地球にやさしい!パッシブデザインとは?メリット、デメリットについても解説!

地球にやさしい!パッシブデザインとは?メリット・デメリットについても解説!_main皆さんは注文住宅などをするとき、どのような事に留意してデザインしていますか?
本記事では、建築デザインの一例であるパッシブデザインについて解説していきます。

□そもそもパッシブデザインってなに?


パッシブとは、訳すと「受動的」という意味になり、総じて太陽光や風、温度などの自然エネルギーを私たちが受けて、それを利用するという意味合いになります。
パッシブデザインとは、自然エネルギーをいかに活用して自分たちの暮らしを快適にするかという概念です。

また、パッシブデザイン「受動的」の対義語として、アクティブデザイン「能動的」があることをご存知ですか。
こちらは建築の工夫による環境利用ではなく、空調設備や照明器具などの人工的な器具を活用することで生活を快適にしようという考え方です。
パッシブデザインを考えるにあたって、このアクティブデザインをいかにバランスよく共存させるかがキーポイントとなります。

*パッシブデザインの重要なポイントは?

設計にあたっての環境利用手法は、
・空調に頼ることなく内部の温度をキープする「断熱」機構
・外部からの日光による温度上昇を防ぐ「日射遮蔽」
・風通しを利用して、建物内部の温度上昇を抑え、快適な住空間を作り出す「自然風利用」
・日中の日差しを内部に取り込み、人工的な照明に頼ることなく建物の明るさを保つ「昼光利用」
・「集熱」や「蓄熱」などの機構にみられる、気温の低い冬でも外部の太陽光を利用して建物内部の温度低下を防ぐ「日射熱利用暖房」
の5つのポイントに留意して設計を行うことが重要です。

□具体的な建築事例は?


日射遮蔽・日射熱利用暖房

パッシブデザインにおける最重要事項といっても過言ではない太陽光を利用した事例として、まず「日射遮蔽」について解説します。
建築物内部の温度を決定する重要な要素として、窓から入ってくる太陽光は何と全体の熱の75パーセントを占めていると言われています。
例えば、窓の周囲にすだれや雨戸を設置したり、軒の長さを太陽の高度に合わせて調整したりすれば、太陽光を適切に遮断して季節に応じた快適な涼しさを生み出せます。

また、「日射遮蔽」と同じように日光を利用する「日射熱利用暖房」についても、窓を主に利用するという点は同じです。
例えば、太陽光を最も安定して取り入れることができる南面の窓の大きさや、取り付ける向きなどを調節することで、安定的に太陽の熱を内部に取り入れられます。

このようにして取り入れた熱を逃がさないように通風も併せて工夫し、保温性の高い素材を使用するなどの構造以外の試みも欠かせません。

*自然風利用

次に、屋内の気温を調整して快適性を保つ重要な役割を担う「自然風利用」については、主に気温を下げ、湿度高くしすぎないようにするというのが目的です。
しかし、具体的には高いところにある窓や吹き抜けを利用して通風を考えるのが一般的です。

また、冷たい空気は空間の底部にたまり、温かい空気は空間上部に上っていくという風の特性を利用して、空気の出入り口を調節するなどの立体的な工夫も必要です。
地域や季節による風向きの変化の特性などをよく理解したうえでデザインに臨むのが望ましいでしょう。

*昼光利用

日光を最大限に利用して屋内の明るさを調節する「昼光利用」の条件として、リビングやキッチンなどの大きい面積を持った多目的空間はできれば2面以上の窓を備えていることが望ましいです。

また、外部から取り入れた日光をより効率よく、屋内の多くの空間に届ける手法にも、窓の角度や形、大きさなどが深く関係してきます。
日射は一日で常に変化し続けるものであり、特定の時間限定で照射される箇所や、長時間日光が当たり続ける場所などを把握して設計に臨むと良いでしょう。

*断熱

冬に特に重要な役割を果たす「断熱」の主な目的は、取り入れた太陽光によって獲得した熱をいかに外部に逃がさないかがカギとなります。
また、断熱性を重視しすぎると夏に熱がこもるため、いかに保温性と放熱性のバランスを保つのがキーポイントとなります。

具体的な手法としては、断熱で最も大きな役割を担う、壁の素材を保温性の高いものにする、屋内全体の隙間をなくして気密性を高めるなどの方法が挙げられます。

□パッシブデザインのメリットは?


