狭小住宅では、間取りプランを作る際の床面積の割り振り方が、暮らしやすさに影響を与えます。

「書斎が欲しいが、リビングを広く取りたいからあきらめよう」

「子供はリビングで過ごす時間が長いからから、子供部屋は作らずにリビングを広く取ろう」

というような間取りの考え方もある一方、家族の団欒の場はダイニングがあれば十分という考え方もあります。しかしそのような考えは少数意見です。実際には多くの人が広いリビングを好んでいます。書斎や子供部屋を無くしても、リビングを広くしたい人が多いのはなぜなのでしょう?家族にとってリビングとはどのような場所なのでしょうか?

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リビングの在り方

SUUMOでおなじみのリクルート住まいカンパニーが2016年に行った調査では、夫婦が1日の約7~8割の時間を過ごす場所はリビングという結果が出ています。テレビを見る、食事をする、スマホ、タブレット、PCを使う、子供と遊んだり、子供の宿題を手伝ったりする、洗濯物をたたむなど、多くのことがリビングで行われているようです。

一方、東京ガスがおこなった子供の勉強実態と親の意識というレポートでは、中学受験期の6割以上、高校受験期の4割以上、大学受験期の2割以上がリビング・ダイニングで勉強しているという結果が出ています。子供達も、勉強や宿題、読書などをリビングでする為、リビングで過ごす時間が長いようです。

この結果を見ると、リビングは、家族が団欒する場であるとともに、それぞれがしたいことをする場でもあるということが感じられます。その為、多くの人がリビングは広く取りたいと望むのでしょう。ではどの程度の広さが家族にとって心地よい広さになるのでしょうか?

居心地の良いリビングの広さは家族構成とライフスタイルによって変わってきます。ダイニングとリビングが繋がっている間取りであれば、ダイニングテーブルと椅子、ソファ、テレビ台、食器棚などのサイズが家族構成によって異なるからです。例えば、夫婦だけの暮らしであれば、2人用のダイニングテーブルと2客の椅子で済むので、椅子の引き距離なども合わせてダイニングテーブルに使われる面積は約1,6畳です。それに加えて2人掛けのソファ、又は一人掛けを2脚にテーブル、周囲歩けるだけのゆとりを持たせても、4畳弱あれば事足ります。食器棚や冷蔵庫もそれほど大型ではないでしょうから、全部合わせても、8畳から10畳あれば、ゆったり過ごせるリビングにできます。

4人家族であれば、ダイニングテーブルの部分には、約2,5畳必要です。食器棚や冷蔵庫も大型が使われるでしょう。それに加えて、3人掛けソファ+1人掛け、又はL字型タイプのソファを置くと、10畳強の広さが必要です。それらを合わせると、最低でも12畳、家具の間をストレスなく移動でき、ゆったり過ごせるリビングにするには14~16畳程度の広さが欲しいところです。

さらに、犬や猫と一緒に暮らす場合には、ペット用スペースもとらなくてはなりません。猫の場合は、ご飯を食べる場所と、寝る場所、トイレを部屋の隅にバラバラに置いても大丈夫ですが、犬の場合はゲージが必要です。ゲージを置くスペースとして少なくとも畳半分くらいの広さを見ておかなくてはなりません。

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それほどの床面積はリビングにとれないという場合、リビングの在り方について考え直してみるという選択肢があります。

ソファを置かない
ソファとソファ用のテーブルを置かず、広めのダイニングテーブルと椅子だけにするという方法です。ダイニングセットとソファセットを無理やり押し込むと、家具の間の移動がストレスになったり、椅子をひく距離が限られてしまったりします。しかし、ダイニングセットだけにすれば、同じ広さの部屋でもゆったり家具が配置できます。

大人がリビングですることの多くは、スマホ、タブレット、PCを使う、子供と遊んだり、子供の宿題を手伝ったりする、洗濯物をたたむなどでした。子供がリビングですることは、勉強やゲームでした。これらのことは、姿勢が悪くなりがちなソファでするより、ダイニングテーブルでした方が、効率が良くなるのではないでしょうか?

ダイニングセットを置かない
ダイニングチェアよりソファの方が座り心地が良い、ダイニングテーブルは高さがあるので、部屋が狭く感じられるというような場合には、低いダイニングテーブルとソファを組み合わせる方法もあります。ただ、この場合には、姿勢が悪くならないようなソファを選ばなくてはなりません。特に子供がいる場合には、姿勢の悪い子供になってしまう恐れがあるので注意が必要です。

テレビを置かない
大人も子供もリビングですることに入っている項目にテレビを見るというものがありました。家族によって考え方は異なりますが、新築は、テレビのない生活ということを考えてみる良いチャンスです。食事中には食べることと、家族の会話を楽しめます。テレビがなければ、勉強や読書の集中力を妨げられることもありません。また、大型化し続けているテレビを置く場所を、猫がいる家庭ならキャットウォークにしたり、小さな子供がいる家庭なら子供の自由な落書きスペースにしたりもできます。世間のニュースはインターネットやラジオで十分得ることができる世の中です。テレビを無くして家族の会話や、読書に時間を増やす、又は夫婦の寝室にテレビを置くなどの方法を考えてみても良いのではないでしょうか?

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キッチンとの関係

ここまでリビング・ダイニングについて考えてきましたが、リビングとダイニングがつながっている場合、キッチンのレイアウトやキッチンとのつながり方もリビングの使いやすさに影響を与えます。壁付の横一列に並ぶキッチンのレイアウトの場合には、面積は節約できますが、リビングからキッチンが全て見えてしまいます。反対に、対面キッチンにすれば、視線は遮られますが、リビングがダイニングの面積が圧迫されてしまいます。その為、床面積やリビングとダイニングの使い方に合うキッチンレイアウトを考えることもリビングの居心地の良さを向上させます。

レイアウトの他に、ダイニングとキッチンの繋げ方がリビングの広さに影響を与えます。ダイニングをキッチンの一部にしてリビングを広く取るという考え方です。キッチンの前面にカウンターを設置して、ダイニングテーブル代わりにする、部屋の形状によっては、キッチンとダイニングテーブルを繋げるというようにして、ダイニング部分の面積を節約する方法です。その分、リビング部分を広く取ることができます。

家族の暮らしに合う間取り

居心地の良いリビングにする為には、家族のリビングでの過ごし方を基本に考えることが大切です。夫婦だけの家庭、小さな子供のいる家庭、受験勉強中の子供がいる家庭、二世帯の家庭など家族構成によってもリビングでの過ごし方は変わります。また、気を使うお客様が多い家庭と、家族だけで過ごすことがほとんどの家庭でも、リビングの在り方は違ってきます。

間取りを考える時に、家族がリビングですること、リビングにいる時間の長さ、リビングに置く予定の家具や家電を具体的に考え、リビングにどの程度の面積を使うかということを考えることが大切です。家を建てるということは、リビングにはソファとテレビがあるものというような固定観念にとらわれず、自分達家族の理想の暮らし方を考えてみるチャンスでもあります。

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HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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