親世代と子世代がともに暮らす二世帯住宅は、毎日の暮らしにプラス面が多く、経済的にも有利です。しかし、間取りによっては、お互いの世代がそれぞれストレスを感じてしまう家になってしまいます。もし、広大な敷地があれば、二世帯完全分離の住宅は、何の問題もなく完成するでしょう。しかし、限られた面積の中での二世帯住宅には、様々な工夫が必要です。床面積が限られる狭小敷地に建てる住宅を、二世帯それぞれの家族全員が居心地よく暮らせる家にする為に必要なことを考えてみましょう。

Works(株)ホープスの建築実例

狭小敷地と二世帯住宅の組み合わせ

 

15坪前後の狭小敷地に家を建てる場合、地域にもよりますが、およそ10坪程度の家が建てられます。10坪の家を二世帯住宅にする場合、完全分離の他にも、部分的に共用するという方法があります。部分共有は完全分離にするより、床面積にゆとりが出ますが、間取りによっては、ストレスが発生する可能性も否めません。二世帯住宅のタイプによる違いを確認しておきましょう。

共用するタイプ 共用するタイプの二世帯住宅では、共用する部分の範囲で暮らし方と建築費が大きく変わります。

全てを共用
いわゆるサザエさん一家のような暮らし方です。二世帯が一つの家族として暮らす二世帯住宅です。二世帯とは言え、居室が増えるだけなので、分離型より床面積が節約でき、建築費も抑えられます。ライフスタイルによって異なりますが、このタイプの二世帯住宅では、食事の支度やリビングでの団欒も共にすることが多いのではないでしょうか?3世代間の自然なコミュニケーションがあり、常に家族の気配が感じられる楽しい暮らし方です。

夫婦が共働きの場合、親世代に子育てのお手伝いをしてもらえる、犬や猫を飼っていても、どちらかの世代が留守番をするので、家族旅行に行けるといった暮らしやすさがあります。ただ、主婦が2人になるので、家事のやり方ですれ違いがおこる、帰宅や就寝、起床などの生活の時間帯が世代ごとに異なり、お互いが迷惑に感じることがあるといった問題が発生する恐れもあります。

狭小二世帯住宅では、3階建てにすることが多いので、1階と3階をそれぞれのプライベートな居室にし、2階の水回りとリビングを共有するという間取りも考えられます。この場合には、すべて共用タイプの二世帯住宅とは言っても、プライベートな空間は世帯ごとにしっかり確保できます。

部分的に共用
玄関、水回り、リビングのうちの一つ、または複数の組み合わせを共用する二世帯住宅です。家族のライフスタイルに合わせて、共用する部分を選ぶと、ストレスのない暮らしやすい二世帯住宅が実現します。共用する部分が少なければ、建築費を抑えることができますが、暮らしの上で、すべてを共用するタイプの二世帯住宅と同じ問題がおこります。反対に、共用する部分が少なければ、建築費は嵩みますが、完全分離型に近い生活ができる家が実現します。

分離するタイプ 分離するタイプでは、それぞれの世帯が独立した生活を営めますが、間取りを工夫しないと、生活音の問題がおこります。また、共用タイプに比べて、建築費が嵩みます。

上下に分離
階ごとに世帯を分けるタイプです。内階段を使う場合と外階段を設置する場合があります。このタイプの場合、注意しなくてはならないことは、生活音の問題です。水回りと寝室が縦に並んでしまうと、睡眠の妨害になる恐れがあるからです。また、子供部屋の真下の部屋では、子供の足音が煩わしいことがあります。

横に並べて分離
2軒の家が並んでいるタイプです。生活上のストレスや生活音の問題は起こりにくいですが、世帯同士の自然な触れ合いがまったくなくなってしまう恐れがあります。親世帯が高齢になった時には、寂しさを感じるかもしれません。すべてのタイプの中で、最も建築費が嵩み、それぞれの居室が狭くなってしまいます。

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二世帯完全分離住宅に最低限必要な坪数

家族構成によって変わっては来ますが、二世帯で完全分離にする場合、最低限必要な坪数について考えてみましょう。

親世帯は夫婦、子世帯は夫婦と子供2人という家族構成の場合、6人が居心地よく暮らせる広さの家が必要です。6人家族ですべて共有する場合の床面積を、生活基本計画に居住面積の水準から割り出してみると、70㎡(10㎡×世帯人数6+10㎡)が最低居住面積です。坪数にすると、約21坪です。最低居住面積とは、国土交通省が作成した生活基本計画に示されている基準です。世帯人数に応じて、健康で文化的な住生活をする為の必要不可欠な住宅面積に関する水準として示されている数字です。

この数字は、子供がいる場合には、少なくなりますが、家を建てる時には就学前の子供でも、数年経てば、大人一人が必要とするのと同じだけの面積が必要な年齢になります。それを考えれば、子供が成長した時の床面積の基準で考えておくべきなのです。

一方、都市居住型の理想の居住面積は、6人家族で175㎡(20㎡×世帯人数+15㎡)約40坪です。この坪数に加えて、玄関や水回りを二重に作るとなると、40坪以上の建坪が必要です。例えば、45坪を3階建てにすると、階ごとの床面積は15坪 約50㎡です。したがって、理想の二世帯住宅に最低限必要な坪数は15坪ということになります。しかし、都心の狭小地には、15坪の家を建てられない敷地が多いことも事実です。

15坪に足りない土地の場合には、完全分離ではない二世帯住宅にする、又は理想の居住面積と最低居住面積の間で、敷地に建てられる坪数を割り出すという選択肢が考えられます。例えば、玄関だけは共有することにすれば、1~1,5坪の床面積が節約できます。どうしても完全分離にしたい場合には、それぞれの居室の床面積を減らす、親世帯のキッチンはミニキッチンにする、床面積を損なわない効率の良い収納スペースを作るなどの工夫が必要です。

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二世帯住宅の間取り

家族の暮らし方によって、暮らしやすい二世帯住宅の間取りは変わります。共働きで食事の支度はほとんど親世帯がするという場合には、敢えてキッチンを分ける必要はありません。どちらの世帯も来客が多いという場合には、玄関は分離させた方が良いでしょう。

生活の時間帯も含めて、それぞれの世帯の暮らし方にあった間取りから考え始め、共有する部分を決めていくことが大切です。家族の暮らし方によって、ストレスが発生する原因は変わってきます。限られた面積の中で、それぞれの居室やリビングにゆとりを持たせたいと希望する場合には、共有部分を増やすという考え方も必要です。家族構成と、今ある敷地内に建てられる坪数を照らし合わせて、間取りを決めていくことが暮らしやすさに繋がります。

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二世帯完全分離住宅の建築事例

ホープスが建築した二世帯住宅の中で、狭小敷地に完成させた事例をご紹介します。

実用性をきわめた!驚きの収納がたっぷりの完全分離2世帯住宅

 

構造 地上3階建(木造SE構法)
延床面積 115㎡~130㎡

「完全二世帯住宅をつくるには狭すぎる」と、複数のハウスメーカーや工務店が対応を断わったという狭小敷地に完成した完全分離の二世帯住宅です。

高い位置に取り付けた収納スペース

勾配天井を活かした収納スペース

階段下も効率よく収納スペースに

使い勝手の良い洗面所

広々としたリビングダイニング

すっきり片付けやすい玄関

狭小2世帯の家

構造 木造(SE構法)
延床面積 65~80㎡

『限られた敷地の中で家族2世帯がすごせる空間をつくりたい』建築面積6坪の中実現した共有タイプの二世帯住宅です。

トップライトが作る明るい空間

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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