都心部での暮らしは、通勤通学時間が倹約できることや、商店や病院が多いこと、公立学校の学習レベルが高いこと、習い事で質の高い教師を見つけやすいことなど、数えきれないほどの利便性があります。

夫婦共働きの夫婦にとっては、夜遅くまで営業しているコンビニではないマーケットや、美味しい食事を提供するレストランが多いこと、おしゃれに気を使う人にとっては、好みの衣服や靴が店舗で買えることなどが都心の暮らしの魅力でもあるでしょう。

しかし、都心の土地は高額です。区によって価格の違いはありますが、港区、中央区のように土地面積100m²の平均価格が15,000万円を超える地域もあります。一方、数十年続いている経済不況のせいで、徐々に上向いているとはいえ、15,000万円の土地を買える人はごく一部です。統計局の全国消費実態調査によれば、平均的な世帯年収は、30~34歳で493万円、35~39歳で603万円、40~44歳で658万円という結果が出ています。

この年収の中から、都心部に30~40坪の土地を購入すれば、家の建築費が捻出できない、経済に負担がかかり、生活が圧迫されるといった状況になってしまうでしょう。最悪の場合、生活が成り立たなくなる恐れがあります。その前に、住宅ローンさえ組めないかもしれません。そのような状況の中で、都心部に戸建て住宅を持ちたいと思う人は、狭小敷地に家を建てることを選択します。

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狭小住宅に3階建てが多い理由

狭小敷地に建てられる建坪10坪から15坪の家は、いわゆる狭小住宅と呼ばれる家です。狭小住宅の中には建坪が10坪以下という住宅もあります。その少ない建坪に対して、家族全員が快適に暮らせる居住面積を確保する為、狭小住宅の多くは3階建てで作られます。

快適に暮らせる居住面積の参考になるのは、国土交通省が作成した生活基本計画に示されている誘導居住面積です。誘導型居住面積とは「世帯人数に応じて、 豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と 考えられる住宅の面 積に関する水準」とされています。その中には、都市居住型と一般型があり、都市居住型は一般型より狭い面積で算定されています。

具体的には、都心部での誘導居住面積の水準は、子供が2人いる家族の場合、125㎡とされています。125㎡は坪数に換算するとおよそ37~38坪です。一人暮らしであれば、55㎡と算定されていますが、二世帯で暮らす場合には、4人家族よりさらに広い面積が必要です。2階建ての家では10坪から15坪の建坪の家に125㎡の居住面積を確保することはできません。その為、狭小住宅には3階建てが多くなるのです。

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3階建てでの暮らしはどんな暮らし?

周囲に何もない広大な敷地に建てる3階建てと違い、都心部の狭小敷地に建てる3階建ての住宅は、周囲の環境によって生活環境に大きな影響を与えられます。また、間取りのプランが限られた床面積によって制限されることもあります。その影響を解決し、制限の中で家族のライフスタイルに調和する間取りにしなければ、暮らしにくい家になってしまいます。

  • 晴れていても暗い部屋がある 3階建てに家では、郊外であっても1階は日当たりの悪い部屋ができてしまうことがありますが、狭小敷地ではさらに陽射しが取り込みにくくなります。*解決法* トップライト、吹き抜け、スキップフロアなどを取り入れると、家の中に充分な日差しを取り込めるようになります。
  • ジメジメしやすい 周囲を他の建物で囲まれている為、風が通りにくくなり、湿度が高くなる恐れがあります。換気が十分にできず、カビやダニが発生し、健康被害に繋がることもあります。*解決法* 窓の位置や大きさ、開閉方法を工夫する、吹き抜けやスキップフロア、スケルトン会談を取り入れるなどの方法で、風が通る家にできます。
  • 階段が大変 洗濯、掃除、食料品の運び込みなどの家事に、階段の上り下りが加わるので、家事負担が大きくなってしまいます。洗濯機と洗濯物を干す場所の位置関係、掃除用具の選び方、キッチンやパントリーの位置を工夫します。*解決法1*3階のベランダに洗濯物を干す予定であれば、3階に洗濯機の置き場を作る、洗面所に洗濯機を置く予定であれば、洗面所に洗濯物を干せるスペースを設けるなど、洗濯に関わる家事を、階段を使わずにできるようにする間取りを考えます。*解決法2*キッチンを2階、3階にする場合には、1階の玄関のそばに、重い食料品を置けるスペースを作っておき、使う都度、小出しに運べるようにしておくと楽に運べます。*解決法3*掃除機を持って階段を上り下りするのも大変です。各階に掃除機を置く、階段用モップを使うなど、掃除機を持って階段を昇り降りしないで済む工夫が必要です。
  • 圧迫感がある それぞれの階の床面積が狭い為、間仕切壁が多いと、圧迫されている感覚になることがあります。また、地域によっては、法的な制限があり、天井が低くなってしまうこともあります。そうなってしまうと、より圧迫感が増します。*解決法* スキップフロアを取り入れ間仕切壁を減らす、吹き抜けを取り入れて縦の空間を広げる、スケルトン階段を取り入れて視線の抜けを作るなどの方法で、開放的な空間が作れます。
  • 冷暖房の効率が悪い 日当たりを良くする、圧迫感のない空間にするなどの為に取り入れる吹き抜けやスキップフロアは、家の中の空間を繋げます。その結果、間仕切壁の多い家に比べて、冷暖房の効率が低下し、冬は寒い、夏は暑いという室内環境になってしまうことがあります。*解決法* 高断熱にすることが一番の解決策です。屋根、壁、床、窓など全ての家の外側を包む部分の断熱性と気密性を上げます。その結果、家の中の空間が繋がっていることが冷暖部の効率を下げるのではなく、家の中の温度差を無くすという快適さに繋がります。

狭小地に建つ3階建ての住宅は、設計次第で、暮らしやすい家にも暮らしにくい家にもなるということです。家は家族が長時間過ごす場所です。働き盛りの人にとっては、入浴と睡眠だけの場所かもしれません。そうだとしても朝陽が入るダイニングで朝食をとる、開放的で居心地の良いリビングで家族団らんをすることも、生活の中の大切なワンシーンです。

せっかく建てる自分たち家族の家は、暮らしやすい家、快適な生活ができる家にしなくてはなりません。

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資産価値の高い3階建て住宅にするべき理由

家は長く住む場所です。国土交通省のデータでは、30代から40代にかけての年齢で家を建てる人が全体の80パーセントをしめています。ということは、家を建てた夫婦は、家を建ててから50年経つと、80代から90代になるということです。それまでの間には、子供の成長、独立、結婚、定年退職など、様々なライフスタイルの変化が訪れます。

子供夫婦と二世帯ですむことになる家族もあれば、3階建て住宅での暮らしがしにくくなり、住み替えを考える夫婦もあるでしょう。このような時の買い替えや住み替えの重要なポイントは、資産価値の高さです。

都心の土地は、資産価値が落ちないと言われていますが、もし、50年前に建てた家が、劣化していれば、買い替えや住み替えは有利な条件ではすすめられません。道路との位置関係にもよりますが、家が劣化していたとしても建て替えが難しいケースも多いからです。そうなると、劣化した家+土地となってしまいます。

しかし、高い性能を持った住宅であれば、生きているうちに資産価値が下がることはありません。有利な条件で買い替えや住み替えができます。高齢になった時のことを考えれば、都心部の狭小住宅こそ性能の高い住宅、資産価値の高い住宅にしておくべきなのです。もちろん、高性能な住宅が、家を建ててから、買い替えや住み替えに至るまでの暮らしの快適さを保証することは言うまでもありません。

HOPEsの狭小住宅への思い

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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