心と身体の健康を維持する為には、太陽の光が必要です。確かに、太陽の光に含まれる紫外線は人間の身体にダメージを与えます。そして、オゾン層の破壊によって地球に届く紫外線の量が増えている為、紫外線の害も深刻です。しかし、明るさや暖かさを届けてくれるのも太陽の光です。

狭小住宅には、周囲を住宅やマンションに囲まれているという環境や、限られた敷地内で居住面積を確保する為に2階建て、3階建てなど縦に長い家になるという事情があります。その為、太陽の光を採りこみにくくなるので、日当たりが悪い家になってしまう恐れがあります。利便性の良い土地に住むなら、日当たりが悪くても仕方がないのでしょうか?

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日当たりの悪い家の暮らしにくさ

昼間は仕事で家にいない、帰宅は夜遅いという生活をしているから、日当たりは気にならないという考え方もあります。しかし、日当たりの悪い家での暮らしは、長く続けると様々な弊害が出てきます。

日当たりの悪さが室内環境に与える影響

冬の時期に日差しで部屋が暖められないので、室温が上がりません。したがって暖房費もかさんでしまいます。

日当たりの悪さが健康に与える影響

  • 体内時計がリセットされない

太陽の光には、体内時計をリセットする働きがあります。1日の周期は24時間ですが、人間の身体は25時間周期なので、その差を調整する必要があるのです。体内時計は、免疫力、ホルモン分泌、自律神経、血圧など健康維持に必要なこと全てに関わっています。その為、体内時計が正常に働かないと、健康に悪影響が出ます。具体的には、生活習慣病の他に、がん、自律神経失調症、睡眠障害、うつ病など、様々な障害の原因になってしまいます。 病気にならなくても、常にだるさを感じる、食欲がなくなる、集中力が続かないといった状態になってしまいます。

  • 睡眠の質が低下し、生活のリズムが調えられない

私達が健康を維持する為には睡眠の質が重要なポイントです。質の良い睡眠には、生活のリズムを整える、脳と身体が受けた昼間の疲れを癒す、生活習慣病を予防する、自然治癒力を高めるなどの効果があります。質の良い睡眠とは、寝つきが良く、寝起きがすっきりしている睡眠です。そしてこのリズムを作るのが太陽の光による体内時計のリセットなのです。その為、日当たりの悪い家で生活していると、朝起きられず、夜眠れなくなり生活のリズムが調えられなくなってしまいます。あまりに長期間日当たりの悪い環境で過ごすと、睡眠相後退症候群など、深刻な睡眠障害に繋がる恐れもあります。なぜなら、太陽の光を浴びるタイミングや、朝と夜の境目がはっきりしない環境がこの病気の原因ではないかと考えられているからです。

日当たりの悪い家は、どんなに便利の良い場所に建っていたとしても、快適な家にはなりません。そして都心部には、日当たりの悪い狭小住宅があることも事実です。利便性の良い土地で、日当たりの良い快適な暮らしを手に入れる為には、どのような住宅が必要なのでしょうか?

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光をたくさん採り入れる狭小住宅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日当たりの良い狭小住宅とは日当たりの良さを確保する為に、様々な工夫が施された家です。具体的に陽当たりを良くする為の工夫の方法とその方法のメリット、デメリットについて確認していきましょう。

吹き抜け

狭小住宅での日当たりを確保する為に使われる方法の一つが吹き抜けです。吹き抜けは下の階と上の階を繋げるので、日差しが下の階にまで届きます。階段や窓と組み合わせによって、より効果が高まります。特に冬は日差しが入りにくくなるものですが、吹き抜けと窓の組み合わせ方で、明るく暖かい環境が作れます。吹き抜けの良さは日当たりを良くすることに加えて、視覚的に狭小住宅の狭さを開放感のある空間に変える効果もあげられます。

ただし、断熱性の低い家では、冷暖房の効率が落ちてしまいます。また、構造躯体の強度が高く、どんな地震が来ても揺るがない耐震性を持つ家でなければ、吹き抜けはつけられません。

スケルトン階段

踏板と桁だけで構成されているスケルトン階段には、踏み込み板といわれる下の段と上の段の間にある板がないので、光を通します。その為、日当たりを遮りません。その他にも、視覚的な圧迫感がない、風通しがよくなるというメリットもあります。特に吹き抜けと組み合わせたり、踏板に半透明の建材を使ったりすると、より採光量を増やせます。

ただし、小さな子供や高齢者がいる家庭では、隙間から落下する、踏み込み板がないので踏み込み過ぎて怪我をするなどのデメリットもあります。このデメリットは、踏板の奥行を深く、段差を浅くする、手すりをつけるなどでリスクを減らすことができます。狭小住宅の場合は、段差を浅くすると、広い面積が必要になってしまうので、折り返し階段や螺旋階段にすることもあります。

