浴室は毎日使う場所であり、心と身体の1日の疲れを癒す場でもあります。狭小住宅では床面積が限られている為、広々とした浴室は作れません。しかし、その状況の中で、ゆったり入浴できる浴室にする為にはどのような工夫が必要か考えていきましょう。

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バスルームの広さ

 

 

 

 

 

 

家全体の間取りから浴室と脱衣室に使える面積を決めるのですが、浴室と脱衣室の面積の割り振り方で使い勝手が変わってきます。脱衣室と洗面室を兼ねるのであれば、さらに割り振り方は重要です。なぜなら脱衣室と洗面室は、リビング等の居室に面積を多く使いたいため、つい狭くなりがちだからです。

新築の注文住宅や建売住宅で暮らし始めてから後悔していることの中に、脱衣室が狭くて使いにくいという意見は多くあります。脱いだ衣服を置く場所がない、着替える時に手足が壁や洗濯機にあたる、洗面室に一人しか入れないので朝は洗面所が混むなどの意見です。

浴室や脱衣室、洗面所は長時間過ごす場所ではないので、リビング等の居室が優先されるのは仕方がないことですが、ストレスにならない程度の広さが必要です。

家族の人数に適した収納スペースの広さ、家族構成、脱衣室と洗面室を兼用する、又は分離する、洗濯機を置く、置かないなどを考慮した上で、浴室との面積の割り振り方を決めることが使いやすいバスルームを作るポイントです。

脱衣室と洗面室を兼用し、洗濯機を置く場合、最低でも必要な広さは浴室0,75 坪、脱衣・洗面室1坪です。夫婦だけの家族や、子供が成長している家族であれば、このサイズでもなんとか使えます。

標準的な広さは、浴室1坪、脱衣・洗面室1坪~1,25坪です。家族の人数が多い場合は、最低でもこのサイズが必要です。

広めの浴室にする場合は、浴室1,25坪~1,5坪、脱衣・洗面室1坪です。まだ幼く、一緒に入浴しなくてはならない子供がいる家族では、このくらいの広さがあると、楽に入浴できます。

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バスルームの作り方

バスルームの作り方には3つの工法があります。ここ数十年、日本国内では、タイル張り在来工法の浴室はほとんど姿を消し、一般的な住宅にはユニットバスが採用されていますが、それぞれの工法には、異なった良さがあります。

  • 在来工法 昔からある工法です。規格がないので、建材の種類、バスタブや水栓、窓の大きさや位置など、すべて好みに合わせて作ることができます。システムバスでは実現できないこだわりのバスルームができるにもかかわらず、あまり使われなくなった理由は、工期が長く、費用が嵩むからです。
  • ハーフユニットバス 床と浴槽部分はシステムバス、壁と天井の仕上げは在来工法という2つを組み合わせた作り方です。在来工法より工期や費用が抑えられ、システムバスより内装の自由度が高まります。狭小住宅では、北側斜線に制限があり、十分な天井高が取れないケースや、デッドスペースを利用した変形の浴室であるケースがあります。そのようなケースにも柔軟に対応できるという良さがハーフユニットバスにはあります。
  • システムバス 現在日本で最も多く使われているバスルームです。在来工法と違い、あらかじめ作られたバスタブや壁パネル、棚などを組み立てるだけで出来上がります。機能性は高いのですが、デザインの自由度はありません。

バスタブのサイズ

システムバスを採用する場合、浴室のサイズに合わせてバスタブのサイズを決めます。したがって坪数によってバスタブのサイズが決まります。

0,75 坪の浴室に使えるバスタブのサイズ
1216サイズ        1200mm × 1600mm
1217サイズ        1200mm × 1700mm
1317サイズ        1300mm × 1700mm

1坪の浴室に使えるバスタブのサイズ
1616サイズ        1600mm × 1600mm
1717サイズ        1700mm × 1700

1.25坪の浴室に使えるバスタブのサイズ
1618サイズ        1600mm × 1800mm
1620サイズ        1600mm × 2000mm
1621サイズ        1600mm × 2100mm

