1フロア10坪弱の狭小住宅

都心部では、土地の価格が高額なので、全国の戸建て住宅の平均坪数とされているおよそ30程度の家を建てるとなると、大変な資金が必要です。その為、都心部では、狭小住宅と言われる10坪~15坪の家を建てるケースが多くあります。平均的な家が30坪程度だと考えると、10坪の家で、家族で快適な暮らしが出来るものなのでしょうか?

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10坪~10坪以下の家で快適に暮らせる家族の人数

初めに、10坪の家というものについて確認しておきましょう。

10坪~10坪以下の家に必要な敷地面積
10坪の家とは、10坪の建坪の家ということです。敷地には建ぺい率という指定がある為、敷地いっぱいには家を建てられません。建ぺい率の範囲内で建てなくてはならないのです。建ぺい率は地域によって異なります。23区では、ほとんどの地域で60パーセントに指定されていますが、世田谷区のように50パーセントに指定されている地域が多い区もあります。

従って、建ぺい率が50パーセントの地域に建つ10坪の家は、およそ20坪、建ぺい率が60パーセントであれば、およそ17~18坪の敷地に建てられる家ということになるわけです。建ぺい率が60パーセントの地域に建てる9坪の家であれば、約15坪の敷地があれば建てられます。

10坪~10坪以下の家で得られる延べ床面積
単純に考えると,建坪×階数が延べ床面積です。10坪の平屋であれば、延べ床面積は10坪、畳に換算すると約20畳です。2階建てなら20坪、3階建てなら30坪の延べ床面積の家が建てられます。住宅の高さに対しては、容積率、斜線制限などがあります。しかし、ほとんどの地域では、家全体のフォルムや屋根の形状を工夫することによって、3階建て住宅が建てられます。

10坪の家は狭いのでは…?と初めに感じられたかもしれませんが、このように考えてみると、10坪でも、十分な居住面積が確保できるということがわかります。

10坪の家に暮らせるのは何人家族まで?
国土交通省が作成している居住水準の中に、最低限確保したい居住面積という項目があります。「世帯人数に応じて健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」に、家族の人数が示されています。

  • 1人住まいであれば、25㎡
  • 2人では30㎡
  • 3人では40㎡(3~5歳児が1名いる場合は35㎡)
  • 4人では50㎡(3~5歳児が1名いる場合は45㎡)

次に、誘導型居住面積基準というものがあります。これは、都心部に暮らす人を対象にした都市居住型と郊外や地方に暮らす人を対象にした一般型に分かれます。都市居住型では、次のように定義づけられています。

「世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と考えられる住宅の面積に関する水準」

  • 1人住まいであれば、40㎡
  • 2人では55㎡
  • 3人では75㎡(3~5歳児が1名いる場合は65㎡)
  • 4人では95㎡(3~5歳児が1名いる場合は85㎡)

この数字を坪数にしてみましょう。

  • 1人住まいであれば、約12坪…約24畳
  • 2人では約16坪…約32畳
  • 3人では約23坪…約46畳(3~5歳児が1名いる場合は約20坪)
  • 4人では約29坪…約58畳(3~5歳児が1名いる場合は26㎡)

10坪~10坪以下の家でも、3階建てにすれば、延べ床面積は3倍になるので、理想の居住水準を十分に満たせる広さの家が建てられることがわかります。

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狭小住宅の間取りの工夫

10坪~10坪以下の家は、3階建てにすることで、十分な床面積が確保できることがわかったら、次に考えたいのは、暮らしやすさです。狭小住宅は、郊外型の敷地に余裕のある家とは違った環境にあります。その為、一般的な間取りの家では、室内環境を快適に調えることができないケースが多いのです。狭小住宅の暮らしやすさを作る為に必要な間取りの工夫について考えてみましょう。

