ここ数年東京では、家を建てる時に、分譲マンションより狭小住宅を選択する家族が増加しています。自分の家を持つ方法には、住宅を建てる、マンションを購入するという選択肢があります。

自分の好みのデザインの家に住みたい、周囲に気を使わずのびのびと子育てしたいという人は戸建て住宅に住みたいと思うでしょう。立地条件、利便性の良さを優先する人はマンションを選ぶかもしれません。狭小住宅とはその2つの要素を満たす戸建て住宅です。

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狭小住宅はどんな家?

狭小住宅についての明確な定義はありませんが、一般的には15坪以下の敷地に建てられる住宅を指します。シンプルな家でのミニマムな暮らしを好む人に狭小住宅は人気があります。しかし、狭小住宅が増え続けている理由は、それだけではありません。現実に都心部の土地が高価だからです。

立地条件の良さ、利便性を考えると、都心の暮らしには捨てがたいものがあります。ただし、郊外に建てるような30坪以上の家を都心に建てれば、多くの人にとって生活が成り立たなくなるほどの資金が必要になってしまいます。そこで、できるだけ坪数を抑えた敷地に建てる狭小住宅が増えているのです。

ただ、狭小住宅の場合、他の住宅やマンションに取り囲まれている為、快適な生活環境を維持する為の特別な設計が求められます。広々とした緑の多い土地に建つ戸建て住宅であれば、一般的な設計の家でも、日当たりや風通しは確保できるでしょう。しかし狭小住宅の場合は、吹き抜けやスキップフロアを取り入れたり、天井や高い位置に窓をつけたりしなくてはなりません。

また、狭さによる圧迫感、狭さによる動線の悪さを解決するような間取りが求められます。そのような間取りを実現するしつつ、安全な家にする為には、グレードの高い建築資材を使わなくてはなりません。その結果、通常の住宅よりも建築費が高くなってしまいます。家の性能を落とさず、狭小住宅の室内環境を調えられる設計の家の建築費を抑える為に必要なことは、外観デザインの工夫です。

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狭小住宅の外観デザインとコストの関係

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特殊な設計やそれを実現する為の建築資材を使うと、建築のコストは高くなっていってしまいます。しかし、家の性能を落とせば、地震や台風に不安を感じる家、室内環境の調わない暮らしにくい家になってしまいます。暮らし始めてからランニングコストのかかる家にもなってしまいます。そこで、性能を落とさずに建築コストを抑える為に、狭小住宅ではシンプルな外観の家を作ります。具体的にはどのようにシンプルにするのでしょうか?

屋根
屋根には、三角の切り妻屋根や四方向に傾斜面のある寄棟屋根、切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせたような入母屋屋根、斜面が一面だけの片流れ屋根などがあります。それぞれの屋根には、デザイン的にも、機能的にも違った良さあります。

コスト面から考えると、斜面の数が増えれば増えるほど、高額な建築費がかかります。また、2階建てや3階建ての場合、階ごとに屋根がついていると、コストが上がります。従って、最もコストを抑えられるのは片流れ屋根、次が切り妻屋根です。

さらに、片流れ屋根は、斜面が一面なので雨どいの数が少なくて済む為、外観がすっきりする、デザイン性が優れているという外観上のメリットがあります。加えて、高い位置に窓を取り付けられるので、日当たり対策が必要な狭小住宅の室内環境を向上させる役割もします。

陸屋根は、斜面はありませんが、排水機能を高める為の特別な工事が必要です。その為、シンプルな形状ですが、コストはかえって上がってしまいます。ただし、ルーフバルコニーを作れるというメリットがあります。

家のデザイン
屋根と同じように、面が少なければ少ないほど、コストを抑えられます。階ごとに大きさの違う家、階ごとに屋根のついている家、L字型やコの字型の家は、総2階建て、総3階建ての家よりもコストが上がります。

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狭小住宅を快適な空間にする間取り

狭くても、快適に暮らせる間取りにする為に、狭小住宅に取り入れられる設計の手法にはどのようなものがあるでしょうか?

空間を広く感じさせる
狭小住宅では、間仕切り壁をできるだけ少なくし、スキップフロアやスケルトン階段でゆるく区切ることで、狭さによる圧迫感を無くせます。それに加えて、窓の位置、窓の大きさ、窓のタイプも、室内の雰囲気に大きく影響します。

家族にストレスを与えない
狭くても、スムーズな動線が確保されている家、使いやすい収納スペースのある家は、暮らしやすい家です。家族の生活動線と主婦の家事動線がぶつからない間取りになっていれば、朝の忙しい時間帯でも、家族がそれぞれしなくてはならないことをスムーズに行えます。また、出し入れしやすい場所にあり、使いやすい大きさの収納スペースがあれば、家の中は常に片付いています。

コストを抑える間取り
外観のデザインと同じように、間取りでもコストを抑えることができます。快適に暮らせる間取りは維持しつつ、コストを抑える為には、廊下を作らず、間仕切壁も減らすという方法がとられます。

それぞれの階を一部屋と考える間取りにすると、間仕切壁も建具も減らせるので、コストを抑えられます。キッチン、ダイニング、リビングは繋げる間取りが主流ですが、その他にも子供部屋同士の間仕切りは家具で仕切る、スキップフロアの段差で区切るなどの方法があります。

広い敷地面積に建つ大きい家の場合、そのような間取りでは、家族のプライバシーが守れないというデメリットが生じる恐れがあります。しかし、狭小住宅ではスキップフロアやスケルトン階段を利用して区切りを作ります。その緩い区切りが家族それぞれのプライバシーを圧迫感なく守り、効率よく空間を利用する間取りを作ります。

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狭小住宅特有の設計を支える住宅性能

耐震性
狭小住宅の設計には、狭小住宅に特有な問題点を解決する為に、日当たりや風通しを確保する、開放的な空間を作る為の吹き抜けや大開口、スキップフロアなどを取り入れます。その結果、空間が縦にも横にも広がり、明るく開放的な部屋が生まれます。しかし、そのような縦にも横にも空間が広がる部屋を持つ家を安全な住宅にする為には、高い耐震性が必要です。

断熱性
吹き抜けやスキップフロアのある家は、空間が仕切られていないので、冷暖房の効率が悪くなる恐れがあります。どんなに広い空間であっても、冷暖房の効率を落とさず、寒い季節には暖かい部屋、暑い季節には涼しい部屋という室内環境がなくては、快適には過ごせません。従って、広い空間でも冷暖房の効果を十分に行き届かせることのできる高い断熱性が求められます。

断熱性の高さは、室内環境を快適にするだけではなく、冷暖房のランニングコストも抑えます。

SE構法
木造住宅の構法には在来工法(木造軸組み構法)、枠組壁工法(ツーバイフォー)が知られていますが、SE構法という工法もあります。そして狭小住宅の設計と、非常に相性の良い構法がSE構法です。

SE構法は、木造住宅でありながら、鉄筋コンクリートと同じラーメン構造で家を建てる工法です。木造でありながらラーメン構造を実現できる理由は、強度の高い建材と、綿密な構造計算にあります。

ラーメン構造は空間の自由度が高いので、吹き抜けや大開口を設計に取り入れ、壁や床の面積が減っても、耐震性に影響を及ぼさないという強みがあります。その為、快適な居住空間を確保する為には吹き抜けや大開口が必要な狭小住宅とは非常に相性が良いのです。

SE構法の狭小住宅は、どんな地震が来ても安心である上に、暮らしやすい空間を実現した家です。

HOPEsの狭小住宅への思い

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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