狭小住宅では、設計や間取りで、居住面積を確保する工夫、広々とした空間に見せる工夫がされますが、インテリアにおいても、その2つの工夫が必要です。同じ面積の部屋でも、天井や壁、床の色、ドアや窓のデザイン、家具の高さ、収納の方法などによって、実際に広くも使え、見た目にも開放的な空間が作り出せます。

ただし、それらの工夫を一貫して統一されたイメージに沿って行わないと、部屋はチグハグな印象になり、落ち着かない空間になってしまいます。インテリアを考える時に、まず初めに考えることは、基になるイメージを決めることです。モダンでシャープな雰囲気の部屋にしたい、柔らかで温かみのある部屋にしたい、ナチュラルでシンプルな感じの部屋にしたいなど、好みに合わせて作った家全体のイメージに沿って、インテリアの具体的な色や質感を決めていきます。

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色の工夫…配色・配分・並べ方

室内の色の配分と配色によって、室内の雰囲気は影響を受けます。具体的な色の配分と配色について考えてみましょう。

色の配分と配色
室内の色の配分は、ベースカラー、アソートカラー、アクセントカラーのバランスが大切です。室内で、最も多くの面積を占める、床、壁、天井の色がベースカラーです。したがって、この部分の色によって室内の雰囲気がほぼ決まります。ベースカラーの配分は70パーセントが理想的だと言われています。ベースカラーに、アイヴォリー系のクロスや、明るい色合いのフローリングなど白に近い色合いを使うことが最も部屋を広く見せます。

カーテンやブラインド、ドアなどの色がアソートカラーです。ベースカラーと同系色にすると、落ち着いた雰囲気になり、視覚的に空間が広がります。ベースカラーから浮き立つような色にすると、個性的な雰囲気になりますが、空間は狭く見えます。アソートカラーの配分は25パーセント程度が理想です。

クッションやインテリア雑貨、壁面の装飾などはアクセントカラーです。ベースカラーとアソートカラーを同系色にしても、アクセントカラーに反対色を使うことで、ぼんやりした雰囲気になることを防ぎます。アクセントカラーの理想は5パーセント程度です。少しの分量なので反対色を取り入れても、引き締め効果にはなりますが、部屋に圧迫感を与える心配はありません。

色の並べ方
ベースカラーの並べ方によって視覚的な空間が変わります。濃い色を下に、上に行くにしたがって明るい色にしていくと縦の空間が広がり、明るい色を下に、上に行くにしたがって濃い色にしていくと、縦の空間が狭まります。
具体的には、床の色を壁や天井より濃い色にすると、縦に空間が広がり、天井が高く感じられます。反対に、天井と床の色を壁より濃くすると、落ち着いた雰囲気にはなりますが、圧迫感が出てしまいます。

また、部屋の奥側の壁の色を少し濃くすると、空間に奥行きが出ます。床の色を少し濃い目の色にし、壁は明るい色、天井はさらに明るい色にする、部屋の奥の壁は少しだけ濃い目にするといった色の並べ方で、狭さを感じさせない空間が出来上がります。

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建具の工夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアや窓などの建具によっても、部屋の雰囲気は変わります。

ドア
ドアの色を床の色と同系色にし、同程度又は少しだけ濃い目の明るさにすると、視覚的な空間が広がります。反対に、ドアの色を床や壁よりかなり濃い色にし、家具の色と統一させるとすると、洗練された雰囲気が作れますが、広々とした印象の空間にはなりません。

またドアには、垂れ壁のついたドアと天井までの高さがあるドアがありますが、天井までの高さのあるドアの方が、天井が高く見え、部屋全体を広く見せる効果があります。ただし、室内にクローゼットがある場合、クローゼットの扉の高さと室内のドアの高さが統一されていないと、チグハグな印象の部屋になってしまいます。


大きな窓は、部屋を広く見せますが、狭小敷地に建つ家では、周辺の環境のよって、窓を大きくできないこともあります。しかし、窓を大きく開けなくても、外の景色を取り入れる小さな窓で借景する方法があります。窓が額縁のような役割をし、部屋を広く見せる効果があるからです。

郊外の緑の多い地域、海辺の地域に建つ住宅であれば、大きな窓からの景観が楽しめます。しかし、周囲を建物に囲まれている狭小地では、きれいな景色ばかりではありません。そこで、小さな窓の中に空や街路樹など、見たい景色を切り取る借景の効果を利用します。この効果で部屋が広く感じられます。

また、サッシの色を壁の色と同系色にしたり、明るい色の木材のサッシにしたりすることにも、部屋を広く見せる効果があります。

階段
蹴込み板のないスケルトン階段は、視線が抜けるので、空間を広く見せる効果があります。

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家具の工夫

高さ、色合い、並べ方によって部屋の印象が変わります。

高さと配置
背の高い家具、色の濃い家具は圧迫感があり、部屋を狭く見せてしまいます。背の高い家具を置く場合は、手前の壁側に配置し、奥に行くにしたがって背の低い家具を配置していくと、圧迫感を抑えることができます。

また、壁や床が家具で隠れすぎてしまうと、同じように圧迫感が生まれます。家具の数を減らして、できるだけ壁と床を見せることも、部屋を広く見せるポイントの一つです。

色合い
家具の色あいが統一されていないと、落ち着きのないチグハグな感じの部屋になってしまいます。色の配分と天井、壁、床との配色を考えながら家具の色を選ぶことが大切です。

家具・造り付け家具の選び方
ダイニングとキッチンが繋がっていて、ダイニングのスペースが十分にとれないような場合には、部屋の形に合わせたダイニングテーブルを造り付け家具で設置すると、使いやすいダイニングキッチンにできます。
置き家具はデッドスペースが生まれやすく、壁や床の色にも、家具同士の色にもピッタリ調和させるのが難しいという面がありますので、造り付け家具を設置することも視野に入れて、内装プランと家具選びを並行して進めていくことが理想です

収納の工夫

部屋を広く見せる為には、物が溢れない部屋にすることが必要です。しかし、収納量を増やすために、壁面いっぱいの収納家具を置いてしまうと、部屋に圧迫感が生まれてしまう恐れがあります。ただし、天井までの壁面収納であっても、壁と同調する色で、背板がないタイプであれば、圧迫感を抑えることができます。造り付け家具にして、壁から飛び出ないようになっていれば、さらにすっきりします。壁面収納の場合、棚の中に置く物の配置によっても部屋は広く見えたり狭く見えたりします。見せる収納の部分には、ぎっしり物を置かないことが大切です。

空間の工夫

 

 

 

 

 

 

照明器具は、部屋全体の空間の見え方に影響します。ペンダントライトやシャンデリアなどの吊り下げるタイプの照明は、良い雰囲気を演出しますが、部屋を狭く見せてしまいます。部屋を広く、天井を高く見せる為には天井につけるシーリングライトが適しています。シーリングライトのなかでも、レールタイプのスポットライトやダウンライトを設置すると、洗練された雰囲気の空間を演出できます。
また、見せる収納と小さな照明を組み合わせる、奥側の壁に間接照明を取り付けるなどにも、奥行き感を出して部屋を広く見せる効果があります。

吹き抜けやスキップフロアなどを設計に取り入れて、せっかく開放感のある間取りにしても、色の配分や配色、家具の選び方と置き方、照明の方法を工夫しないと、チグハグな部屋になってしまいます。間取りプラン、床や壁の仕上げと並行して、造り付け家具も含めた家具選びを進めることが大切です。ポイントを押さえて素敵なインテリアの部屋での新生活をお楽しみください。

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HOPEsの狭小住宅への思い

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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