生活動線と収納
最近の傾向としては、帰宅後はリビングで過ごすことが多い家族が増えています。その為、家族が集いやすい2階にリビング、3階に子供部屋や寝室を作ることが多いでしょう。すると、玄関と居室を結ぶ動線が縦に長くなります。出かける際に書斎に忘れ物をした時と気がついても、時間に追われていれば、3階まで取りに行くのは大変です。また、帰宅した際に、上着やバッグを3階の自室まで持っていってから、2階のリビングに行くのは面倒に感じられます。その結果、リビングに上着やバッグが溢れて、散らかってしまうことがあります。

3階建て住宅で3階に子供部屋や寝室を作る場合、リビング、又は玄関の近くに家族が使える大型クローゼットを作ると、このような事態を避けられます。また、家族で使えるクローゼットは、各居室に収納スペースを作るより、床面積が節約できます。その結果、各居室を広めにすることもできます。

家事動線と洗濯機の位置
3階建てでは、洗濯物にかかわる家事負担が大きくなりがちです。特に、それまでマンションに住んでいた主婦にとっては、思いもよらない重労働になってしまう恐れがあります。もし1階に浴室と洗面所があり、洗濯機を置いていて、洗濯物を干す場所が3階のバルコニーであれば、毎日3階まで洗濯物を運ばなくてはなりません。子育て中には洗濯物の量も多く、共働きであれば、より洗濯物に関わる家事が負担になってしまいます。

3階のバルコニーに洗濯物を干すのであれば、3階に洗濯機を置く場所を作る、反対に1階に洗濯機を置くのであれば、洗面所内など1階に洗濯物を干せる場所を作る、又は、水回りはすべて2階に集約させ、2階から3階への移動だけで洗濯に関わる家事が完結できるようにするなどの工夫が必要です。

大事なことは、間取りを考える時に、家事負担を減らすことも考えておくことです。また、洗面所内に、下着やパジャマを収納できるスペースを作っておくという方法もあります。子供の入浴準備のために3階の子供部屋と1階の洗面所を往復しなくてもすみ、仕上がった洗濯物も各居室に運ばず、まとめて収納できます。

窓の位置と吹き抜け
狭小敷地に建つ3階建て住宅では、風通しと日当たりを良くする為の工夫が必要です。そしてそれと同時にプライバシーも守らなくてはなりません。陽当りを良くする為に、大きな窓をつけても、周辺の環境によっては視線が気になり、窓を開けられないケースもあるからです。狭小敷地に建つ家の場合、窓の位置と大きさ、窓のデザインは、家の向きだけではなく、隣家や道路との位置関係も考慮して決めなくてはなりません。

太陽の光風を十分に取り入れながら、周辺からの視線に煩わされないようにする為に、トップライトやハイサイドライト、3階の窓から採り入れた光を家中に届かせる為に、吹き抜けやスキップフロアなどを間取りに取り入れます。吹き抜けやスキップフロアは、光と風を採り入れるだけではな住宅に開放的な空間を作り出します。

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10坪の家の建築事例

数多くの狭小住宅を手掛けているホープスの建築事例の中から、10坪~10坪以下の建築事例をご紹介します。

ヘリンボーン、箱階段、カーペット、出窓。 狭小でも細部にこだわる、モダンクラシックハウス 
地上3階建(木造SE構法) 延床面積 80~100㎡

北欧風のシンプルモダンを好まれるご夫婦のための狭小住宅です。
ヘリンボーン貼りの無垢フローリングのリビング

シャビーな色合いのカーペットと壁塗装が施された寝室

収納をそのまま階段にした特注の「箱階段」

白を基調とした明るい雰囲気の室内空間とは対照的に、ダークな木目調の外壁で外と内のコントラストを楽しめるデザインの外観

アメリカン好き狭小住宅
木造3階(SE構法) 延床面積 50~65㎡

西海岸の家をイメージしたアメリカンテイストがたっぷり詰まった狭小住宅です。木造準ラーメン構造「SE構法」のメリットを生かした、壁の無い開放的な空間

実際の面積以上の広がりと明るさを感じさせるリビングの吹抜け

すっきりした壁面収納がある書斎

欧米の木造建築に外壁として受け継がれている、板を1枚1枚重ね張りして仕上げるラップサイディングの外壁

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HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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