利便性の良い都心の暮らしは、通勤通学にかかる時間を節約できます。商店や病院も数多くあります。子供のいる家族にとっては、学習レベルの高い公立の学校が多いことも魅力でしょう。

しかし、都心部の土地は非常に高額なので、親から譲られた土地がない限り、高額な土地を購入しなくてはなりません。その結果、都心部での戸建ての住宅には狭小住宅が多いのです。

ただし、どんなに利便性の良い地域であっても、狭さのせいで暮らしにくいというような家には住みたくないはずです。狭くても、快適に暮らせる家にする為には、どのような間取りの工夫が必要なのか考えてみましょう。

Works(株)ホープスの建築実例

日当たりと風通しを確保する間取り

都心の狭小住宅は、周囲を他の住宅やマンションに取り囲まれています。郊外の2階建ての家であれば、十分な日当たりと風通しが確保できる間取りでも、都心では周辺の建物に光も風も遮られてしまいます。また、居住面積を確保する為に3階建てにすれば、隣の家よりは高い建物になるかもしれませんが、下の階への採光量は少なくなってしまいます。

人間が健康に暮らすためには、太陽の光と風が十分に取り入れる家でなくてはなりません。いくら都心に建つ家とは言っても、昼間から照明をつけなくてはならないような薄暗い家に暮らしていれば、心にも体にも悪影響が出てしまいます。また、風通しが悪ければ、空気が淀み、湿度も高くなって、結露、カビ、ダニが発生しやすい不健康な家になってしまいます。その為、狭小住宅には様々な間取りの工夫が求められます。

具体的には、吹き抜けやスケルトン階段、大開口などを取り入れた間取りです。階上の光を下の階まで届ける為には吹き抜けが役立ち、さらにスケルトン階段や大きな窓と組み合わせることで、よりたくさんの光と風を取り入れられます。

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プライバシーを確保する間取り

視線
都心の狭小住宅は、隣家との距離が近いので、プライバシーを確保する為の間取りの工夫も必要です。せっかく日当たりを良くする為に大開口を作っても、隣家の窓と向き合っていれば開けることができません。道路からの視線が気になることもあるでしょう。

開けたい時に気兼ねなく開けられる窓にする為には、居室の配置、窓の位置と大きさ、隣家との関係、道路との関係を考慮しながら窓をつけなくてはならないのです。その為、トップライト、ハイサイドライト、ローサイドライトなどの窓が多く使われます。吹き抜けとトップライトの組み合わせは、非常に相性がよく、周辺からの視線が気になりません。そして、周辺を建物に囲まれていても、十分に光を採り入れることができます。

生活音
実際に住み始めてから気が付くことが多いのが、音の問題です。隣家の話し声や、シャワーやトイレの音が聞こえてきてしまうことがあるのです。隣家から話し声や生活音が聞こえてくれば、こちらからも聞こえているだろうと考え、気になってしまうこともあります。音の問題を解決する為には、視線の問題と同じように、居室の配置や窓の位置などの間取りを隣家の間取りも考慮に入れながら決めることが必要です。

それに加えて、窓の防音性も大切です。なぜなら、外部からの音の流入の大半は窓からだからです。防音機能のついた窓ガラスや、二重窓などが隣家の生活音の流入を防ぎ、自分の家からの生活音の流出を防ぎます。

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スムーズな生活動線を作る間取り

 

 

 

 

 

 

狭小住宅では、居住空間を確保する為に3階建ての住宅にするケースが多くあります。その結果、縦に長い空間の家になるので、家族構成や家族の生活に合わせた移動のしやすさが求められます。

家事動線
3階建て住宅では、洗濯と掃除、食料品の運び入れをスムーズにできると、家事負担を軽減できます。例えば、1階に水回りがあり、そこに洗濯機が設置されていて、3階のベランダに洗濯物を干すとなれば、家事負担は大きくなってしまいます。しかし、2階に水回りがあり、2階のベランダに洗濯物を干すのであれば、家事負担は少なくなります。1階に水回りがあり、3階のベランダに干すのであれば、3階に洗濯機を設置できる場所を作る、1階の洗面所に洗濯物を干せるスペースを作るなどの工夫が家事負担を軽減します。

