キッチンは、毎日の生活で必ず使う場所です。動きやすいこと、片付けやすいこと、常に清潔に保てることは、キッチンの基本的な条件です。そして、狭小住宅のキッチンは、リビングやダイニングと繋げた間取りにし、ワンフロア全てを使うこと間取りがほとんどです。ぞれぞれを区切ると、狭く動きにくいキッチン、光や風が届かない空間になってしまうからです。

リビングやダイニングと繋がったキッチンを、動きやすく、片付けやすい、明るくて常に清潔なキッチンにする為に、必要なことを考えていきましょう。

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キッチンの間取り

家族の暮らし方、家族構成によって、使いやすいキッチンの形は異なります。週末には家族揃って調理を楽しむ、日常的に子供たちがお手伝いをする、家族が多いので、料理の量も品数も多いというような家庭では、複数の人が動けるキッチンが理想です。調理はほとんど主婦が一人でする、共働きなので、短時間で食事の支度や片付けをしたいというような家庭では、効率よく配置されたキッチンが理想です。

また、キッチンに対する好みも人それぞれです。調理用具、調味料、キッチン家電などはすべて隠して、生活感のないキッチンにしたいという人もいれば、食器や調理器具、調味料などを並べて、生活感の溢れる楽しいキッチンにしたいもいます。ダイニングからキッチンが見えるのは構わないけれど、来客時のことを考えると、リビングからの視線は遮りたいと思う人もいるでしょう。

キッチンの生活感を隠したい場合には、いくつかの間取りのパターンが考えられます。

  • 収納する キッチン用品や食品、キッチン家電を全手をしまえる収納スペースを作ります。リビングダイニングキッチンの空間を、最も広々と開放的に使えます。
  • 腰壁のついた対面キッチンにする 対面キッチンは、ダイニング側にシンクやガスコンロが並べられているキッチンです。前面に腰壁がついているので、ある程度、キッチンの中が隠せます。
  • リビング階段をダイニングキッチンとリビングの間に設置する 対面キッチンでダイニングからの視線を遮り、リビング階段で、リビングからダイニング辺視線を遮れます。
  • スキップフロアをダイニングキッチンとリビングの間に取り入れる ダイニングキッチンとリビングの間に段差ができるので、光や風は通しながらも、それぞれの空間に独立感を持たせられます。
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キッチンのレイアウト

シンク、ガスコンロ、調理台の並べ方には、いくつかのレイアウトタイプがあります。レイアウトと冷蔵庫の位置、キッチンの広さや形によって、動きやすさが変わってきます。

狭小住宅でよく使われるキッチンは、Ⅰ型のレイアウトです。Ⅰ型のレイアウトは、横一列に、シンク、ガスコンロ、調理台が並んだキッチンです。

壁付きにすると、すべてのキッチンレイアウトの中で、最も床面積を圧迫しません。間口の広いキッチンの場合、Ⅰ型キッチンの端に冷蔵庫を設置すると、移動距離が横拡がりになって、作業効率が落ちてしまいます。しかし、狭小住宅の場合には、床面積が倹約できることに加えて、横幅が拡がり過ぎるという状況にはなり得ないことから、最も多く使われます。

壁付Ⅰ型キッチンのその他の特徴には、足元から頭上まで全て見渡せるということがあります。キッチンを隠したい人にとっては、好ましくないレイアウトです。反対に、見せるキッチンにしたい人にとっては、腕の見せどころです。調理器具や食器類などの並べ方で、センスの良さを発揮できます。

壁付Ⅰ型キッチン 調理器具や食器がインテリアの一部になっている楽しい空間です。

Ⅰ型壁付キッチンを奥行き側に設置したキッチンケースです。ダイニングテーブルは、調理中作業スペースとしても活躍します。

Ⅰ型キッチンを対面式にすると、手元が隠れ、前面の腰壁には、カウンターも設置できます。キッチンの奥側の壁や、キッチンの前面などに、収納スペースを作れるので、壁付キッチンより、多くの収納スペースが得られます。

