家を新築する際に考えておきたいことの一つがライフスタイルの変化です。暮らしやすい家というのは、人生の中のタイミングによって変わってくるからです。限られたれた敷地に建てる狭小住宅を、ライフスタイルの変化に合わせた間取りを変えられる家にする手法がスケルトン&インフィルです。

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間取りの柔軟性が大切な理由

家は長く住む場所ですので、家を建てる年齢にもよりますが、何度かライフスタイルの変化が訪れます。大きなライフスタイルの変化は、結婚から老後までの期間におこる出産、子育て、子供の成長、子供の独立です。

特に子供は、年齢によって暮らし方が短いスパンで変わっていきます。また、夫婦だけの家族にも、引退後には生活の変化がおこります。そのような節目ごとに大掛かりなリフォームが必要になる家は、暮らしやすい家とは言えません。大掛かりなリフォームは、費用が嵩み、一定の期間仮住まいが必要になることさえあります。その為、子供の独立後は、建て替えや住み替えをする人が多いのです。さらに、短いスパンで暮らし方が変化する子供の成長に合わせて大掛かりなリフォームを繰り返すのは非常に効率の悪い方法です。

家族のその時々の暮らしに最も調和する家は、住み心地が良く、ストレスも発生しません。柔軟に変化する間取りの家は、ライフスタイルの変化にあった暮らしを実現します。

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生活の変化がおこるタイミング

結婚後に家を建てた場合、出産と子供の成長と並行して生活は変化していきます。子供は生まれてから小学校低学年までは、家にいる時間には、母親と一緒に過ごす時間がほとんどです。もし子供が複数人いても、男の子と女の子の組み合わせであっても、その時期までは子供部屋は必要ありません。小学校低学年までは、母親のいるリビングで過ごす子供がほとんどだからです。

しかし、中学生から独立までの期間には、自分の時間を持ちたいと思うようになるでしょう。男の子と女の子であれば、それぞれ独立した部屋を望みます。そのような生活を考えると、幼児から小学工程学年の期間、小学校高学年から独立までの期間、子供の独立後の期間に合わせて、同じ空間を違う方法で使えます。

例えば、小学校低学年まではリビングと繋がっている子供の遊び場、子供部屋が必要になった時期には、間仕切りやドアをつけて人数に合わせた数の子供部屋、子供が独立後には、リビングと繋げた小上がりの和室、結婚した子供夫婦と一緒に暮らすことになれば、2世帯住宅など、様々に変化させることができます。

また、引退後、高齢になり、夫婦のどちらかが車いすや介護が必要な状態になった時にも、間取りの柔軟性があれば、バリアフリーにしやすいことも大きなメリットです。せっかく長持ちする住宅に住んでも、暮らしにくい家になってしまえば、住み替えや建て替えが必要になってしまいます。さらに、家を売却する場合にも、間取りが変えやすさは、資産価値を上げる条件の一つでもあるので、有利な条件で売却できます。このようなことを可能にするスケルトン&インフィルとはどのような手法なのでしょうか?

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構造躯体と内装を分離させるスケルトン&インフィル

 

 

 

 

 

 

住宅の耐震性を支えるのは、構造躯体です。スケルトンとは構造躯体のこと、インフィルは間仕切り壁など内装のことです。構造躯体の部分と内装の部分は、耐久性が大きく異なります。その為、構造躯体と内装を分けることが,外側は、大きな地震や台風に耐えられる強さを持ち、内側は変化に対応できる柔軟さを持つ家、つまり長期間に渡り安全に有効に使える家を作るという考え方に基づく建築の方法です。

通常の家ではリフォームが大掛かりな工事になってしまう理由は、家の中にある壁も耐震性を支える働きをしているからです。家の中にある壁には、間仕切りだけの働きをしている間仕切り壁と、内部に耐震性を支えるは筋交いが入っている耐力壁があります。リフォームの為に筋交いのが入っている間仕切壁を取り外せば、家は支えきれなくなってしまいます。間仕切りだけの壁を外してもリフォームの内容に制限がでてしまいます。さらに間仕切りだけの壁であっても、壁を外せば、それに伴って床の張替えが必要です。もし、筋交いのある間仕切壁を取り外すとなれば、天井を壊し、筋交いと梁を作り直さなくてはならず、建て替えに近い大掛かりな工事になってしまいます。

スケルトン&インフィルは、内部の壁は完全に間仕切りだけの壁で、外側の構造躯体だけで家を支えるという手法です。その為、床や天井を壊さずに間仕切壁をつけ足したり取り外したりできるのです。また、このような手法の場合、床下の空間もがらんどうなので、電気や給排水の設備の改修がしやすいという良さがあり、水回りにリフォームも通常の住宅より容易です。