また、キッチンが2階にある場合には、重い食料品を持って1階の玄関から2階のキッチンまで運ばなくてはならなくなってしまいます。2階にキッチンを作る場合、1階に常温保存できる食料品をストックできるパントリーを作っておく、玄関のファミリークローゼットに食料品を置ける棚を作っておくなどの工夫が食料の運び入れを楽にします。

そして、階段の形状によっては、冷蔵庫を買い替える時に、搬入と搬出ができなくなる恐れがあります。2階にキッチンを作り、窓からの搬入、搬出ができそうにない環境であれば、直線階段にする、螺旋階段は避けるなど、階段の形状に注意が必要です。

生活動線と収納
子供のいる家庭では、リビングが片付かないという問題が起こりがちです。しかし、間取りによっては、玄関から洗面所に行き、手洗いとうがいをしてから、荷物を持って子供部屋に行き、リビングに戻るという移動が子供にとって面倒になってしまう恐れがあります。面倒だと感じれば、子供は玄関からリビングに直行してしまうので、リビングに子供の脱いだ上着やカバンが溢れてしまうのです。

このようなことを避ける為には、玄関、又はリビングにファミリークローゼットを作ると便利です。狭小住宅の収納は、デッドスペースを活かす、壁面を利用することが基本ですが、細かな収納スペースをいくつも作らないということも大切です。それぞれの居室ごとにクローゼットを作ればそれだけ居室は狭くなってしまいます。家族で使え、生活動線上に大型収納があると、リビングがすっきりし、寝室や子供部屋にも余裕ができます。

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開放的な空間を作る間取り

 

 

 

 

 

 

狭小住宅では、部屋ごとに細かく区切ると、圧迫感が出てしまいます。縦に長い家を開放的な雰囲気にする為には、吹き抜けやスケルトン階段に加えて、スキップフロアも効果的です。

間仕切壁を使わず、短い階段で部屋を緩く区切るスキップフロアは、空間が横に拡がります。その為、視覚的に広さを感じられるのです。さらに、間仕切り壁がない分、光や風が採りこみやすいので、日当たりと風通しがよくなります。

狭小住宅を暮らしやすくする間取りを実現する為に必要なこと

耐震性
縦に長い狭小住宅に、吹き抜けや大開口、スキップフロアを取り入れれば、日当たり、風通しの良い開放的な空間の家が出来上がります。ここで重要なのは、吹き抜けや大開口、スキップフロアを取り入れた細長い住宅の耐震性です。

広い敷地に建つ横に広がるどっしりした住宅であれば、吹き抜けやスキップフロアが耐震性を損なうことはないかもしれません。しかし、狭小住宅の場合、2階の床が減る吹き抜け、間仕切壁がないスキップフロア、外壁の面積が減る大開口は、耐震性を損なう恐れがあります。その為、このような間取りの家であっても、高い耐震性を維持する住宅である必要があります。

断熱性
吹き抜けやスキップフロアは、床や1階天井の一部、間仕切り壁が少ない分、冷暖房の効率が落ちてしまいます。トップライトや大開口と吹き抜けの組み合わせは、夏は非常に室温が上がります。吹き抜けやスキップフロアは、暖房で暖めた空気が上に逃げてしまうので、冬はなかなか室内が暖まりません。そのような家にしない為には、高い断熱性を持った住宅にする必要があります。断熱性が高ければ、吹き抜けやスキップフロアが取り入れられた家でも、夏涼しく、冬暖かい暮らしが実現します。

シンプルなデザイン
吹き抜けや大開口、スキップフロアなどを取り入れても、高い耐震性を維持できる住宅にする為には、どうしても建築費が嵩んでしまいます。家の性能を高く維持しつつ、建築コストを抑えるためには、シンプルな住宅デザインにする必要があります。住宅の外観は凹凸の多い凝った外観になればなるほど、建築のコストが上がってしまうからです。シンプルな美しさと高い住宅性能を持つ狭小住宅が理想的な狭小住宅ではないでしょうか?

HOPEsの狭小住宅への思い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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