都市部の狭小住宅では周囲を家やビルで囲まれている為、日当たりが悪く、暗くて寒い家になってしまいがちです。それでも、地理的な利便性の良さに魅かれて、都市部の狭小住宅を好む人は少なくありません。

「日当たりが悪いのは仕方がない、断熱性を高めれば日が当たらなくても暖かいだろう」

「暗くても照明を工夫すれば何とかなる」

暮らしやすさと利便性を秤にかけて土地を選ぶと、地理的な利便性の良さに魅かれる人は都心部の狭小敷地、広々とした家に魅かれる人は郊外の住宅街になってしまうのが現状です。また、もともと住んでいた土地が狭小敷地で、長年親しんできた地域なので同じ場所に建替えたいという人もいるでしょう。

そのような狭小敷地に家を建てることを選んだ場合、日当たりの良さをあきらめずに、暖かく、明るい快適な家、暮らしやすい家を実現する為には太陽の光の採り入れ方と、採り入れた光の通り道を工夫する必要があります。そして太陽の光の量は、家の向きによって変わってきます。

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家の向きと日当たりの関係

道路に面している方角と、周囲の家やビルの方角によって日当たりの良さは異なります。多くの場合は、道路に面している方角に玄関を作りますが、その他の居室は、日当たりと風通し、生活動線や家事動線などを考慮して間取りを決めていきます。

単純に考えると、日照時間が長い南側が日当たりの良い方角ということになりますが、東西南北それぞれの方角には良い面もあり、難点もあります。

  • 東向き 朝、最も早く明るくなります。
  • 西向き 冬場は遅くまで陽射しが入るので、朝は寒いですが午後は他の部屋より暖かく過ごせます。夏場は午後、強い陽ざしが差し込む為、室温が高くなります。
  • 南向き 陽当たりが良いので明るく、冬場は他の部屋ほど室温が下がりません。夏は朝早くから室温が高くなってしまいます。
  • 北向き 陽当たりが良くない分、夏場は涼しく過ごせますが、冬は室温が上がらず寒く、梅雨時はカビが繁殖しやすくなってしまいます。

このような家の向きと日当たりの関係を活かした間取りが日当たりの良い部屋を実現するわけですが、狭小住宅の場合、3方向からの太陽の光は家やビルによって遮られています。その為、敷地条件に合わせて建てる家がどのような向きになったとしても、日当たりを確保する必要があります。その為に考えられる方法について考えていきましょう。

太陽の光を取り入れる窓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の大きさ、開閉のタイプ、窓の位置によって採光量は変わってきます。それに加えて、窓が面している周囲の環境によっても採光量は変わります。

快適に生活する為には、一定以上の日当たりが必要です。その為、建築基準法には、戸建ての住宅の居室への採光量が確保できるだけの開口部の大きさが定められています。

しかし、それを満たしていたとしても、必ず十分な採光ができるわけではありません。隣家の窓と向かい合っていれば、お互いに窓は開けられず、シャッターやカーテンは閉めっぱなしという状況になってしまう恐れがあるからです。そうなれば、当然日当たりの良さは確保できません。

周囲の環境との兼ね合いで大開口の窓をつけられないことの多い狭小住宅で、太陽の光を採りこめる窓としては、トップライトとハイサイドライトが有効です。

トップライトは天井から太陽の光を取り入れる窓、ハイサイドライトは頭より上の高さにある窓なので、プライバシーを確保しつつ、太陽の光を採り入れ、室内を明るくできます。
3階建ての住宅であっても、2階部分より3階部分の床面積が小さければ、2階にも設置できます。

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吹き抜けとスケルトン階段とスキップフロア

 

 

 

 

 

 

3階建てで3階にしかトップライトをつけられない家の形であっても、トップライトと吹き抜けやスケルトン階段を組み合わせると、家の中にたくさんの太陽光を採りこむことができます。スケルトン階段は、骨組みと踏板だけで構成されている階段です。その為、光と風を通すので、明るさや風通しの良さを妨げません。

さらに、スキップフロアを取り入れれば、間仕切りや廊下を減らせるので、取り込んだ太陽の光が家の中に行き届き、明るく暖かい場所が家の中に増えます。

でも、縦の空間を繋げてしまうと、夏は上の階が暑く、冬は下の階が寒くなってしまうのでは?と思われるかもしれません。しかし、開口部、屋根、壁、床の断熱性を高めれば、間仕切りが少なく縦に繋がっていることが却って狭小住宅の室温管理の強みにできます。

大邸宅で家中の室温を一定に保つ為には、セントラルヒーテイングが必要かもしれません。でも、狭小住宅では断熱性を高めることに加えて、サーキュレーターやシーリングファンを設置し、空気を動かすことで暖房の暖かさ、エアコンの涼しさを家中に循環させられるのです。

2階にリビングがある場合、リビングから続くバルコニーは、室内に明るさを採りこみますが、下の階に対しては庇のようになってしまい、採光を妨げてしまいます。そこでバルコニーの床をグレーチングにすると、階下の部屋への採光を妨げる率が減少します。

また、トップライトをつけた部屋の床の一部にグレーチングを使っても、階下の部屋に光を届けられます。その他には、2階や3階の窓の下の部分の床にガラスブロックや床用強化ガラスをはめ込む方法もあります。透明な強化ガラスであれば、下の階から見上げた時に景観が良くなるよう、鉢植えを置くなどインテリアの一部として楽しめます。床用ガラスブロックであれば、光は通しますが、半透明なので透明のガラスが床にあると、不安定な気分になる人には、安心感があります。ガラスブロックは見た目も美しく、シャープな雰囲気が作れますが、普通の床にするよりコストが高くなってしまうという難点があります。

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中庭

 

 

 

 

 

 

狭小住宅なのに中庭を?と思われる方が多いと思いますが、間口が狭く、奥に長い敷地では、コの字型の中庭が採光の手段として有効です。狭小住宅では採光の為に大開口を設置しても、周囲からの視線が気になり、ブラインドを下ろしたままになってしまうというようなことも起こります。

でも中庭に面した窓であれば視線を気にせずに、どの方角に面した窓からも、時間に応じて太陽の光を採りこめます。中庭に面した窓は、風通しがよく、明るさと暖かさのある部屋を実現します。間取りの作り方で動線の悪い家になってしまう恐れもあるので、ウッドデッキを作るなど中庭を横切れる工夫が必要です。

敷地の形によっては家の中心にごく小さなロの字型の中庭を作る方法もあります。その中庭に3階まで届くような樹木を植えると、光を採り入れるだけではなく、4季折々の風情を楽しめます。中庭に向けた浴室を造れば、入浴中に景観を楽しめます。

窓は大きければ大きいほど太陽の光を採り込みますが、熱の出入りも大きくします。明るさに加えて、快適な冬の暖かさ、夏の涼しさを確保する為には、断熱性能の高い窓にする必要があります。

明るい家は、暖かく、家族の心と身体を健康にします。狭小敷地だから日当たりが悪くても仕方がないとあきらめずに、明るい家を建てましょう。

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HOPEsの建てる明るい狭小住宅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『北側のやさしい光を最大限活かしたい』そんなご家族の強い想いで実現した、“吹抜け北側採光の家”です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、充分な太陽の光を採りこめる日当たりの良い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

ご紹介した施工例以外にも浴室、脱衣所、洗面所の参考になる施工例はたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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