リビング階段

スケルトン階段をリビングに配置すると、階段下の部分も有効活用できる、リビングの空間が広がり開放的な雰囲気になるとう面はメリットとして考えられます。ただし、リビングとダイニングがつながっている場合、調理のニオイが2階にまで広がってしまう、リビングの物音は2階に、2階の物音は1階に響きやすくなるという問題も発生します。また、吹き抜けと同じように断熱性が低い家では、冷暖房の効率が落ちてしまいます。

スキップフロア

1階と2階、2階と3階の間に、中2階、中3階を作るスキップフロアは、間仕切壁を減らすので、取り込んだ光が、家の奥まで届きやすくなります。狭小住宅では、限られた敷地の中で十分な居住面積を確保できるという面もあります。壁がない分、広々とした開放的な雰囲気が生まれます。

窓から取り込んだ光を下の階にも届かせる方法として、床の一部を床用の強化ガラスや床用のガラスブロックにする方法もあります。

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日当たりに最も影響を与えるは窓です。窓は、光と風を取り込み、窓が面している位置によっては、気持ちの良い景観を見せてくれます。しかし、それと同時に、道路や隣家からの視線が気になる場所、夏の暑さや冬の冷気が入り込んでくる場所、暖房の暖かさを逃がしてしまう場所でもあります。

窓のタイプ、位置、大きさと組み合わせ方によって日当たりだけの良さではなく、風通しの良さ、プライバシーの確保、使い勝手が変わってきます。

 

  • 窓の位置

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トップライト 窓の中で最もたくさんの太陽の光を採りこめる窓です。ただし、夏場には日差しが強すぎて室温が上がる、内装や家具が紫外線で日焼けするなどのデメリットもあります。

ハイサイドライト 頭より高い高さの位置につける窓です。光を均等に取り込めます。外からの視線が気になる面に窓をつけなくてはならない場合でも、プライバシーが確保できます。

ローサイドライト 低い位置につける窓です。光は部屋の奥まで届きませんが、落ち着いた雰囲気を作ります。

  • 窓の形

横長窓 横に長い窓です。ハイサイドライトと横長窓の組み合わせを南面につけると、プライバシーを確保しつつ、1日中光が取り入れられます。ただし、視線が入る位置に横長窓をつけると、外部からの視線が気になります。

縦長窓 縦に長い窓です。横長窓よりもプライバシーが確保しやすく、光も採り入れやすい窓です。

  • 窓の開閉タイプ

引き違い窓 横に滑らせて開閉する最も一般的なタイプです。2枚の窓が同じ大きさのタイプの他に、片方がFIX窓になっている片引き窓、中央がFIX窓になっている両袖片引き窓があります。中央にフレームが来ない片引き窓や両袖片引き窓は、眺望が楽しめます。

片上げ下げ窓 上下にガラスが並んでいて、下のガラスを動かして開閉する窓です。

折りたたみ窓 窓を折りたたんで開口部を全て開けられるタイプです。大開口に向いています。

たてすべり出し窓 室内側にすべりだして開くタイプです。引き違い窓では風が採り込めないような場所につけると、家の外側に沿って吹く風を採り込めます。

横すべり出し窓 室外側にすべりだして開くタイプです。窓ガラスがひさしのような役目をするので、小雨程度なら窓を開けておけます。

ドレーキップ窓 窓が内側に倒れ、上部が少しだけ開くタイプの窓です。

  • 窓の大きさ

大きい窓は、たくさんの光を採り入れることができます。そしてそれと同時に、室内を広々と感じさせる視覚的な効果も生みます。しかし、断熱性能の低い窓であれば、冷暖房の効率が悪くなり、夏は暑く冬は寒い家になってしまいます。また、吹き抜けと同じように、高い耐震性を備えた構造の家でなければ、大きい窓は取り付けられません。

  • 窓が面する方向

南向きの窓 夏は強い日差し、冬は温かな日差しが長時間採り込める窓です。

東向きの窓 朝日が入ってきて、午前中いっぱい光が採りこめます。

西向きの窓 午後から日差しが入ってくる窓です。

北向きの窓 直射日光が入ってこない窓です。トップライトにすると、光をたくさん採りこめます。

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日当たりの良い家にする為の条件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽当りを確保しにくい狭小住宅を、光が降りそそぐ暖かく快適な家にする為には、吹き抜け、スケルトン階段、スキップフロア、光を通す床、窓を、家の向きに合わせて効率よく組み合わせる必要があります。

しかし、どのような住宅であってもこれらの要素を取り入れられるわけではありません。住居の構造躯体に充分な強度があることが、吹き抜けやスキップフロア、大開口などを地可能にします。

在来工法の木造住宅で、これらの要素を全て採用すると、耐震性に問題が出てしまう恐れがありますが、SE構法の家や鉄筋コンクリート造の家であれば安心です。木造の家で吹き抜けや大開口などの組み合わせを取り入れたい場合には、高い耐震性を持つSE構法が向いています。

SE構法とは、化学的な根拠に基づいた構造計算と、構造計算に基づいて加工された強度の高い建材で家を建てる構法です。吹き抜けや大開口などの耐震性に影響を与える設計を、空間の自由度に耐えられる構造を造るSE構法が実現させます。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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