10坪前後の狭小な土地に建てる狭小住宅には、一般的な30坪前後の住宅とは違った特徴があります。都心での暮らし以外は考えられないが、マンションには住みたくないと考えている人にとって、狭小住宅は唯一の選択肢とも言えます。狭小住宅の特徴をつかみ、暮らしやすい空間を実現する家づくりに役立てましょう。

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狭小住宅 デザインの特徴

住宅の外観デザインには、和風スタイル、北欧スタイル、アメリカンスタイル、フレンチスタイルなど様々あります。敷地も建坪も広い家では、凝った外観にしても、居住面積が圧迫されません。その為、それぞれのスタイルに合わせて、面の多い屋根、床面積の違う1階と2階の組み合わせ、前面に広く張り出した玄関ポーチ、下屋、広いバルコニーなどが採用されます。

狭小住宅の場合は、限られた敷地内で、十分な居住面積を確保しなくてなりません。その為、1階と2階、3階建ての場合には1階から3階まですべてに同じ床面積を持たせる必要があり、細長い箱のような形状にします。このシンプルな細長い箱型に、屋根の形、外壁建材のテクスチャー、窓の大きさと開閉タイプや位置、バルコニーやルーバーなどで、デザイン性を持たせます。したがって、狭小住宅では、居住性を併せて向上させられる外観デザインにすることが重要な課題です。

屋根 
狭小地では、隣接斜線制限や北側斜線制限などの法的な規制によって、住宅の高さが制限されることがあります。隣家や道路に日陰を作らないよう、住宅の高さを制限するルールのことです。高さが制限された分を削ってしまうと、床面積が圧迫されてしまいます。その為、そのような規制がある土地に建てる場合、制限によって、家そのものを縮小させないために、急こう配の屋根が採用されます。

外壁の建材
狭小住宅には、軽量で耐熱性、耐火性が高い為、窯業系サイディングや金属サイディングが多く使われます。窯業系サイディングは、セメントと繊維質、金属サイディングは金属を原料にして作られる建材です。金属サイディングには、ガルバリウム鋼板などがあります。どちらも、石を積んだように見えるタイプの他に、レンガやタイル、木材、塗り壁のような質感を持つタイプがあり、明るい色から濃い色まで色のヴァリエーションも豊富です。外観デザインのイメージに合わせて、サイディングの風合いや色、そして張り方を選びます。

例えば全体に同じ色調のサイディングを貼ると、落ち着いた雰囲気になり、張り出した面に濃い色を貼ると、アクセントになります。その他にも、上下の色を変える、縦や横にアクセントを入れるなど、住宅の形状とイメージに合わせて張り合わせます。


窓は、日当たりや風通し、断熱性、防音性などで、室内環境に大きな影響を与えます。特に狭小地では、外部環境と窓の関係性も重要です。室内を広がりのある空間にする為に窓からの借景を利用したり、反対に隣家や道路からの視線を遮ったりする必要があるからです。

そしてそれと同時に外観デザインにも大きな影響を与えます。外壁の面積に対して窓の大きさや数、窓の並べ方、窓の開閉方法によって、家の外観が持つ印象が変わります。

狭小住宅では、プライバシー確保のために横すべり窓を高い位置に設置する、細長い縦滑り窓を道路に向いた面に設置するなどの工夫をします。また、採光のために天窓を取り入れることもあります。これらの窓は、引き違い窓よりも気密性が高く、プライバシーが守られます。そして、住宅の外観を洗練された雰囲気にする役割もします。したがって、狭小住宅の窓には、室内環境を向上させつつ、外観デザインをより良くする位置と大きさ、開閉方法が求められます。

バルコニーやルーバー
バルコニーには洗濯物を干したり、リビングを広々見せたりする役割があり、ルーバーには外部からの視線や直射日光を遮るという役割があります。そしてそれと同時に、どちらにも外観デザインにアクセントをつけるという働きもします。バルコニーと手すり、ルーバーの幅、高さ、建材によって、外観にアクセントをつけ、デザイン性を向上させます。

