間取りを考える時、リビングはできるだけ広くしたいと考える人は多くいます。その結果、狭いキッチンになり、使いにくくなってしまうことがあります。

狭いキッチンになっても、使い勝手の良いキッチンにすること、使いやすいキッチンを実現する間取りにすることが大切です。

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リビングダイニングとキッチンの位置関係から考えるキッチンレイアウト

郊外型のゆったりした住宅と違い、都市部の住宅では、床面積が、限られているケースがほとんどです。その中で、使い勝手の良いキッチンに、必要な床面積を確保する為には、間取りの工夫が必要です。

家族構成や、家族の暮らし方によって、暮らしやすい間取りは異なります。したがって、キッチンの在り方も変わってきます。

家族構成や、家族の暮らし方別に、リビングダイニングを含めたキッチンの間取りについて考えてみましょう。

両親と子供二人の一般的な4人家族

  • 家族が長時間過ごす場所はリビング 食後の団欒以外にも、ほとんどの時間は、リビングで過ごす
  • 家族の生活時間帯は、働き手が、仕事で帰宅が遅くなる時以外は、重なっている
  • 気を遣うお客様をお迎えすることはほとんどない

このような家族には、広いリビングが向いています。家族がそろって食事をしても、ゆったり座れるダイニングも必要です。そして、配膳や片付けの手伝いを、家族で協力することを考えれば、複数の人が、出入りできるキッチンのレイアウトが、好ましいでしょう。

これらの条件を、限られた床面積の中で叶えるためには、リビングとダイニングとキッチンを、一部屋としてつなげる間取りと、壁付Ⅰ型のレイアウトのキッチンが向いています。

壁付Ⅰ型のレイアウトのキッチンとは、壁に向かって、シンク、コンロ、調理台が、横に並んで配置されているキッチンのことです。

壁付のキッチンには、ダイニングやリビングから、キッチンが全て見えてしまうという面がありますが、キッチンを、最も広く使えるレイアウトでもあります。気を使うお客様が、頻繁にいらっしゃる家庭でなければ、広い方が使いやすいキッチンにできます。

気を遣うお客様が多い、又は、リビングで過ごす時、ダイニングやキッチンが見えないようにしたいという場合には、リビングと、ダイニングの中間に、パーテーションを設置する方法もあります。

夫婦だけの暮らしや、子供たちは成人して、家族の生活時間帯がずれている家族

  • それぞれの仕事が忙しく、生活の時間帯がずれているので、母親が用意した食事を、それぞれ都合の良い時間に摂る
  • 帰宅後は、それぞれの居室で過ごすことが多い

このような暮らし方の家族であれば、複数の人が、キッチンに同時に立ち入ることは少ないので、対面キッチンや、Ⅱ型キッチンのレイアウトにできます。

対面キッチンとは、ダイニング側にキッチンが向いているレイアウト、Ⅱ型キッチンとは、シンクと調理台、コンロと調理台が平行に置かれているレイアウトです。

どちらも、前面に腰壁がついているので、腰壁の高さで、ダイニングやリビングからの視線を調節できます。

床面積が限られている中で、対面キッチンや、Ⅱ型キッチンのレイアウトにすると、対面の場合にはキッチンと壁、Ⅱ型の場合は、コンロ部分とシンク部分との幅を十分に取れず、動きにくくなってしまいます。しかし、リビングをそれほど広くする必要がなければ、キッチンに床面積を大目に割り振れます。

対面キッチンや、Ⅱ型キッチンの良いところは、壁付よりも収納力が高いことと、キッチンの内部が見えないことです。

Ⅱ型キッチンでは、リビング側のシンクや調理台の上部と下部、壁側のキッチンの上部と下部を収納として使えます。対面式の場合には、シンクや調理台の上部と下部、壁側を全て収納に使えます。

加えて、母親が、家族の為の用意した食事が、キッチンの内部に並んでいたとしても、リビングやダイニングからの眺めは、整然と保てます。

時間帯のずれている家族では、家族の誰かが、お客様を伴って帰宅しても、急にお迎えの準備ができません。対面キッチンであれば、リビングからの視界に影響がないので、そのような場合にも、慌てずに済みます。

家族の暮らし方によって、使いやすいキッチンのレイアウトと間取りは異なります。間取りを考える時、キッチンのデザインだけにとらわれず、家族の暮らし方、食事の摂り方、間取りとの調和などを考えて、レイアウトを決めることが大切です。

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狭いキッチンとアイランドキッチンの相性

おしゃれなキッチンにしたいと思う人達の間で、人気の高いキッチンは、アイランドキッチンです。

アイランドキッチンは、その周囲を回遊して使うキッチンなので、広い面積が必要だと思われています。実際、広々としたリビングに続くダイニングキッチンに使われているケースが、ほとんどです。

ところが、実は、アイランドキッチンは、間口の狭小住宅のキッチンとの相性も、非常に良いのです。間口の狭いキッチンでは、アイランドキッチンを、間口に対して横置きにするのではなく、縦置きにする方法で設置します。

さらに、ダイニングテーブルを、キッチンに繋げて設置すると、細長い部屋でも、移動しやすいダイニングとキッチンが完成します。この方法であれば、狭いキッチンでも、アイランドキッチンの周りを回遊でき、使い勝手の良いキッチンが、実現します。

このようなレイアウトにする場合、キッチンとダイニングテーブルを繋げた造作家具にする方法と、システムキッチンに造作家具でテーブルを繋げる方法があります。

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床面積を無駄にしない収納

狭いキッチンでは、冷蔵庫を置くだけでも、面積を圧迫されるので、置き型の食器棚などの家具を使わない収納を工夫しなくてはなりません。

シンク下
最近のシステムキッチンのシンク下は、以前よりも排水管で取られる部分が少なくなり、広くなってきています。シンク下の収納は、前後に開閉するタイプより、引き出し式の方が、整頓しやすく、より広く使えます。

また、浄水器を使う場合、シンク上ではなく、シンク下に設置するタイプの方が、調理台を広く使えます。シンク下は収納に使いたい、シンク上も邪魔になって嫌だという場合には、浄水機能のある水栓がおすすめです。

壁 吊戸棚
シンクや調理台の上部にある吊戸棚は、収納する物の量に合わせて、サイズが選べます。また、吊戸棚の下部に、調理中に簡単に開閉できるサブ収納がついているタイプや、使う時だけ引き下ろして使う仮置き用の棚がついているタイプなどがあります。

壁 扉のない棚
壁付キッチンや、Ⅱ型キッチン、対面キッチンの奥側の上部には、造作家具で棚をつけると、見せる収納ができます。鍋や食器類を、おしゃれに配置すると、インテリア性も向上します。

ただし、キッチンは油を使うので、空気中のホコリが付着しやすい場所でもあります。油が飛びそうな場所には、食器類を置く棚を作らない、油汚れが取りやすい素材の箱に入れて置くなどの工夫が必要です。

パントリー
買い置きの食料品を保存するパントリーは、狭いキッチンをより圧迫します。また、キッチンが、2階や3階にある場合には、運び込みも大変です。玄関や、リビングに家族で使える大型収納を設ける予定であれば、その一部に食料品を保存できる棚を作っておくと、重い食料品を、一気に階上のキッチンまで運ばずに済み、キッチンも面積も圧迫されません。

狭くても使いやすいキッチンにする為には、家族の暮らし方に合わせたキッチンのレイアウトと間取り、床面積を無駄にしない収納がポイントです。

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HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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