制震と免震の違いとは?それぞれのメリットとデメリットを解説します

家を建てる上で、地震に対する安全性はだれもが気になる点でしょう。
しかし、地震に対する備えにも様々なやり方があります。
そこで今回は、制震と免震をそれぞれの特徴とメリット、デメリットを含めて解説します。

□制震ってなに

制震とは、地震が起こったときに、その揺れを建物の構造が吸収することを指します。
建物の中に「制震部材」と呼ばれる特殊な部品を取り付けることによって、地震が起こった際は、その部材が揺れを吸収し、別の熱などの別のエネルギーに変換することで、家全体の揺れる大きさを小さくします。
この方法は、特に階数の多い高層ビルなどで大きな効果を発揮します。

□免震ってなに

免震とは、地震が起こった場合に起こるダメージが家だけでなく、家具などにも伝わらないようにすることを目的として開発されました。
免震構造は、家の内部に特殊な構造を持たせるのではなく、建物と地面の間に「免震装置」を設置することで、地震の揺れが建物に伝わらないようにします。
免震装置は、アイソレータと呼ばれる土台、揺れを吸収するゴムとダンパーの3つで構成されており、それをうまく組み合わせることで建物を地震から守ります。

□制震構造のメリットとデメリット

では、この制震のメリットとでデメリットについて確認していきましょう。
メリットは大きく3つあります。
1つ目、「繰り返す揺れに強く、建物の倒壊を防ぐことができる」。
制震構造は、揺れを吸収することで、地震の振動を建物が耐えられる範囲まで小さくします。
そのため、建物が破損するリスクを抑えるでしょう。
日本で最も普及している地震への備えは耐震構造と呼ばれ、地震が起こったときに「建物は揺れるが壊れない」構造になっています。
この構造は大きな地震が複数回起こったときは耐えることができません。
しかし、制震構造は、建物が持つ主要な構造部分へのダメージを発散させるので、繰り返し起こる余震に対しても大きな効果を発揮し、建物が倒壊することを防ぎます。
2つ目、「免震構造よりも工事期間が短い」。
建物に制震構造は免震構造よりも工事が簡単で、建物の柱や梁にダンパーを設置するだけで済みます。
そのため、後付けで導入する場合、それにかかる工事期間はおおよそ10日ほどで済みます。
3つ目、「地震後のメンテナンスが不要で、地震以外の揺れでも効果を発揮」。
基本的にダンパーを取り付けた後は、メンテナンスする必要がない場合や、定期的なメンテナンスも免震構造と比べて簡単で手間がかからないことがほとんどです。
また、この制震構造は地震以外の揺れに対しても有効で、台風による強風で起こる揺れを抑える効果も持ち合わせます。
次に3つのデメリットも確認していきましょう。
1つ目、「建物の地盤が弱いと効果を発揮しにくい」。
建物自体は、地面とくっついています。
そのため、どれほど建物が揺れに強くあっても、地盤が弱い場合は免震構造が意味を持ちません。
2つ目、「建物によって向き不向きがある」。
制震構造はすべての建物で一定の効果を発揮するということはありません。
特に設置の関係上、狭小地での後付けの設置は難しい場合があります。
3つ目、「免震構造よりも揺れる」。
制震構造は揺れを吸収し、振動を小さくすることを目的として開発されました。
そのため、免震構造と比較したとき、地震が起こった場合の揺れは制震構図のほうが大きくなります。
小さくはなりますが、地震の揺れは伝わるので、その揺れに対する備えは必要でしょう。
導入した場合でも、安心しきらず家具の固定といった対策は不可欠です。

□免震構造のメリットとデメリット

メリットには、制震と同様に2つあります。
1つ目、「地震に対しては最も優れた対策であり、ほとんど揺れない」。
免震構造は、そもそも地震の揺れを建物に伝えません。
そのため、この構造は現状最も効果的な対策であり、導入できた場合は建物の揺れや変形、破損といったダメージを最小限にしてくれます。
2つ目、「二次被害を防ぐ」。
地震が起こったとき注意すべきは、建物へのダメージだけではありません。
家具の転倒やガラス片などの二次被害にも注意する必要があります。
しかし、免震構造は、そういった2次被害への対策としても大きな効果を発揮します。
次はデメリットについて確認していきましょう。
1つ目、「メンテナンスが必要」。
免震構造は、制震構造とは違い定期的なメンテナンスが必要となります。
そして、そのメンテナンスも専門の業者を呼ぶ必要があり、部品の交換も定期的に行わなくてはならないため、制震構造と比べ手間がかかります。

□震度別!免震構造の揺れの感じ方

免震構造を施していると、地震の被害が小さくなりますが、震度4〜震度7までの実際に起こり得る震度ごとでは、免震構造にどのような効果があり、免震構造がない場合との被害の違いはわからないものです。
ここでは、震度別に免震構造が施されている場合の被害の可能性についてご紹介します。
地震は誰もコントロールできません。
そんな地震が多い日本だからこそ、免震構造をしっかりと理解することで少しでも被害が小さく収まるように工夫することが大切です。

