階段は、家の中の空間の見え方と暮らしやすさに大きな影響を与えます。狭小住宅においての階段には、面積を無駄にとらない、日当たりや風通しを遮らない、空間に圧迫感を与えない、安全に上り下りできるという条件が課せられています。

これらの条件を満たす階段を選ぶ為に階段の種類を確認しておきましょう。

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階段の種類

階段には上り下りの方法の違いによってわける種類と、構成の違いによってわける種類があります。

上り下りの方法

  • 直階段 下の階から上の階まで一直線に上がる階段です。螺旋階段の次に面積を節約できます。下まで一気に転げ落ちる危険を回避する為に踊り場をつけると、安全性は高まりますが、必要な面積は増えてしまいます。その為、一般的な住宅の直階段には踊り場のないタイプがほとんどです。
  • 折り返し階段 途中で折り返して上り下りする階段です。階段の上り下りによる種類の中で、最も安全に使える階段ですが、面積は取られます。折り返しの部分に踊り場があるタイプとないタイプがあります。踊り場があるタイプの方が安全性は高まりますが、より面積は取られます。
  • かね折れ階段 途中で直角に曲がって上り下りする階段です。折り返しの部分に踊り場があるタイプとないタイプがあります。直階段より勾配が急になってしまうので、下部で曲がる場合には、1段多くすることもあります。上部で曲がる場合には、踊り場があった方が安全に使えます。
  • 螺旋階段 回り込んで上り下りする階段です。最も面積が倹約できる階段です。

どの種類の階段であっても、幅があり、段差が緩やか、踊り場があるなど、面積をとればとるほど階段の安全性は上がります。しかし、狭小住宅の場合、できるだけ階段の面積は抑えたいという事情があります。その為、手すりや建材の種類などを工夫して安全性を確保することが非常に大切です。階段は、家の中での事故が浴室に次いで多い場所なので、子供や高齢者のいる家族には、安全性の高い階段が必要です。

また、大型の家電や家具の搬入、搬出をする場合、直階段、踊り場のある折り返し階段には問題がありません。しかし、螺旋階段や踊り場のない折り返し階段では、搬入や搬出が困難です。特に螺旋階段では、衣装ケースや、食料品の袋など、日常的な荷物であっても、両手に持っていれば、上り下りしにくいことがあります。

構造

  • 箱型階段 踏み込み板(足を載せる部分)と踏み込み板の間の奥にも、蹴上板という板がある一般的な階段です。両側を壁に挟まれているタイプと、片側が壁、片側を桁に支えられているタイプがあります。蹴込板があるので、隙間からの転落の不安がありません。階段の下を収納スペースやトイレとして活用できます。
  • スケルトン階段 足を載せる板と階段を支える桁だけで構成されている階段です。陽当りと風通し、視線を遮らないので、狭小住宅ではよく採用される階段です。小さな子供のいる家庭では、転落の危険を防止するため、転落防止ネットなどの対策が必要です。
  • 片持ち階段 踏板が壁に固定されている階段です。宙に浮かんでいるように見え、非常にデザイン性に優れていますが、幅や奥行きを考慮しないと、上り下りが怖いと感じる階段になってしまう可能性があります。

スケルトン階段をリビング階段として採用する場合には、いくつかの点に注意しなくてはなりません。ひとつは、冷暖房の効率が低下する恐れがあるということです。1階と2階の空間が繋がるので、冷房の涼しい空気や暖房の暖かい空気が拡散してしまうからです。夏暑く、冬寒い家になることを避ける為には、住宅の気密性と断熱性を高めることが必要です。

次に、音やニオイが伝わりやすいという問題があります。1階の調理のニオイが2階の子供部屋や寝室にまで広がってしまう、リビングにお客様がいらしている時、子供部屋の声や足音がうるさい、子供が寝た後はリビングで物音を立てないよう気を使うといった状況が発生する恐れがあります。その他に、リビングにお客様がいる時には、お客様の対応していない家族がリビングを通りにくく、外出しにくいという様なことがおこるかもしれません。

階段に使用する面積のことだけではなく、家族構成や、家族のライフスタイルを考慮した上で、階段の種類を選ぶことが大切です。

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階段の位置と間取りの関係

 

 

 

 

 

 

家の中心をリビングにする場合、リビング階段を採用し階段も家の中心に持ってくる間取りがあります。反対に、階段を壁に沿ってつけると、面積を節約でき、安定感のある空間になります。また、家の隅につけると、各居室のプライバシーが確保しやすくなります。

狭小住宅においては、階段の位置を踏まえた上で、面積を取られてしまう階段の踊り場やデッドスペースになりやすい階段下を有効利用しなくてはなりません。

踊り場を利用する
階段の安全性を高める為には踊り場をできるだけ広く取りたいものです。しかし、面積をとられてしまうという問題があります。まだ小さな子供がいる、さらに自分たちが高齢になった時にも安全に上り下りしたいと考え、踊り場のある階段を採用したい場合には、踊り場を利用することを考えてみましょう。

折り返し階段の踊り場に勉強コーナーを作るという方法があります。踊り場の奥に窓があれば、窓の下に作り付けのデスクを設置すれば、採光もでき、窓からの景観を楽しむこともできます。位置的に窓がつかない場合には、デスクの上部に壁面収納を設置して、ミニ図書館にもできます。子供部屋や書斎を面積的にあきらめても、踊り場を子供の勉強コーナーや書斎として利用できます。

階段下を利用する
階段下の収納は、縦に使う方法と横に使う方法があります。直階段では縦に使うと、奥行きが長く、使いにくい収納になってしまいます。側面から開け閉めできるような収納にすると、奥行きが狭く、何種類かの高さの収納スペースができるので、使いやすく、便利です。

また、かね折れ階段では、階段下にトイレが設置できます。階段の位置が洗面所の近くであれば、洗濯機置き場にもできます。洗面所と脱衣所を兼ね、洗濯機も置いてしまうと、脱衣所が狭くなってしまいます。しかし、階段下に洗濯機が置ければ、洗面所と脱衣所を兼ねていても、ゆったり使えます。

窓や吹き抜けとの組み合わせを利用する
階段は、窓や吹き抜けとの位置関係によって、より多くの光や風を取り込み、視線の抜けを作ります。

家族構成、家族の生活動線、家事動線などを考慮した上で、階段の位置を決めることが大切です。

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もう一つの階段 スキップフロア

狭小住宅に有効な階段として、短い階段を使うスキップフロアがあげられます。スキップフロアは、1階と2階の間に中2階、2階と3階の間に中3階を作る間取りです。狭小敷地の限られた面積の中で、十分な居住面積を確保することができるので、狭小住宅ではよく採用される手法です。スキップフロアを取り入れると、間仕切壁がなくなるので、日当たりや風通しがよくなり、視覚的な空間も広がるので、狭小住宅の問題点の解決に非常に役立ちます。

3階建ての狭小住宅にスキップフロアを取り入れると、段差が作る緩い区切りだけで、それぞれの居室のプライバシーを守れる間取りが実現します。また、スキップフロアを取り入れると、階段が短くなるので、階段下を使い勝手の良い収納として利用できます。

階段は暮らしやすさにも、インテリアのデザイン性にも大きく影響します。敷地の条件や面積、家族のライフスタイル、インテリアデザインの好みなどを包括して考え、使いやすく、見た目にも素敵な階段をお選びください。

HOPEsの狭小住宅への思い

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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