1.5坪の浴室に使えるバスタブのサイズ
1624サイズ        1600mm × 2400mm
1818サイズ        1800mm × 1800mm

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バスタブのタイプ

バスタブには様々なデザインが揃っていますが、大きく分けると3つのタイプがあげられます。

和洋折衷が最も多く使われているタイプで、肩まで浸かれる深さがあり、脚も延ばせます。

和式は、ひざを折って肩まで浸かる深いタイプで、湯船に入るのに大きく浴槽をまたがなくてはなりません。

洋式は足を延ばして下半身だけ浸かる浅いタイプです。断熱性が高く暖かい浴室であれば問題ありませんが、断熱が十分ではない浴室では冬の季節には使いにくいバスルームになってしまいます。

バスタブの設置方法とデザイン

バスタブには3種類の設置方法があり、設置方法によって浴室の雰囲気が大きく変わります。

置き型

 

 

 

 

 

 

映画に出てくるような猫足のバスタブなどがこのタイプです。バスタブのデザインによって異なる個性的な空間が作れます。さらにバスタブにだけ排水溝をつけ、バスタブの中で身体や髪を洗う欧米式スタイルと、洗い場にも排水溝をつけ、一般的な日本のスタイルで使用する方法があります。

欧米式スタイルにすると、スペースを倹約できる、洗い場がないのでバスルームにカビが生えにくいという良い面があります。しかし、家族が多い場合には、一人はいる度にお湯の入れ替えをしなくてはならないので、水道やガスを余分に使うことになります。

洗い場を作る場合、底面が床に全部ついているタイプのバスタブであれば問題ありませんが、猫足の場合には底面と床の間に汚れが溜まりやすので、掃除に手間がかかります。

バズタブのデザインにはスクエアタイプ、楕円タイプがあり、それぞれ足つきと足なしがあります。

埋め込み型

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床面からバスタブが飛び出ないように完全に埋め込んで設置する方法です。プールサイドのようなイメージです。ベンチ付きの浴槽にしなくても半身浴ができます。

半埋め込み型

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またぎやすい高さの分だけ床面から出し、残りを埋め込む方法で、最も一般的なタイプです。

埋め込み型と半埋め込み型のバスタブのデザインには、スクエアタイプ、楕円タイプ、半円タイプの形状の違いに加えてワイド、ロングなど幅や長さが大きいタイプがあります。また、バスタブの内部に半身浴がしやすいベンチ付きのタイプがあります。半身浴をしない人でも、ベンチ付きはお湯の量が少なくて済むので経済的、子供をベンチに座らせられるので便利という良い面があります。半円系のバスタブはバスルームが狭くてもゆったりできるデザインです。