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スケルトン&インフィルを実現する為の条件

スケルトン&インフィルを採用する為には様々な条件があります。

耐震性

柱と梁だけで広い空間を支えられる高い耐震性が求められます。スケルトン&インフィルは、マンションや商業ビルなどの鉄筋コンクリート造や鉄骨造に採用されている方法です。昭和に建設された古い団地の再生やマンションのリノベーションができる理由はここにあります。

反対に、スケルトン&インフィルを在来木軸構法で採用した場合には、耐震性能が著しく低下してしまう恐れがあります。なぜなら在来木軸構法の家では、外壁だけではなく、家の中の壁にも耐震性能を支える働きをしている壁があるからです。

間取りが自由に変えられることに魅力を感じるが、木の家に住みたいと思う方は多いと思います。マンションではなく戸建ての家を建てようと思った理由が木の家に住みたいからという方もいるでしょう。木の家は健康に良いことに加えて、建築費が抑えられるという面もあります。そして、SE構法であれば、木の家でこの手法を実現することができます。

SE構法とは、化学的な根拠に基づいた構造計算と、構造計算に基づいて加工された強度の高い建材で家を建てる方法です。阪神淡路大震災で、多くの木造住宅が倒壊してしまったことを発端に、大地震でも絶対に壊れない木造住宅を目指して、SE構法として開発されました。阪神淡路大震災での検証を基に研究がすすめられた結果、阪神淡路大震災以降に発生した日本国内での大きな地震において、SE構法の家は1棟も壊れなかったという実績があります。

耐久性

木材には、鉄骨と違い、湿度によって腐朽する恐れがあります。その為、SE構法では、在来工法で使われている無垢材ではなく、確実な強度を確保する為に、乾燥の度合いに応じて化学的な計算の基に張り合わされている構造用集成材が使われています。

断熱性と気密性

間仕切壁の少ない家ということは、空間の広い家ということです。空間が広ければ広いほど、冷暖房の効率は低下します。その結果、冬寒く夏暑い家、室内環境の悪い家になってしまいます。それ防ぐ為に必要な性能が断熱性と気密性です。床、壁、屋根、窓からの熱の流入と流出を抑える断熱性と気密性が必要です。

住宅設備の改修、補強のしやすさ

電気、ガス、水道などは、家の構造躯体に比べて寿命の短い住宅設備です。その為、住宅のコンデイションを良好に維持する為には、これらの住宅設備のメンテナンスが容易である必要があります。

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スケルトン&インフィルと長期優良住宅の相性

 

 

 

 

 

 

長期優良住宅とは、孫の代まで良いコンデイションで長く住まえる家です。家を建てる為には、多額な費用がかかります。多額な費用がかかるにも関わらず、日本では一世代ごとに家を建てることが普通に行われています。子が親の建てた家に住まわない理由は、老朽化や地域的な利便性の悪さなどもあげられますが、最も大きな理由は暮らしにくさではないでしょうか?

日本人の暮らし方は、日に日に変化しています。もしかしたら数年後にはグーグルのコマーシャルに出てくるようなAIとインターネットの機能を使ったIoT住宅で暮らす家族が増えるかもしれません。どんな変化であれ、暮らし方の変化に対応しない家は暮らしにくい家になってしまうでしょう。暮らし方の変化に柔軟に対応できる家であれば、暮らしにくい家にはなりません。

もし、親の建てた家で快適に暮らせるならば、子供の経済的な負担は激減します。また、環境的な観点から考えても、大量の廃材を出さずに済みます。ましてや、都心の狭小住宅であれば、地域的な利便性の悪さはありません。ライフスタイルの変化に対応できる家であり、耐震性、断熱性など住宅性能の良い家であれば、何年経っても快適に暮らせる家であり続けられます。

長期優良住宅として、国が定めている基準には、耐震性、耐久性、断熱性など、様々な基準がありますが、スケルトン&インフィルは、その中のいくつかの基準を満たしています。バリアフリーにできること、ライフスタイルの変化に対応できることという基準です。この2つは間取りの柔軟性にかかっているからです。さらにSE構法との組み合わせでその他の基準である耐震性、耐久性、メンテナンスの容易性を満たすことができます。

これらの基準を満たせば満たすほど、家の資産価値は高くなっていきます。ライフスタイルの変化に適応していつでも快適な暮らしができる家であるとともに、売却する際には、有利な条件で売却できるということです。長期優良住宅として認可されれば、減税の対象にもなります。

時代の変化、ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる家、地震に強い家、住宅の性能が低下しない家は、長期間に渡り住まえる家です。家を建てる際には、外観やインテリアだけではなく、住宅の性能に対しても目を向けることが大切です。

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HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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