採用すると良いでしょう。

*部材が精度の高いプレカット工場で加工されている

構造計算によって設計図を作成できたとしても、実際の加工精度や使う部材が低品質のものであれば意味がありません。

SE構法においては、構造計算によって作成された部材のデータが指定のプレカット工場へ転送される仕組みが形成されています。
これにより、計算された部材が高精度に加工され、建設現場に直接届けられます。
また、施工においても、専門資格を所有した建築会社が行います。

□SE構法で建てられた住宅の実例をご紹介!


ここまで、SE構法が地震に強い理由を見てきました。
理由が分かった上で、ここからは、実際にSE構法によって建てられた住宅の実例を見てイメージを膨らませましょう。

1、長期優良住宅に選ばれ、耐震等級3を実現した家

こちらの家は、シンプルなデザインとSE構法ならでは柱のない広いLDKや最高クラスの耐震性、省エネ性が特徴です。

また、長期優良住宅や耐震等級3が取得できたことによって、フラット35の金利優遇や地震保険の割引、住宅ローン控除の拡充など、多くの制度を活用した結果、かかる追加費用以上の金銭的なメリットが生まれました。

2、スキップフロアを活用して耐震等級3を実現した家

一般的に、スキップフロアはフロアがずれたような構造となっているので、耐震性を向上させるのが難しいとされています。
そこでSE構法を採用することで、耐震性の向上に成功し、耐震等級3を実現しました。

床面積等の規定には適合しなかったので長期優良住宅の取得はできませんでしたが、性能向上計画の認定によって、地域型住宅グリーン化事業の補助金を活用できました。

□SE構法のメリットとデメリットについてご紹介!


ここからは、SE構法の具体的なメリットとデメリットについて見ていきましょう。
まずはメリットから解説します。

メリット1、耐震性が高い

先ほど説明したように、SE構法は耐震性を高めることが可能な構法です。
SE構法を使用することで、一般的な木造住宅よりもかなり耐震性を高められます。

SE構法は、強度が安定している集成材を金物で緊結している「ラーメン構造」と耐力壁を組み合わせています。
そのため、大地震にも耐えられるような耐震性を持っているのです。

SE構法は、鉄骨造やRC造を使用する時に用いられる構造計算が施されているため、建物の強度を構造計算によって検証しています。
耐震性の高さだけでなく、SE構法の耐力壁は断熱材を充填しやすい特徴があるため、断熱性能が高いです。

メリット2、間取りの自由度が高く、開放的な空間を実現しやすい

SE構法はその特徴のおかげで、一般的な木造住宅に比べて住宅内の柱や壁の数が少ない設計で済みます。
そのため、間取りの自由度が高いです。

壁の数が少ないと、1つひとつの部屋の大きさにもこだわれるため、開放的な空間を実現しやすいです。
また、将来的なリフォームや間取りの変更にも上手に対応しやすいため、これから長く住んでいくうえでも安心して暮らしていけるでしょう。

メリット3、費用対効果が高い

SE構法は、開発元であるエヌ・シー・エヌから認定を受けた工務店が施工を担当します。
そのため、大手ハウスメーカーに比べて費用対効果が高くなります。
全国区のハウスメーカーは、広告を打ち出すためにモデルハウスを運営したり、有名人を起用するなどして広告費がかかるため、住宅の費用が高く設定されています。

一方で、工務店は地元に根ざした経営を行っているところが多く、広告費も大手ハウスメーカーに比べても抑えられているため、施工費用が割安です。
その他にも、不整形の土地に合わせた独自の建物形状にも対応できるといった、設計に関する自由度が高いのも特徴です。

では、ここからはSE構法のデメリットについて解説していきます。

デメリット1、工務店探しが大変

SE構法は施工するために一定の技術力が必要です。
全国でSE構法に対応しているのは、546社と言われています。

そのため、家を建てようとお考えの地域でSE構法を行っている工務店を探す必要があります。

デメリット2、歴史が浅い構法であるため、老朽化したときの補強方法が確立していない

一般的な木造建築は老朽化した時の補強方法が確立されています。
しかし、SE構法は開発されてあまり年数が経っていないため、老朽化した時にどのような補強が必要なのかは未知数です。

デメリット3、一般的な木造建築に比べて費用がかかる

通常の木造建築よりも優れた耐震性、断熱性を誇っているためその分コストは割高になってしまいます。

□まとめ


今回の記事では、地震に強い家を作ることが可能なSE構法についてご紹介しました。
いざという時に備えるためには、家の設計段階から地震に強い造りにすることは非常に大切です。
今回の記事を読んでみて、SE構法について興味や質問が生まれたという方は、ぜひ遠慮なく当社までご連絡ください。
SE構法の他にも地震に対する備えはたくさんあります。
地震に強く、快適な家を作りたいという方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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