ルーバーの素材には、アルミ、ガラス、天然木、樹脂木があり、縦格子、横格子の違い、幅の違いがあります。素材や格子のタイプ、幅によって雰囲気が変わります。それぞれには、違った特徴があり、外壁の質感や、住宅全体のイメージに調和するルーバーを採用します。

袖壁
袖壁は住宅の外につける壁のことです。防火性を高める働きもしますが、狭小地では、プライバシーを確保する為に外壁を取り入れることがあります。そして、袖壁はそのような実用性に加えて、外観イメージの向上にも役立ちます。

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狭小住宅 間取りの工夫

3階建てになることの多い狭小住宅では、暮らしやすい家にする為に間取り工夫が必要です。

生活動線
家族の暮らし方に調和していることが生活動線の基本です。生活の時間帯がほぼ同じ家族と、食事時間や帰宅時間がバラバラの家族、家族揃ってリビングで過ごすことが多い家族と、それぞれが自分の部屋で過ごすことの多い家族など、家族によって暮らし方は異なります。

そして、狭小住宅では、共用できる部屋を増やして、床面積を有効に使う必要があります。しかし、家族の暮らし方に合っていなければ、床面積が有効に使えたとしても、暮らしやすい家にはなりません。家族そろって食事をし、リビングで団欒する家族であれば、リビングとダイニングを繋げ、ゆったりくつろげる空間を作る、家族で使える大型クローゼットを作る、配膳や片付けのお手伝いがしやすいキッチンレイアウトにするなどの工夫が必要です。

反対に、それぞれの部屋で過ごすことの多い家族であれば、玄関と各居室との移動をしやすい間取りにする、各居室に収納スペースを作る、帰宅の遅い家族や早朝に出かける準備をする家族が他の家族の睡眠を妨げないような間取りにするなどの工夫が必要です。

室内環境
他の住宅やマンションに囲まれている縦に細長い狭小住宅には、室内環境が調いにくい条件が揃っています。陽当りが悪く、晴れている日の昼間でも電気をつけなくてはならない、窓を開けても風が入ってこない、圧迫感がある、ブラインドを開けたくても隣家からの視線が気になり開けられないといった状況になることもあります。

このような状況は、間取りの工夫で回避できます。陽当りや風通しの悪さ、狭さによる圧迫感は、吹き抜けやスキップフロアで空間を広げることで解決します。また、天窓や高窓は、外部からの視線を遮りつつ、光と風を十分に取り入れます。

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狭小住宅 快適な家にするポイント

狭小住宅では、外観デザインと室内環境を合わせて調えることが重要課題なのですが、もう一つ大切なことがあります。それは、住宅の性能です。室内環境を整えるために取り入れる吹き抜けやスキップフロア、天窓は、反対に室内環境を悪化させる原因にもなるからです。

吹き抜けやスキップフロアは、空間が広がる為、冷房や暖房が効きにくくなる、天窓は夏場日光が入り過ぎて室内の温度を上昇させるというようなことがおこることがあるのです。でも、住宅に充分な気密性と断熱性が備わっていれば、そのような状況にはなりません。明るい陽ざしと気持ち良い風が通りぬける室内と、夏涼しく冬暖かい家を同時に実現できます。

また、狭小住宅では道路からの騒音が気になり睡眠不足になる、入浴時の水音や赤ちゃんの泣き声が周囲に響きそうで気を使ってしまうというような音の問題が発生することもあります。音の問題を解決する為には、窓の機能性が大切です。防音、遮音機能のある窓にすれば、音を気にせず生活できます。暮らしやすさを作る間取り、その間取りに見合った住宅性能を持たせることが、狭小住宅を快適な家にするポイントです。

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HOPEsの狭小住宅への思い


ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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