*震度4

免震構造では、体感として、揺れの弱い地震のように感じます。
部屋の電球が小さく揺れる程度です。
しかし、免震構造が施されていない場合は、本棚や食器棚が倒れることがあります。

*震度5弱と5強

免震構造でも震度5を超えると、地震にすぐに気づく方がほとんどです。
電車に乗っているときのような揺れを感じ、震度4で小さく揺れた電球が大きく揺れます。
基本的には、安定して設置されているものは倒れることはありません。
しかし、免震構造が施されていない建物だった場合は、本棚や食器棚は倒れてしまいます。

*震度6弱と6強

震度6を超えると、そのまま立っているのは危険と感じ、支えになるところへ移動したくなるほどの揺れを感じます。
しかし、本棚や食器棚は倒れずに、テーブルにある食器も落下することが少ないです。

*震度7

震度7では、支えがあれば何とか歩けますが、移動することは危険なほどの揺れです。
震度7でさえも本棚や食器棚が揺れたとしても倒れることは少ないです。
しかし、柱や壁など建物にひび割れをする可能性があります。

免震構造によって、震度7でさえも本棚や食器棚が倒れることは少ないですが、免震構造を施していなければ、震度4で本棚が倒れる危険があり、震度5強以上で倒れてしまいます。
免震構造の施された建物はやはり地震に強く、また被害を小さく抑えてくれます。

□免震構造の注意点とは?

免震構造は、地震の横揺れには強く、本棚や食器棚などの倒壊といった被害を抑える効果があります。
一方で、縦揺れの地震には対応していないという点に注意が必要です。

しかし、被害が大きくなりやすい揺れは、横揺れで、横揺れの方が揺れている時間が長いです。
免震構造で縦揺れを支えられませんが、横揺れの被害は抑えられます。
縦揺れの場合には注意が必要ですが、被害が大きくなりやすい横揺れを抑えられるため、場合によっては有益と考えられます。
また免震構造で使われている免震装置は縦揺れがおこっても壊れないため、縦揺れによって横揺れの被害を防ぐ免震構造が壊われることはありません。

□免震や制震を組み合わせて効果的に地震対策をしよう!

免震や耐震、制震それぞれが施されていても、メリットがあったとしてもデメリットも同時に目だてしまいます。
そのため、それぞれを組み合わせることが大切です。

耐震、免震や制震を組み合わせることでそれぞれの長所を活かし、弱点を補完し合います。
日本では、地震が多いことから一定レベル以上の耐震性を持っていることが法律で義務付けられているくらい、耐震は重要なもののため、組み合わせの際には、耐震をベースにします。

1.耐震と免震

この組み合わせは、耐震の特徴である建物の頑丈さと揺れを抑える効果が高い免震の組み合わせで、耐震のデメリットであるダメージの蓄積を緩和し、揺れにくく倒壊しにくい建物になります。
さらに、耐震だけではマンションの上層階は揺れが増しますが、免震を取り入れることで上層階の揺れを抑える効果もあります。
この組み合わせが採用されている建物は、戸建てよりも大きなマンションや自治体庁舎、オフィスビル、商業施設といった建築物が挙げられます。

2.耐震と免震と制震

この3つを組み合わせることで、安全性に優れた建物にできます。
建物の強度を耐震で実現していますが、免震や制震を用いることで必要以上に柱を太くする必要がなくなります。
また横揺れに強い免震の技術を用いて揺れを最大限抑えながら、免震がカバーしきれない縦揺れや京風による揺れを抑えてくれます。
また制震を用いることで、蓄積されるダメージを軽減してくれます。
この組み合わせは、地震によるダメージを受けやすいタワーマンションや商業ビル、大型建築物といった大きな建築物に用いられます。

3.耐震と制震

地震の多い日本では、耐震基準が常に改正されています。
その結果、多くの建物の耐震化が進み、建物の耐震性は高まっています。
この組み合わせは、耐震だけでは補えない、繰り返される揺れによるダメージの蓄積を制震の技術で補い、頑丈かつダメージを貯めない住宅を実現可能にしました。
制震の小型化といった技術の進歩によって大きな建物にしか用いられていなかった耐震が戸建てでも用いられるようになっています。
そのため、この組み合わせは、現在、戸建て住宅において人気です。

□まとめ

今回は、制震と免震の特徴とメリットとデメリットについて解説しました。
家とは一度建てると、そこから何十年をともにするものです。
また、日本は地震が多い国なので、それに対する対策は必須です。
それぞれの地震対策を吟味し、ご自身にあった方法を選ぶことで、この先の数十年の安心を得られる選択をしましょう。

 

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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