背面が収納になっているⅠ型キッチン 上段と下段が別れているので、作業スペースとしても使えます。

また、カウンターがあると、朝食やおやつを食べたり、調理をしているお母さんと話しながら、子供が宿題をしたりもできます。

ダイニング側から見たカウンターのついたⅠ型キッチンです。

ただし、対面キッチンは、壁付キッチンより、床面積を広く使います。奥行きが十分にないと、リビング部分にソファとテレビボード、ダイニング部分にダイニングセットを置くと、窮屈になってしまうこともあります。

キッチン側から見たリビングとダイニング 奥行きを活かした空間が広がっています。

Ⅰ型キッチンの中のひとつであるアイランドキッチンも、狭小住宅と相性の良いキッチンです。ダイニング側にシンクやガスコンロが横一列に並んでいることは、対面式Ⅰ型キッチンと共通していますが、異なる部分もあります。腰壁がついていないので、キッチンの手元が全部ダイニング側から見渡せます。また、システムキッチンのメーカーが、ここ数年おしゃれなキッチンとして、力を入れているタイプなので、最新式の機能と、洗練されたデザインを備えたタイプが揃っています。見せるキッチンにしたい人には、魅力のあるキッチンでしょう。

キッチンのどの部分も壁に面していないので、キッチンの周りはすべて移動できること、Ⅰ型キッチンの奥行きが一般的に65センチであるのに対して、アイランドキッチンは、75センチから100センチなので、調理スペース、配膳スペースに余裕があることから、家族全員で調理を楽しんだり、子供たちがお手伝いをする家庭にも向いています。

間口方向に設置されたアイランドキッチン

そして狭小住宅では、本来間口と並行して設置するアイランドキッチンを、奥行き方向に設置するという変わった方法をとることもあります。アイランドキッチンの一般的な横幅は、240~270センチとⅠ型キッチンより、かなり長いからです。間口が狭く奥行きが長い狭小住宅ならではの設置の方法です。キッチンに造作テーブルを繋げて、リビングとダイニングが奥行きに沿ってつながった細長い空間を、有効に利用できます。

アイランドキッチンを奥行き方向に設置したケースです。

アイランドキッチンを、間口方向に設置し、奥側の壁には、引き戸のついた床から壁までの収納にするという方法もあります。ダイニングとリビング側から、アイランドキッチンだけが視界に入り、調理器具などはすっきり収納されているという見せると隠すを融合したキッチンです。

アイランドキッチンの背面には、床から天井までの引き戸が付いた収納スペースがあります。見せると隠すを組み合わせた開放感があり、すっきりとしたリビングダイニングキッチンです。

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キッチンのサイズと収納

効率の良いキッチンでの作業の為には、レイアウトの他に、適切なサイズにすることも大切です。食材を切ったり、出来上がった料理を盛りつけたりする作業をするスペースをガスコンロとシンクの間に配置する並べ方が最も全体のサイズを小さくできます。食洗器を使わない場合には、シンクの横(作業スペースと反対側)に、水切り籠を置くスペースも必要です。その為、最低でも壁付Ⅰ型の場合、180センチの横幅は確保しなくてはなりません。対面式Ⅰ型の場合には、背面の壁に収納+作業スペースが作れるので、160センチ程度に抑えられます。

システムキッチンの場合、メーカーの規格サイズがあります。狭小住宅の場合、床の面積や形状にぴったり合わず、デッドスペースが生まれてしまうこともあります。ただし、注文住宅の場合は、造作キッチンにすることができます。最低限のサイズで、作業しやすいキッチンが作れます。

収納する物のサイズに合わせて無駄なく作られた収納スペースです。

収納スペースも、システムキッチンの場合には、サイズに規格があります。システムキッチンにする場合には、床面積を圧迫しない奥行きと横幅に合わせたサイズを選びます。造作収納にする場合には、自分の背の高さで使いやすい棚の位置、しまう物のサイズに合わせた奥行きと横幅、見せたい物を並べる棚、隠したい物をしまう扉や引き戸のついた収納スペースというように、サイズと目的に合わせた収納スペースのプランを作ることが大切です。

狭小住宅では、床面積が限られています。使い勝手の良いキッチン、ゆったり座れるダイニング、広々としたリビングを、ワンフロアで実現するためには、造作キッチンとシステムキッチンの組み合わせ方が重要なポイントです。

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ホープスの狭小住宅への思い

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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