狭くても東京で暮らしたいと考える人は少なくありません。仕事先や学校への移動のしやすさ、夜遅くなっても自宅に帰れる安心感、直接購入できる商品の多彩さ、劇場や美術館の豊富さなど、東京の暮らしには、たくさんの魅力があります。

東京で暮らしてきた人にとって、家を購入する為に、郊外に移り住むという選択は、深刻な決心を伴うでしょう。近くに美味しいパン屋さんがない、習い事の選択肢が少ない、劇場でソワレを観ると帰りが深夜になってしまう…といったことがストレスになるかもしれません。

でも、東京の土地は高額です。多くの人にとって、無限の予算があるわけではなく、限られた予算内で家を建てなくてはならないのが現実です。その為、狭小敷地に収まる住宅を建てるということが選択されます。

狭小住宅には、住んでみないとわからない問題点があります。同じ都内でも、実家のゆとりある敷地に住んでいた人や、マンションに住んでいた人には、想像できないようなことがいくつかあります。

それを踏まえた上で、狭小住宅の建築プランを建てれば、狭くても快適な家を建てられます。しかし、そこを考えずに、理想的な間取りや外観デザインだけを考えて、建築プランを作ってしまえば、後悔だらけの暮らしにくい家になってしまいます。すでに狭小住宅を建て、残念ながら後悔の多い家を建ててしまったケースを参考にしながら、後悔しない狭小住宅にする為のポイントを考えていきましょう。

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室内環境にかかわる失敗

快適な室内環境を調える為には、日当たりと風通しの良さ、温度管理のしやすさという2つの要素が大切です。狭小住宅での失敗例の中には、これらの要素が満たされていないことが原因であるケースがあります。

失敗例 晴れた日の昼間でも室内が暗く、風通しが悪いので空気が淀んでいる

狭小住宅は、マンションや住宅が密集した地域に建っています。その為、1階と2階には、ほとんど日が当たらず、風も吹き抜けていきません。家にいるのは、寝る時だけだから、多少日当たりが悪くても何とかなると考え、日当たりや風通しにはこだわらなかった失敗例です。

日差しは、人間の暮らしにはなくてはならないものです。朝起きた時から、薄暗く、1日中照明をつけていなくてはならない家、風が入らず、自然の換気ができない家で、健康な生活は営めません。

密集地に建つ住宅は、窓の位置を工夫して、風の流れを作る、吹き抜けを取り入れて、3階からの光を1階まで届かせる、スキップフロアを取り入れて、家の奥まで光を届かせるなどの工夫が必要です。

光の降り注ぐ家

失敗例 窓が開けられない

隣家や道路からの視線が気になって、窓が開けられず、常にブラインドを下ろしているという失敗は、周辺の環境に合わせた窓の位置を考えなかったためにおこる失敗例です。

日差しや風通しの為に窓を開けたくても、隣家や道路からの視線が気になる位置に窓があると、せっかくの窓が開けられません。トップライト、ハイサイドライトなど、目線より高い位置にある窓であれば、隣家の窓や道路に面している壁にも設置できます。また、縦に細長いすべり出し窓も、外部からの視線を遮れます。

失敗例 エアコンの効率が悪い

間取りの特性に必要な住宅性能を備えなかったためにおこった失敗例です。日当たりと風通しの為に、吹き抜けやスキップフロアを取り入れると、床や間仕切り壁が減り、家の中の空間が繋がります。視覚的にも、開放感があり、インテリアのデザイン性も向上します。

ところが、狭小住宅には、メリットばかりのような吹き抜けとスキップフロアには、室内環境を低下させる要素があります。空間が繋がることによって、冷暖房の効率が低下してしまうのです。でも、十分な断熱性と気密性を備えた家であれば、そのような問題は起こりません。間取りと住宅性能を合わせて考えることが大切です。

動線にかかわる失敗

動線が考えられていない間取りは、暮らしにくい家になってしまいます。特に狭小住宅では、家事動線と収納に注意が必要です。

失敗例 家事が大変

マンション暮らしをしていた主婦にとって、3階建ての家での家事は、階段によって負担が大きくなります。特に洗濯、片付けは、悩みやストレスの種になるかもしれません。しかし、そのような悩みやストレスは、間取りの工夫で発生しなくなります。

失敗例 洗濯が大変

家事動線と洗濯機、洗濯物を干す場所の組み合わせを誤ったためにおこる失敗例です。

洗濯機のある場所が1階で、洗濯物を干す場所が3階ベランダであれば、家事負担は大きくなってしまいます。3階のベランダに洗濯物を干す予定であれば、ベランダの近くに洗濯機を置いたり、アイロンかけをしたりできるスペースを作る、水回りを1階にする予定であれば、洗濯機を置く洗面所に、下着やパジャマを収納できるスペースを作る、浴室乾燥をつけるなど、1階と3階を日に何度も洗濯物を持って往復しなくても済むような間取りの工夫が大切です。

失敗例 リビングが散らかる

遊び道具もたっぷり収納できる玄関

家族の帰宅動線と、収納スペースを上手に組み合わせなかったためにおこる失敗例です。

最近主流の間取りは、リビング中心の間取りです。多くのご家庭では、自分の居室で過ごすより、家族がリビングで過ごす時間が長くなっているからでしょう。リビング中心の間取りは、家族のコミュニケーションの為には、とても良い間取りなのですが、主婦にとってはストレスになる間取りでもあります。

夫婦だけの暮らしであれば、そのような心配はありませんが、家族の多い家庭では、リビングが片付かないという状態になりやすいのです。このような状態にしない為には、家族の帰宅動線にあった位置に、収納スペースを作ると、リビングが散らかるのを防げます。玄関、又はリビングに、家族で使えるウォークインクローゼットやウォークスルークローゼットがあると、帰宅時の荷物をしまってから、リビングで寛ぐという流れが作れるからです。

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ライフスタイルの変化にかかわる失敗

失敗例 子供の成長によって、部屋が足りなくなったり余ったり…

家は長く住む場所です。その為、長年のうちには様々な暮らしの変化が訪れます。そのことを想定していない間取りにしてしまった為におこる失敗例です。

家族の暮らしは、子供の成長によって変わり続けます。就学前は両親と寝ていた子供も、小学校に上がると、子供部屋で寝るようになります。子供部屋を使っていた子供も、やがて成長し、独立して家から出ていく日がやってくるかもしれません。

まだ赤ちゃんのうちから子供部屋を用意しておくと、スペースが有効に使えません。子供が独立後には、子供部屋は、無駄になってしまいます。そのような子供の成長に伴う暮らしの変化、夫婦の年齢による暮らしの変化など、長年のうちには様々なライフスタイルの変化が訪れます。そのような時に、大掛かりなリフォームをせずに、生活の変化に合わせて、暮らしやすくできる間取りにしておくことが大切です。

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ホープスの狭小住宅への思い

スキップフロアを採り入れた変化のあるLDK

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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