注文住宅は、購入した土地に、希望に沿った外観や内装、間取りで建てる家です。何もないところから始めます。日本の風土に合った木造住宅を建てたい人は多いと思いますが、木造住宅では実現できない外観を望む場合には、コンクリート造を選ぶなど、好みに合った工法も選べます。注文住宅であれば、狭小地や変形敷地など、整形地にはない難しさを持った土地に、暮らしやすい家を建てることもできます。では、注文住宅に不可能はないのでしょうか?

注文住宅の「可能性の幅を変える要素」について考えてみましょう。

Works(株)ホープスの建築実例

注文住宅にはいろいろなタイプの工法がある

工法の違いによって、すべて自由な注文住宅とは言っても、耐震性を揺るがさずに、できる間取りの自由度は限られます。

木造軸組工法   昔から親しまれてきた柱と梁で骨組みを作り、筋交いの入った壁で支える、在来工法とも呼ばれる工法です。日本国内にある個人の住宅のほとんどは、この工法で建築されています。間取りの自由度が高く、増改築もしやすいので、ライフスタイルの変化にも対応できる家が完成します。コンクリート住宅のような、建物全体が曲線を持つような外観は望めませんが、和風な住宅から洋風な住宅まで、様々な趣が可能という面では、外観デザインにも幅があります。

木造枠組壁工法 海外から伝わってきた木造のパネルを組み立てて、建築するツーバイフォーと呼ばれる工法です。横からの揺れに強い為、耐震性が高い家を建てられます。間取りや、窓の大きさに制限がある為、間取りの自由度には、制限があります。したがって、増改築はしにくく、ライフスタイルの変化に応じた手軽なリフォームはできません。外観デザインは、洋風なタイプに限定され、和風住宅には不向きです。

 

重量木骨SE構法

比較的新しい構法で、阪神淡路大震災での多くの住宅の倒壊をきっかけに、開発が始まりました。体育館やスケート場などの大型木造建築物に使われる技法を、住宅にも応用し、木造でありながらコンクリート造の建物のような、ラーメン構造で建築する構法です。SE構法は、在来工法では不可能な、大空間を持つ住宅が建てられます。在来工法は、筋交いの入った壁が、耐震性を支える工法です。その為、なくてはならない重要な部分である間仕切壁が、一切ない大空間を作ることは非常に難しいのです。

SE構法は、吹き抜け、大開口、床面積の狭い3階建て住宅、インナーガレージなど、耐震性を低下させねない設計の手法に、揺ぎ無い耐震性を持たせます。

コンクリート造 コンクリートの住宅には、鉄筋にコンクリートを流し込むRC造、重量鉄骨を柱や梁として採り入れる鉄骨造などがあります。コンクリート造には、木造住宅には出せない、曲線の美しさを活かした外観デザインを、作り出せる魅力があります。一般的な木造住宅に比べて、高い耐震性があり、大空間のある間取りの家が建てられます。

注文住宅にかかる費用は幅が大きい

予算によって、注文住宅の自由度は制限されます。工法によっても、建築費は大きく変わります。建築費の中で、絶対に削れない費用は、耐震性や断熱性などの、住宅の機能にかける費用です。したがって、それ以外の部分は、予算によって、制限されてしまいます。

家の形 1階、2階、3階の床面積が違う家、コノ字型やL字型の家、袖壁が多用されている家など、凝った形状の家は、建築費が嵩む家です。反対に、各階の床面積が同じ総2階建て、総3階建ての家、凹凸のない箱型の家は、建築費が抑えられます。

屋根の形と数 屋根には、家の上に載っている屋根と、1階部分に差しかけられる下屋があります。家の上に載っている屋根には、三角屋根や方形屋根、片流れ屋根がありますが、面の多い屋根ほど、建築費は嵩みます。下屋は、玄関ポーチや縁側の上に部分など、雨が降っても濡れないようにしたい場所に、設置されますが、数が多いほど建築費は嵩みます。