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バスタブの素材

システムバスに使われている素材は主に人工大理石やFRPなどですが、他にもいろいろな素材があり、それぞれの良さがあります。

  • 人工大理石 汚れにくく、継ぎ目がないので手入れがしやすい素材です。原材料の樹脂には透明感と光沢のあるアクリル系と、アクリル系より価格が抑えられるポリエステル系があります。ポリエステル系はアクリル系に比べると、色や光沢が見劣りしますが、どちらも衝撃に強く、高い耐久性があります。各メーカーが主流に使っている素材なので、色やデザインが豊富にあります。ただし、表面には傷がつきやすいので、水垢が取れる固いスポンジなどを使うと傷になり、その傷に汚れが付きやすくなってしまうので注意が必要です。
  • FRP ポリエステル樹脂などのプラスチックとガラス繊維を混ぜて作られたガラス繊維強化プラスチックです。軽量で保温性が高く、衝撃にも強いので、様々な建築資材の他にも自動車や航空機の部品など、様々な用途に使われています。汚れが付きにくく、カラーヴァリエーションも豊富です。そして人工大理石と同じく、各メーカーが主流に使っている素材なので、色やデザインが豊富にあります。ただし、汚れと傷が付きやすいことに加えて、紫外線などバスルームの環境によっては経年劣化で変色してしまうことがあります。
  • ホーロー 金属素材の表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けた作るホーローは、金属の強さとガラスの美しさを併せ持つ素材です。鋳物ホーローは、ホーローの中でも最高品質で、非常に美しい風合いをしていますが、重さがあります。その為、2階、3階にバスルームを設置する場合には構造体の強さが求められます。汚れがつきにくく、ついても落ちやすいことや、発色の美しさが特徴ですが、傷がついて表面のガラス質が取れてしまうとその部分から錆びる恐れがあります。輸入品のバスタブにも多く使われている素材ですが、国内でもホーロー浴槽に特化して開発を進めている会社があり、色やデザインなどのヴァリエーションも豊富です。
  • ステンレス 傷や錆に強いので経年劣化しないことが大きな特徴です。ただし、バスルームの内装によっては暖かみのない雰囲気になってしまう恐れがあります。反対に、大人だけが暮らす家であれば、シャープでスタイリッシュなバスルームにもできます。
  • タイル 耐久性が高く、タイルそのものは汚れや傷がつきにくいという特徴があります。発色も美しく、何色ものカラーを組み合わせるなど、個性的なバスタブにできます。ステンレスやFRP、人工大理石と組み合わせることもできます。ただし、施工費や原材料の価格が高額である、目地の部分にカビが発生しやすいといった問題点もあります。
  •  ヒノキやコウヤマキ、サワラなどの木材で作られた浴槽は、香りの良さ、肌触りの良さに加えて質感の美しさが特徴です。人工的な素材に比べると、耐久性が低いように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、手入れを怠らなければ他の素材より長持ちします。
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使いやすいバスルームにする為のポイント

  • 窓の位置と大きさ 換気だけではなく、バスルームの雰囲気に大きく影響します。
  • 掃除のしやすさ 汚れにくい材質と形状のバスタブを選ぶことや、バスルーム内に棚を設置しすぎずシンプルにすることが掃除のしやすさ、手入れのしやすさに繋がります。
  • 入浴スタイル 家族全員が烏の行水タイプなので、狭いバスルームで十分という家族であれば、最小サイズのバスタブ、ゆったり入浴したい、子供と一緒に入浴するという家族であれば、標準サイズでベンチ付きのバスタブなど、家族構成や入浴スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
  • 間取り 脱衣室に洗濯機を置く予定であれば、洗濯物を干す階にバスルームを持ってくると、家事動線が良くなります。反対に、オプションで浴室乾燥をつけ、外の干さないのであれば、1階にバスルームを持ってくると、防水工事の価格が嵩まずに済みます。

間取りを工夫して、家族にあったバスルームで快適なバスタイムをお過ごしください。

HOPEsの狭小住宅への思い

ホープスは、狭小住宅での快適な暮らしを実現させたいという思いで、すべての住宅の建築に向き合っています。
根本にあるのは、狭小住宅での快適さとは、無駄を省いたシンプルな暮らしにあるのではないかという考え方です。

敷地の形、道路や周辺の環境に合わせて、日当たりと風通しの良い家、プライバシーを確保できる家、高いインテリア性と優れた住宅性能を持つ暮らしやすい家、安心して暮らせる防犯性の高い家をご提案します。

狭いから快適さをあきらめるのではなく、より快適な暮らしを目指して、施主様のご希望に沿った家にしていきます。

狭小住宅としての参考になる建築実例がたくさんございます。ぜひご覧ください。

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著者情報

清野 廣道

清野 廣道

株式会社ホープス代表 
一級建築士
横浜市出身・1995年7月ホープス設立
限られた敷地条件を最大限に活かした、風・光・緑の感じることのできる空間提案を心がけています。

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