パッシブデザインとは、太陽光や風などの自然の力を取り入れることで、エアコンの使用を抑えても快適に過ごせる住宅デザインのことを指します。
「自然のエネルギーを活かして快適な家を作り出す」パッシブデザインの理念は、ドイツの物理学者であるファイスト博士によって1991年に提唱されました。

ファイスト博士によって掲げられたパッシブデザインのポイントは、次の6つです。

・家の断熱性能を高める
・気密性を高めて室内の暖気を漏らさない
・気密性を高めて外気の影響を受けにくくする
・断熱・保温性能が高い窓をつける
・日差しの方向に配慮した窓の配置
・快適な室温を維持しながら換気できる熱交換換気の導入

電気代がどんどん高騰しているなか、電気代が削減できたら嬉しいですよね。
パッシブデザインの住宅では、太陽光と風の力を最大限に活用するため、それが可能です。

また、自然エネルギーを取り込むため、自然を感じる生活ができます。
子供の発育にも、大人のリラックス空間としても、居心地の良い家になることでしょう。

住宅における熱の流入や流失は、屋根や壁、窓からの影響によるものです。
そのため、壁や窓のサッシに優れた断熱性の使用や、気密性を向上させられる設計を施すことで断熱性が向上します。
断熱性が高いと、夏は外の暑い空気を室内に入れず、冬には室内の暖かい空気を逃しません。
1年中過ごしやすい家を造るためには必要不可欠な効果なのです。

とはいえ、夏の太陽光は断熱効果では対処できません。
太陽光は軒を活用し、遮蔽しましょう。
軒とは、屋根の先端の出っ張っている部分のことをいいます。
深さを調整することで、外壁を紫外線から守るだけでなく、日射遮蔽も実現できます。

夏場にエアコンを使わずに涼しく過ごすためには、自然の風を室内へ取り込む工夫も必要です。
比較的温度が低い北風が入りやすい方向に窓を設置することや、吹き抜け構造を利用し通気の道を作ることで、取り込んだ風が上から下へ通り抜け、住宅全体に風を循環させられます。

夏の日射遮蔽とは逆に、冬場は日射を最大限に取り入れ室内の温度を高めます。
その1つの方法に植栽があります。
特に落葉樹は効果的で、夏には葉が生い茂って日射を遮り、冬には葉が枯れ落ちるため太陽光が差し込みます。

また、パッシブデザインは室内の温度を快適にするだけでなく、明るさも調節し照明のコストダウンを図ることも目的の1つです。
大きな窓を付けたり、天井に窓を設置したりすることで、快適な明るさを手に入れましょう。

このように、夏は太陽光を遮蔽し、自然の風を立体的に通すことが可能です。
逆に冬は太陽光を室内に取り込み、断熱効果で熱を逃がしません。
そのため、1年中快適に過ごせるのです。

□パッシブデザインの家で失敗しないためのポイント


パッシブデザインの課題点として、第1に地域の地形や気候条件などによって建築の難易度や手法が変わってくるということです。
また、1つの季節に特化した構造は、それに相反する季節条件のものだとかえって快適性を損なうという点も大きな課題点といえます。

さらに、日光や風通しを最大限に利用するのは良いですが、屋内の窓や通風孔などを増やしすぎると防犯、防災上のリスクも高まるということも念頭に入れておかなければなりません。

□パッシブデザインのデメリットは?


ここまでメリットばかり紹介してきましたが、メリットがあればデメリットもあるのが世の常です。
失敗をしないためにも、デメリットは知っておいて損はありません。

パッシブデザインのデメリットは次のようなものがあげられます。

・建築費用が高くなる
・地域に合わせたオーダーメイドで建てる必要がある

それぞれのデメリットについてご紹介します。

*建築費用が高くなる

メリットでもご紹介した通り、断熱効果を高める必要や窓を大きくするといった工夫があるため、一般的な建材より高いものを使用します。

しかし、生活していくうえで必ずかかる光熱費を減らせるため、コストパフォーマンスは高いといえるでしょう。

同じような対策をした家に、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)もあります。
ZHEは、太陽光発電をはじめとした設備システムを導入することで、エネルギーの生産と消費をゼロにすることを目的にしているため、パッシブデザインとは異なりますのでご注意ください。

*地域に合わせたオーダーメイドで建てる必要がある

パッシブデザインで家を建て光熱費を抑えるためには、建てる地域の気候の特徴や自然エネルギーを最大限に活かすことが必要です。
そのためには、地域に合わせた家をオーダーメイドで建てなくてはなりません。

その結果、希望の間取りや外観の家が建てられない場合もあります。
その地域に合った家を建てられるメリットが、デメリットにもなりえるのです。

しかし、事前に建てたい地域の季節ごとの特徴や気候を調べ、計算したシミュレーションを行うことで希望に近い家を建てられるでしょう。
また、パッシブデザインに強いハウスメーカーを選ぶことも重要です。

自分の理想はどのような家なのか家族で言語化し、ハウスメーカーに伝えることで、ハウスメーカーとの考えを一致させることが可能です。
そのときに、パッシブデザインのことだけでなく、外観の色や間取りなどの具体的な要望も伝えておくと、より理想の家を造り上げられるでしょう。

パッシブデザインは、自然が好きな方にはもってこいのデザインです。
ぜひ一度ご検討ください。

□まとめ


今回は建築におけるパッシブデザインの概念について解説しました。
これから注文住宅を考えている方、省エネを重視したい方などにおススメの建築スタイルと言えます。
今回の記事が、皆さんのパッシブデザインに対する関心を高めるきっかけになれば幸いです。

 

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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