建材のグレード 外観や内装の色や質感によって、住宅の見た目も、室内のインテリア性も変わります。また、建材の性能によって、室内環境を左右する断熱性も変わってきます。外観デザイン、室内のインテリア性、室内環境全てに影響を及ぼす建材のグレードは、建築費にも影響します。
例えば、無垢材のフローリングにしたいという希望がある場合、ウォールナットやチークは高額ですが、バーチやアカシアは費用を抑えられます。外壁の建材は、グレードを落とすと、住宅の性能も落としかねませんが、内装の建材であれば、その心配はありません。好みに合う色調であれば、最高級の建材を使わなくても、インテリア性は調えられます。

 

窓 窓の数、サイズ、開閉方法によって、建築費は変わります。また、同じ窓の数、サイズ、開閉方法であっても、窓の機能性が、高ければ高いほど、建築費は嵩みます。窓の機能性と位置は、日当たり、風通し、暑さ寒さ、家の中の静かさなど、家の中の環境に大きく影響します。居心地の良い室内環境の為に、窓の機能は非常に大切です。加えて、窓の開閉方法、数、サイズ、位置はすべて、家の外観デザインに、深い関わりがあります。

凝った間取り 地下室、屋上、中庭がある家、部屋数の多い家は、建築費が嵩みます。地下室を作る場合、地盤強化、防水、除湿などの工事費が余分にかかります。屋上を作る場合には、防水工事や階段、電気、水道設備の設置などの工事費が余分にかかります。中庭がある家は、外壁が増えるので、建築費が嵩みます。部屋数の多い家は、間仕切壁や建具の数が増えるので、建築費が嵩みます。

家具職人の造る造作家具 新築時に備えつける造作家具には、家具職人の造る造作家具と、大工さんが作る造作家具があります。家具職人の造る造作家具は、家具工場で作成して、搬入します。凝った飾りつけがしてある、扉にガラスが入っているなど、美しい家具が出来上がりますが、その分建築費は嵩みます。置き家具を購入するよりも、高額になることも少なくありません。
大工仕事で造る造作家具は、現場で大工さんが作ります。凝った飾りなどは施されていませんが、家具職人の造る造作家具より、建築費を抑えられます。置き家具を購入するより、低予算で設置できることもあります。

住宅設備機器 浴室やキッチン、洗面所、トイレに備え付ける、住宅設備機器には幅があります。グレードが高くなればなるほど、オプションをつければつけるほど、建築費は嵩みます。

Works(株)ホープスの建築実例

注文住宅で家を建てる際に確認しておくべきこと

予算が限りなく使える注文住宅に、制限はありません。家を建てる側にとっても、建築家にとっても、贅沢な家づくりができることでしょう。しかし、現実には、いかに注文住宅とは言っても、まったく制限なく建てられるわけではないのです。予算と見合わせながら、家づくりを進めていかなくてはなりません。

そこで、始めに確認しておくべきことは、理想の家を建てるための優先順位です。絶対に譲れない要素と、後回しにしても良い要素を、具体的に考えてみることが大切です。シンプルな外観で、居心地の良い室内にしたいという考えもあれば、将来的なライフスタイルの変化に、対応できる家にしたいという思いもあるでしょう。

住宅性能の高さは、暮らしやすさに直結し、建築費にも影響します。家と屋根の形、窓、建材のグレードは、外観の印象を変え、建築費にも影響します。夢を膨らませるばかりではなく、実現したいことと、予算の兼ね合いを見極めなくてはなりません。

譲れない要素を基に、具体的な家族の暮らし方を思い描いて、間取りを決め、予算と見合わせながら、外観デザインや住宅設備機器のグレードを選んでいくと良いのではないでしょうか?

予算の範囲内で、理想の家を実現させる家づくりを進めるためには、実現したい要素を、確実に施工先に伝えること、その上で、積極的に家づくりに参加すること、夢をあきらめずに工夫すること、それが納得できる家、家族にとって暮らしやすい家の完成に繋がります。

Works(株)ホープスの建築実例

ホープスの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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